泡沫のゆりかご 三部 ~獣王の溺愛~

丹砂 (あかさ)

文字の大きさ
上 下
15 / 50
本編

第13話 積もる言葉、溜まる熱 1

しおりを挟む
「ギガイ様は何色がお好きですか?」

 他愛ない会話に紛れて、何気ない風を装った質問だった。

「色?」

 ギガイは身体の上のレフラの髪を梳きながら、その質問を繰り返した。

「はい。やっぱり黒や藍ですか?」
「そうだな。だが、お前の髪の色も気に入ってるぞ」

 梳いていた指に髪を絡めて、ギガイが軽くキスをする。たったこれだけでも照れたのか。わずかに染まったレフラの頬を、ギガイは眦を緩めながら、揶揄うように指先で擦った。

「だが、突然どうした?」

 質問の意図を知りながらも、ギガイはあえて聞いてみる。
 事情は知らない事になっているのだから、至って普通の反応だろうが、ギガイは当然それだけのつもりじゃなかった。

「あっ、いえ、特に深い意味はなくて……」
「だが、気になる切っ掛けがあったんじゃないのか?」

 素直に告げる事ができないレフラが、なんと言って誤魔化そうとするのか。拙いながら精一杯取り繕う姿に、庇護欲と嗜虐心を擽られる。
 何とも言えない気持ちで緩みそうになった口元を、ギガイは添えた指で隠しながら、途端にしどろもどろになるレフラに「ん?」と答えを促した。

「あっ、あの……新しい、服を買おうかと思って……」
「ほう、お前が自分から何かを買うのは珍しいな」

 あまりにレフラらしくない言葉に、ギガイはククッと零れそうになる笑いを抑えて、楽しそうな声で返事をした。

「はい……」

 贅沢に慣れていないせいで、レフラは自分の為にお金を使うことが、いまだに苦手なようだった。そんなレフラが自分の為に、お金を使うと告げたのだ。それが嘘であったとしても、後ろめたさが募るのか、視線が狼狽えるように彷徨っていた。

「だが、それなら私の好みの色よりは、お前に合う色が良いだろう」

 気まずそうな表情に、気付いていないフリをして、ギガイはレフラの頬に手を添える。そのまま眦を何度かなぞり、耳殻を意地悪く掠めていく。

「例えば、お前の目の青灰色でも良いし、重みのある赤でも、差し色やここを飾る石ならば、ちょうど良く映えるだろう」

 表面だけは穏やかに、普通の会話を続けながら、煽るように指で耳の縁を辿っていく。その間、ピクピクと身体を震わせる姿が愛らしい。ギガイはほくそ笑みながら、辿り着いた指先で、触れた耳たぶを摘まんで、優しく揉み込んだ。

「今回は服だけの予定なのか?」
「……っあ……は、い……」
「そうなれば、濃い色でも映えそうだが……」

 そこからまた指を滑らせ、首筋から唇へと肌をゆっくりなぞっていく。その間も絶え間なく、レフラの感じる所を掠めていけば、少しずつレフラは体温を上げていった。

「黒の方が、お前の白い肌と赤い唇には映えるだろうな」

 唇をなぞり、摘まんでしばらくその感触を楽しみつつ、時折、湿っぽい吐息を漏らす隙間に、指先を宛がう。その度に、そのまま口腔内へ伸ばされる指を想像するのか、横たわるギガイの上で、レフラの身体が小さく跳ねた。

 同時に反対の手で、レフラの背中をさわりとなぞる。こそばゆさが、快感へと置き換わるように。掌ではなく、あえて指先だけで触れていく。それだけで感度を増したレフラの身体は、ついにはギガイが指を少し動かすだけで、力が籠もるのが伝わった。

「その時には、大きく背中の開いた服であれば、白い肌がよりいっそう引き立てられると思うが……お前のそんな姿を見た他の奴がいれば殺したくなるな……」

 ツッと背筋を辿って、腰の窪みを五指の指先で、外から内へと愛撫する。ギガイの指先の意図を知らないレフラにすれば、会話の中で触れられるだけで、たやすく上がってしまった熱に戸惑っているのだろう。

「…………っ!」

 窪みから少し下がった指先が、臀部の上部。割れ目の縁に伸びた瞬間、レフラは鋭く息を吸い込んだ。そして、羞恥心で顔を真っ赤に染めながら「あっ、あの……」と、動揺した声を上げる。

「あぁ、すまん。擽ったかったか?」
「いえ、あの、大丈夫、です……」

 ギガイが意図した通り、情欲を煽られたレフラが、熱っぽい目をギガイへ向けていた。それに気が付きながらも、サラッと謝罪の言葉と共に、レフラへ触れていた両手を組んで、その背中へ置き直す。
 
「あっ……」

 背中に感じる両手の重みから、ギガイが性的な意味で触れていた訳ではなく、いまはそういう気が無いと判断したようだった。

 戸惑ったような小さな声が、レフラの口から零れ出た。1人だけ感じ始めていた自分がよほど恥ずかしかったのか、ギガイの上で身動いだレフラの顔は、ますます赤くなっていた。
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

アルバイトで実験台

夏向りん
BL
給料いいバイトあるよ、と教えてもらったバイト先は大人用玩具実験台だった! ローター、オナホ、フェラ、玩具責め、放置、等々の要素有り

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

身体検査

RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、 選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

飼われる側って案外良いらしい。

なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。 なんでも、向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。 「まあ何も変わらない、はず…」 ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。 ほんとに。ほんとうに。 紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22) ブラック企業で働く最下層の男。悪くない顔立ちをしているが、不摂生で見る影もない。 変化を嫌い、現状維持を好む。 タルア=ミース(347) 職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。 最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?

名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。 そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________ ※ ・非王道気味 ・固定カプ予定は無い ・悲しい過去🐜のたまにシリアス ・話の流れが遅い

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

処理中です...