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第2章 〇い〇く〇りん〇ックス
第13話 ライアvsスザク
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「メリーさん、クロの剣を俺にください、あと早くクロにヒールかけて!!」
「わ、分かりました、《ヒール》」
「妖刀を使えば私に勝てるとでも?、お好きになさい、いかに小細工を使おうとも、私はそれを正面からねじ伏せて差し上げましょう」
スザクは小細工など通じないと言わんばかりにこちらの横暴を見逃した。
俺はクロが回復する時間を稼ぐ為にスザクに話しかけた。
「・・・一つ、聞かせてくれないか、何故お前は魔族を目の敵にするんだ、親でも殺されたか?だが、親も所詮は他人だ、自分がされた仕打ちや恨みへの意趣返しとして魔族を虐待したり虐殺するなら俺は止めないが、親や恋人なんて所詮は他人なんだ、いくらでも代用は利くし、そんなものに執着して意味の無い復讐に囚われるなんてバカげている。
だからもし復讐だとしたらやめろッ!!、他人の為になんて全部欺瞞だ、お前が魔族を虐殺する事に快感を得ているなら俺は止めない、だが復讐は復讐の連鎖を生み出すだけで意味の無い行為だ、復讐はやめろ、それは巡り巡って損しかしない行為でしかないッ!!」
俺はいかにも正義感の強い熱血漢風にスザクを説得する演技を試みる。
「・・・いや、もっともらしい事言ってるようで親も他人とか代用利くとか虐殺なら止めないとか、色々前提がおかしくねェか?」
「大丈夫です、それがライアさんの持ち味ですから・・・」
シェーンの呆れた呟きにメリーはそうツッコミを入れた。
「私が魔族を嫌う理由?、おかしいですね、この村には聖書の教義が広まっていないのですか?、聖書にちゃんと書かれてるじゃないですか、「隣人を愛し、亜人は滅ぼすべし」と、我々は異民族を駆逐し滅ぼす事で繁栄の歴史を刻んでいる、そしてその繁栄と平和を脅かす存在が魔族なのです、だから、魔族は駆逐しなければいけない、でなければ、悲劇を引き起こすのですから・・・っ」
そういうスザクの目に宿る炎は憎悪の色をしていた。
スザクが魔族に何を奪われて、どうして憎むのかは俺には分からない、だけど、スザクが魔族を嫌う理由が取り返しのつかない憎しみに支配されているというのは、その目と言葉だけで理解出来た。
「なら俺がお前の業を、断ち切ってやるよ、この世界は自由だ、だからお前の憎しみも、目的も、全部自由でいい、だが、お前みたいな他人を憎むことでしか救われないようなクズは、この俺が断ち切る」
俺はメリーさんから投げ渡されたクロの妖刀を抜刀する。
妖刀の中には怨念が巣食っていた。
手に持つだけで血を求める妖刀の渇きに魂が侵食されていくが、だが呪いに耐性を持つ【勇者】であり、無敵の加護を付与するロザリオまで持っている俺の魂を妖刀は食らう事が出来ないらしい、俺は妖刀の支配に抗う事が出来た。
横目でクロがメリーさんのヒールを受けて回復しているのを確認すると、俺は叫んだ。
「クロ、俺に大号令をくれ!!!、はやく!!!」
「え?、それって反則じゃないのん?、てかクロの刀も勝手に使ってるし訳が分からないのん」
「クロさん、この戦いにルールなんてありません、だから大号令をかけてください、でないとライアさんに勝ち目なんてありません、だからどうか」
メリーはライアの味方としてライアを勝たせる為に、クローディアに大号令の使用を催促した。
「うぅ・・・メリーに頼まれたら仕方ないのん、《我が軍勢よ、我が命に従い、我が覇道を示せ》」
「うぉおおおおおきたきたきたぁ!!、体中から力が漲ってくる、これが大号令の力!、今なら誰が相手でも負ける気がしねぇ、かかってこいや三下ァッ!!!」
「・・・それが貴方の秘策?、大号令とは驚きですが、その程度で私に勝てるとでも?」
俺が真正面から馬鹿正直に切りかかると、スザクも抜刀して切り結ぶが、大号令で強化された筈の俺のステータスでもスザクにいとも簡単に弾き返された。
「な!?・・・っ」
「私は特級騎士、王国の全騎士10万人の頂点に立つ超エリートですよ、その私が大号令と妖刀如きに倒される訳が無いでしょう」
「超エリートか・・・、ふん、確かに、今の俺じゃあ歯が立たないみたいだな、・・・おい妖刀、お前の力はこんなものじゃないだろ、全部引き出してやるからっ・・・、お前の本気でっ、俺を勝たせろ・・・!!」
俺は魔王であるクロの最大級の援護と装備を使ってもスザクに勝てないと知り、ならばと妖刀に語りかけた。
さっきから妖刀を掴む手を通して脳内に鳴り響く声。
血を求め、その尽くを断ち切る事を目的とする妖刀の、そのもっとも原始的で強烈な衝動。
その黒く濁った汚泥のような衝動を俺は受け入れる事で、妖刀は更なる力を引き出した。
その瞬間、俺の体と魂は完全に妖刀に侵食されて、ただの殺人マシーンへと生まれ変わった。
「・・・・・・・・・・・・・・斬ル」
「・・・妖刀に自らの魂まで差し出すとはなんと愚かな、そうまでして魔族を庇うとはやはり完全に洗脳されているようですね、あなたは、・・・死刑です」
スザクは一息にケリをつけようとライアを切り裂いた。
だが斬られたはずのライアは蜃気楼のように立ち消える。
「・・・残像?、とても素人とは思えない妖しい動きをすると思ってましたがまさかその妖刀、『死神憑』ですか、だとしたら今のあなたは死神そのもの、『死神憑』と適合するとは、なんという業の深さ、やはりあなたは粛清されるべき人間のようだ」
『死神憑』とは斬った相手の血と魂を吸う事で無限に強化される妖刀の、その最上位。
死神に取り憑かれた剣は、持ち主の魂を食らう事により、その剣に宿る剣士達の記憶を呼び覚まし持ち主に付与する。
妖刀に完全適合したライアは、全ステータスオールEという貧弱なステータスを完全に克服する純粋な技の技量により、スザクを圧倒した。
ライアの肉体が貧弱過ぎるが故に、いかにスザクの隙をついて一撃見舞おうとも、それは薄皮一枚を撫でるようなものであり、ダメージにはならなかったが。
しかし、スザクからすれば一方的に攻撃されて手傷を負わされている状況であり、超エリートである彼にとって、この膠着は度し難いものであった。
そして観客は、クズで無能な若者の見本のような存在だった筈のライアが、想像を上回る激闘をしている事に歓喜し湧いていた。
「・・・いいでしょう、ならば全力で断ち切るまで、火の精霊よ、不死鳥の加護を授け、我が敵を焼き尽せ、《ディバイン・フレイム》」
スザクは身に炎を纏い、鎧と剣、両方に炎属性を付与する。
その炎は神聖なる浄化の炎、妖刀にとっては弱点となる特攻魔法だった。
「おおっと、炎が熱いのか、攻勢だったライア、ここで受けに回りました、スザク選手が押しています、どういう事でしょうか、村長」
「・・・ライアは邪悪であるが故に妖刀に強く適合したが、それ故に神聖の象徴である炎は弱点となるのだろう、光魔法では無い分マシとは言え、騎士の放つ炎は不死鳥の加護を持っておる、故に、あれに一太刀でも貰えばその傷から炎が広がり、浄化されてしまうだろう」
「なるほど、流石スザク選手、特級騎士の肩書きは伊達では無いという事でしょうか、しかしライアも、妖刀のおかげとはいえかなり善戦している様子、これは最後まで勝負は分からないか?」
その戦いは文字通り観戦していた村人の目に焼き付いた。
スザクは無駄の無い洗練された動きでライアを攻撃するが、ライアはそれを凪のように音の無い足さばきで華麗にかわした。
それは正しく激しく燃え盛る炎と、それに抗わずに流れる清流の戦いだった。
その名勝負を演じている男が、村ではドラ息子代表のライアである事を、その瞬間だけは皆が忘れて、ライアを応援していたのだった。
「はぁはぁ、埒が明きませんね、スタミナだけは一級品か、はたまた大号令と妖刀の等級が超一級なのか、ここまで戦って息一つ乱れないとは、・・・あなたを危険分子と認め、最終奥義で倒させてもらいます、集え、13の英霊の魂よ、救済の裁きを、これは世界を救う戦いである・・・!!《決議・開始》!!」
それは聖剣を再現する為に生み出された、擬似的な聖剣の生成魔法。
特級宝具である聖遺物の十字架を通じて13の英霊の承認を受ける事により、救済の象徴である最強の聖剣を生み出すという、騎士団の特級騎士だけに許された最強魔法だった。
「承認」と、過半数の承認を受けて擬似聖剣の発動が可決される。
スザクの持つ剣が聖剣と化し、最強の光魔法の加護を受けて眩い光を放つ。
誰もがその光に目を奪われて、そしてライアの死と敗北を確信したが。
「・・・次で最後か、なぁあんた、最後に聞かせて貰ってもいいかい?」
ライアは妖刀に体を明け渡していたが、聖剣の光により妖刀の支配が弱まり、それでライアは体の主導権を奪い返したのであった。
「驚きましたね、『死神憑』に魂を売り渡したと思ってましたが、まさか自我があったとは、信じられない事です、・・・それで聞きたい事とは」
スザクはライアを裁くべき罪人として見ていたが、それでも自身の全力を受け止めた好敵手として辞世の句くらいは聞くつもりで答えてやった。
「・・・あんたは強い、流石は特級騎士だな、多分、人間の中ではあんたは最強の部類にいる英雄なんだろう、・・・それで、なんでそんなあんたがこんな辺境の、辺鄙で不便なクソ田舎の寒村まで来たのか、出来れば教えてくれないかな?、・・・冥土の土産にさ」
そう、戦っている中でライアはずっと疑問に思っていた。
聖女派閥の最強の騎士である『剣の聖騎士』ウーナが魔王の捜索をしていてこの村にたどり着いた事。
それと関連するならば、騎士団派閥のスザクが一体何の用で、【魔王】と【勇者】の一体どっちに用があってこの村に来たのか、それはライアにとっては死活問題となる話なので聞かずにはいられない話だったのである。
「・・・いいでしょう、これは極秘任務なので本来は言えませんが、ですが、私は確信を持っていますのでお答えしましょう、私は、
──────────【勇者】の捜索に参りました」
そこで観客が一斉に騒いだ。
当然だ、【勇者】とは全世界注目の的であり、それが誕生したと知られたならば全人類を上げて【勇者】を見つけ出し、魔王軍との戦いに送り出すに違いないのだから。
「な・・・アイツも【勇者】を、クソッ、こっちは手がかりすら見つけられてないってのにッ!!」
そして【勇者】の捜索を命じられながらなんの手がかりも見つけられなかったシェーンは、確信を持つと言ったスザクの言葉に動揺
し、絶望した。
「・・・驚かないのですね、私は人間にとっては驚かずにはいられないような衝撃の真実を口にしたのですが」
「・・・いいや、普通に考えてお前みたいなスゴい奴、【勇者】か【魔王】の捜索のような大仕事でも無ければこんな田舎までわざわざ来る事なんて一生無いだろう、だから、当然と言えば当然の話なんだ、・・・それで【勇者】は見つかったか?」
「ええ・・・、まさか【勇者】があんな子供だとは思いませんでしたが、ですが、あの才覚、力強さ、身に合わぬ屈強さ、どこからどう見ても【勇者】に間違いありません、それが魔族に支配された村で飼い殺されているとは、やはり魔族は許し難い、だから私はあなたを倒し魔族を滅ぼして、【勇者】を貰い受けます!!」
その口ぶりからして目星をつけたのは俺では無いようだ、なので安心して売り文句に応えた。
「そうかい、・・・まぁ別にそれは好きにしろって話なんだがね、俺には俺の戦う理由があるッ!!、俺は勝たなきゃいけないんだ、だから全力で・・・、倒させてもらうッ!!!!」
「聖剣を持つ私に歯向かうとは愚かな、今すぐ背を向けて立ち去るのであれば、私もこの剣を収めてもよかったのに・・・、死にたいのなら、お望み通りに!!」
そこでスザクは剣を構えた。
もしその剣を正面から受け止めれば、俺はひとたまりもなく消し飛ぶだろう。
生き物の本能として、火に飛び込んだら燃え尽きて死ぬみたいな、直感的な死の予兆だけは感じ取れた。
だけど俺は逃げずに立ち向かった。
それは全部、自分の為だ。
この戦いの果てには明るい未来が待っている、だから俺はオールインして突っ込むのだ。
・・・なぁ妖刀、お前はこれで満足か、ここで終わって満足か、違うよな、お前が幾千幾万の血を啜ってもまだ足りないような、そんな強欲で業突く張りな呪いだって、俺は文字通り身に染みて理解ってるんだから。
だから妖刀、お前の全部、俺によこせ、そしたら俺がもっと沢山の血をお前に吸わせてやる、それがお前の力になるんだろう、満たされる事の無いお前の衝動を俺が満たしてやる、だから。
「───もっと寄越せ、お前の力を!!!」
俺の声に妖刀が応えた。
妖刀の中には妖刀に斬られた者達の怨嗟が渦巻いていた、それは血の記憶であり、妖刀が刈り取った魂の残滓だ。
そしてそれらの怨念を全て解放する事により、妖刀はこの一太刀に己の全てを賭けて、目の前の敵を断ち切る宝具となった。
どう見ても勝ち目の無い戦いにライアが挑んでいる、その姿を見たクローディアは、手助け出来ないと分かっていても、叫ばずにはいられなかった。
「いけ!!、ライア!!、絶対勝ってクロと決勝で戦うのん!!!」
「聖剣抜刀、我らに救済の光を、約束された勝利を、《エクスカリバー》」
「ダークネス、ギガ、ソード、ブレイクゥウウウウウウウウウウウウウ!!!!」
【貧者の一撃】【愚者の乾坤一擲】、それは敵が強大であればあるほど、自身が貧弱であればある程に効果を発揮する、起死回生のレアスキル。
【勇者】にだけ許された、世の理をひっくり返し運命を弾き返す、理不尽と不条理に抗う力。
擬似とは言え聖剣という最強の力に対して二つのスキルは最大限の効力を発揮して、ライアに立ち向かう力を与えた。
聖剣と妖刀、相反する属性を持つ二つの斬撃が衝突する。
「・・・馬鹿な!!、互角、擬似とは言えこちらは聖剣、それに抗う妖刀など聞いた事がありません!!」
「・・・これは、未来を捨てたこいつの執念の力だ、分からねぇよな、未来のあるお前には、その日暮らしで、未来なんか無い俺たちの気持ちなんかよぉ!!!」
それは純粋な嫉妬だった。
肉付きも良く高身長でその上イケメンなスザクは、最初からライアにとっては敵だったからだ。
貧食で、貧弱で、顔も頭脳もパッとしないライアにとって、超エリート騎士であるスザクの存在は憎悪の対象になり得るくらいに妬ましい。
【勇者】なんてスザクみたいな最初から持ってる奴がやれば自分は苦労も嫉妬も憎悪もしなかったのにと、そんな感傷を抱く程にスザクが憎かったのだ。
そしてそんななんでも持ってるやつが、ただの理屈で持ってない奴の貴重な労働力である魔族を奪おうとしているとすれば、それはライアにとっては琴線に触れるような理不尽だ。
だからライアは、今では理屈より先に感情でスザクに剣を向ける。
こいつにはクズで底辺な俺が勝たなくてはいけないと、そう思ったから。
殺意ではないただの嫉妬と憎悪だけで、殺意の刃を振り抜いたのであった。
「嘘だ・・・、千年の歴史に於いて一度も敗れる事の無い聖剣が、魔剣ですら無い妖刀に、・・・負けた・・・?」
「はぁはぁ、サンキュー妖刀、・・・いや『斬々宿儺』、お前のおかげで、未来を切り開けたよ」
俺がそう言うと、『斬々宿儺』は元々限界だったのか、役目を終えたかのように砕け散った。
怨念という魔力の全てを使い果たした妖刀は、それこそが本懐だったとでも言うように、満足気だった気がした。
「ああー!!、クロの刀が壊れちゃったのん!!」
「いや、お前がウーナの技を使った時点で限界だったからな?、あの技使ったら普通の剣はぶっ壊れるし、むしろ今までよくもったと言うか・・・」
「・・・私の負けです、見事な一太刀、どうやらあの妖刀に私は、魂を刈り取られたようだ、今は、とても、晴れやかな気持ちです」
スザクが地面にうつ伏せに倒れるとそこから血が染み出した。
仕方の無い話だ、お互いに死力を尽くした勝負、決着を付ければ敗者が死ぬのは必然だった。
俺は死にゆくスザクに尋ねた。
「・・・なぁ、最期に聞かせてくれよ、あんたが見つけた【勇者】って、誰なんだ?」
もしここで俺を指名されたなら、俺はもうこの村で生きていけない、そういう意味ではこの質問は賭けだったし、このまま口封じした方が都合が良かったが。
「ふ、茶番がお好きですね、あなただって分かっているのでしょう、あの子ですよ、あの年で特級騎士やSランク冒険者に匹敵する実力、それこそ勇者の存在証明じゃないですか、まさか知らなかったと、とぼけるつもりですか」
スザクがそう言って控え室から顔を覗かせるクロを指さすと、当然のように観客は驚きの声を上げた。
「ええええええええええええええええええええええええええ!!!?、クロって【勇者】だったのん!?」
「えええええええええええええええええええええええええ!!!!!?????、嘘だろオイ、お前、【勇者】だったのかよ!??」
クロとシェーンのみならず、観戦していた観客皆が似たような反応で驚きの声を上げる中。
「あやつは何を言っておるのだ?、【勇者】とは勇者の事であろう、何故・・・むぐっ」
「ミュトスさん、後でワイン飲ませてあげるので、ここは話を合わせてください」
「・・・はは、どうやらこの村の住人は皆節穴のようですね、まぁ普通はこんな田舎から勇者が誕生するなんて夢にも思わないか、だからきっと、魔族に騙されたんでしょうね・・・、でも、これであなた達の計画も終わりです、村人が勇者の誕生を知れば、それを隠し通す事は不可能ですから、・・・うっ、私が死んでも・・・・・・」
っと、そこで意識が遠のいたのかスザクは吐血し言葉を詰まらせた。
俺はそこでメリーさんを呼んでスザクにヒールをかけてやる。
「何故?、私を生かすのですか?、私は、魔族を殺そうとしてたのに」
「いや、なんか事情は分からないけど、お前がミュトス様を倒そうとしたのって、【勇者】が関係してるっていう使命感からなんだろ?、ミュトス様は村の大事な守り神であり、大切な仲間だけど、【勇者】を引き合いに出されたら、あんたの事、憎む事なんて出来ねぇよ、ま、バトルは正々堂々、男と男のガチンコ勝負で決着着いた訳だし、お互い文句はねェよな!!」
そう言って俺はスザクに握手を求めると、スザクもそれで毒気を抜かれたのか、握手を受け入れた。
「・・・どうやら私の方こそ勘違いをしていたようですね、あなたは洗脳されていたのでは無く、ただ、知らなかっただけ、そう、全ての元凶は、宣告を偽ったプリースト、あなただ!!」
そう言ってスザクはメリーさんに剣を向けるが、俺はメリーさんをかばうように前に出て、作り話を始めた。
「メリーさんを責めないでくれ、きっと、メリーさんも脅されていただけで、本当は、裏にもっと悪い奴がいるはずなんだ!!」
「脅されていた・・・?、ではそこのプリーストは一体誰に脅されていたっていうのですか?」
「─────────これも全て、フエメっていう奴の仕業なんだ、奴はサマーディ村の支配者で誰も逆らう事が出来ない存在で、村の男達から財産を貢がせるとんでもない暴君で、きっと【勇者】の事も自分が利用する為に隠してたに違いない、あの子も実は、そのフエメっていう奴の家の養子として引き取られたんだ・・・、俺もフエメに脅されて、汚い事を沢山やらされて来た・・・」
フエメが悪人である事を強調するように、俺はフエメにされた仕打ちをつけくわえる。
と、ここで俺がフエメを呼び捨てにして罪を擦り付けた事により観客側から怒号と石が飛んでくるものの、避けるとメリーさんに当たるので甘んじて受け入れた。
そして俺は、涙ぐみながら俺もフエメに操られた被害者みたいな雰囲気を作り出した。
「フエメ、フエメ・ファタールですか、絶世の美女であり、貴族すらも跳ね除ける程の人望の持ち主、彼女も騎士団派の勇者候補の情報にはありましたが、まさかその彼女が【勇者】を秘匿した元凶とは・・・」
と、スザクが神妙な顔で唸っていると、そこに従者にして護衛のメルを引き連れてフエメが現れた。
フエメは人気者であるが故にこういう人の多い場では姿を見せないし、こんな俗っぽいイベントには顔を出さないとも思っていたが、どうやらどこかのVIP席から観戦していたようであり、このタイミングで現れるのは俺としても誤算だった。
「私がフエメだけど、最初に言っておくと、あの子は【勇者】では無いわ」
俺は機嫌を損ねないようにフエメと目を合わさないように気配消して立ち去ろうとしつつ、フエメの言葉を聞いた。
この世で一番最初に俺が【勇者】であると見抜く人間がいたらそれは間違いなくフエメだ、故に、フエメが俺が勇者だと気づいている可能性もあるし、暴露されるならば何としてでも阻止する必要があった。
「あの子は【勇者】では無い?、ならば何故あなたはあの子を養子とし、そしてあの子はあんなにも強いのですか」
「簡単な事よ、クローディア、おいで」
フエメの呼びかけにクロは一目散に応じた。
どうやら順調に調教されているようで、尻尾があれば振り回しているというくらいの勢いでクロはフエメに飛びついた。
そしてフエメは自分に抱きついているクロの髪飾りを解いて、クロの角を露出させる。
クロは自分の角を露出させる事を嫌がっていたが、フエメには逆らえないのだろう、されるがままに角をスザクに見せた。
「角・・・その子も魔族だったのですか、なら確かに【勇者】では無いが、ならば何故あなたは、魔族を養子にしたのですか、魔族を養子にする理由など・・・!」
「・・・いいえ、この子は人間よ、人間に育てられて人間の価値観に生きて人間と同じ暮らしをしている、彼女が人間では無い部分なんて、角の有無と体の頑強さ程度のもの、体の造形の違いくらい人間同士でも多少は存在するしそれに、私はこの子の角、とても可愛らしいと思うもの」
「あ・・・」
そう言ってフエメは白魚のように白く柔らかな指でクロの角を優しく撫でた。
その言葉によりクロが魔族である事に疑問や生理的嫌悪のようなものを抱いていた人間も、絶対的支配者であるフエメが「可愛らしい」という価値観を植え付ける事で、「違和感」を「可愛らしいもの」という印象に上書きしたのであった。
まぁ元々ミュトスが村の大きな労働力として貢献していて、魔族が無害で有益な存在というのが広まっていたいうのもあるだろう。
クロが魔族である事の暴露に対して否定的な言葉は誰も言わなかった。
「理解出来たかしら、この子は【勇者】じゃないし、私は魔族であるこの子が迫害を受けないように保護しているだけ、もしあなたが勇者を探しているのなら・・・、そうね、そこのゴミとか捕まえて調べてみたらいいんじゃない、聖剣を打ち負かすくらいだから、もしかしたら勇者の可能性もあるわよね」
と、フエメがここで確信犯めいた爆弾を投下してきたので、俺は素知らぬ顔で否定した。
「はは、俺はただの【モンク】だし、聖剣に勝ったのはたまたまで、『斬々宿儺』が本気を出してくれたから、それに、俺が【勇者】だったらとっくにそれを自慢して世界を救う旅に出ていますよ、ね、メリーさん」
「え、あ、は、はい、そそそ、そうですね」
メリーさんはめちゃくちゃ下手な作り笑いを浮かべるものの、動揺しすぎていて怪しさしか無かった。
うーん、一言もしゃべらせないのも不自然かと思ったが、メリーさんに嘘をつかせるのは中々難しいんだと俺は反省する。
こんな嘘が下手な人に俺が騙されたのもきっと、プリーストという職業バイアスが大きったんだろう。
とにかく俺はこのままではまずいと会話の流れを変えた。
「というかそもそも、クロが【勇者】じゃないならこの村に【勇者】になれそうな候補なんていないですよ、そもそもここ悪人の村として有名だし、サマーディ村は闘技祭に勝ち上がるのが乳汁王子しかいないような雑魚ばっかだし、勝ち上がったメンツから考えても、この村に【勇者】がいるとはとても信じられない話ですが、スザクさんはもし【勇者】が他にいるとしたら、誰だと思いますか?」
「え、それは・・・」
他に心当たりが無かったのだろう、スザクは周囲を見渡すが、見当も付かず、首を傾げた。
「まぁ折角なんで、大会を最後まで見て行ってください、決勝まで見て行けば、この村には【勇者】なんていないって、分かる筈ですから」
俺がそう言うとスザクもそれで納得したのかは分からないが、それで決着となった。
しかし、ここで俺にとって最悪の事実の判明だ。
シェーンがいる事から魔族側が【勇者】の誕生を予見していたのは分かっていたが、ここに騎士団派という人間側にまで【勇者】の誕生が知れ渡っているというのは、俺にとっては逃げ場が無くなるという最悪の展開だろう。
故に俺は、本当にこの村に留まっていていいのか、それについて考えていたのであった。
もしかしたらナルカのヒモになりに行く日はそう遠く無いのかもしれない。
「わ、分かりました、《ヒール》」
「妖刀を使えば私に勝てるとでも?、お好きになさい、いかに小細工を使おうとも、私はそれを正面からねじ伏せて差し上げましょう」
スザクは小細工など通じないと言わんばかりにこちらの横暴を見逃した。
俺はクロが回復する時間を稼ぐ為にスザクに話しかけた。
「・・・一つ、聞かせてくれないか、何故お前は魔族を目の敵にするんだ、親でも殺されたか?だが、親も所詮は他人だ、自分がされた仕打ちや恨みへの意趣返しとして魔族を虐待したり虐殺するなら俺は止めないが、親や恋人なんて所詮は他人なんだ、いくらでも代用は利くし、そんなものに執着して意味の無い復讐に囚われるなんてバカげている。
だからもし復讐だとしたらやめろッ!!、他人の為になんて全部欺瞞だ、お前が魔族を虐殺する事に快感を得ているなら俺は止めない、だが復讐は復讐の連鎖を生み出すだけで意味の無い行為だ、復讐はやめろ、それは巡り巡って損しかしない行為でしかないッ!!」
俺はいかにも正義感の強い熱血漢風にスザクを説得する演技を試みる。
「・・・いや、もっともらしい事言ってるようで親も他人とか代用利くとか虐殺なら止めないとか、色々前提がおかしくねェか?」
「大丈夫です、それがライアさんの持ち味ですから・・・」
シェーンの呆れた呟きにメリーはそうツッコミを入れた。
「私が魔族を嫌う理由?、おかしいですね、この村には聖書の教義が広まっていないのですか?、聖書にちゃんと書かれてるじゃないですか、「隣人を愛し、亜人は滅ぼすべし」と、我々は異民族を駆逐し滅ぼす事で繁栄の歴史を刻んでいる、そしてその繁栄と平和を脅かす存在が魔族なのです、だから、魔族は駆逐しなければいけない、でなければ、悲劇を引き起こすのですから・・・っ」
そういうスザクの目に宿る炎は憎悪の色をしていた。
スザクが魔族に何を奪われて、どうして憎むのかは俺には分からない、だけど、スザクが魔族を嫌う理由が取り返しのつかない憎しみに支配されているというのは、その目と言葉だけで理解出来た。
「なら俺がお前の業を、断ち切ってやるよ、この世界は自由だ、だからお前の憎しみも、目的も、全部自由でいい、だが、お前みたいな他人を憎むことでしか救われないようなクズは、この俺が断ち切る」
俺はメリーさんから投げ渡されたクロの妖刀を抜刀する。
妖刀の中には怨念が巣食っていた。
手に持つだけで血を求める妖刀の渇きに魂が侵食されていくが、だが呪いに耐性を持つ【勇者】であり、無敵の加護を付与するロザリオまで持っている俺の魂を妖刀は食らう事が出来ないらしい、俺は妖刀の支配に抗う事が出来た。
横目でクロがメリーさんのヒールを受けて回復しているのを確認すると、俺は叫んだ。
「クロ、俺に大号令をくれ!!!、はやく!!!」
「え?、それって反則じゃないのん?、てかクロの刀も勝手に使ってるし訳が分からないのん」
「クロさん、この戦いにルールなんてありません、だから大号令をかけてください、でないとライアさんに勝ち目なんてありません、だからどうか」
メリーはライアの味方としてライアを勝たせる為に、クローディアに大号令の使用を催促した。
「うぅ・・・メリーに頼まれたら仕方ないのん、《我が軍勢よ、我が命に従い、我が覇道を示せ》」
「うぉおおおおおきたきたきたぁ!!、体中から力が漲ってくる、これが大号令の力!、今なら誰が相手でも負ける気がしねぇ、かかってこいや三下ァッ!!!」
「・・・それが貴方の秘策?、大号令とは驚きですが、その程度で私に勝てるとでも?」
俺が真正面から馬鹿正直に切りかかると、スザクも抜刀して切り結ぶが、大号令で強化された筈の俺のステータスでもスザクにいとも簡単に弾き返された。
「な!?・・・っ」
「私は特級騎士、王国の全騎士10万人の頂点に立つ超エリートですよ、その私が大号令と妖刀如きに倒される訳が無いでしょう」
「超エリートか・・・、ふん、確かに、今の俺じゃあ歯が立たないみたいだな、・・・おい妖刀、お前の力はこんなものじゃないだろ、全部引き出してやるからっ・・・、お前の本気でっ、俺を勝たせろ・・・!!」
俺は魔王であるクロの最大級の援護と装備を使ってもスザクに勝てないと知り、ならばと妖刀に語りかけた。
さっきから妖刀を掴む手を通して脳内に鳴り響く声。
血を求め、その尽くを断ち切る事を目的とする妖刀の、そのもっとも原始的で強烈な衝動。
その黒く濁った汚泥のような衝動を俺は受け入れる事で、妖刀は更なる力を引き出した。
その瞬間、俺の体と魂は完全に妖刀に侵食されて、ただの殺人マシーンへと生まれ変わった。
「・・・・・・・・・・・・・・斬ル」
「・・・妖刀に自らの魂まで差し出すとはなんと愚かな、そうまでして魔族を庇うとはやはり完全に洗脳されているようですね、あなたは、・・・死刑です」
スザクは一息にケリをつけようとライアを切り裂いた。
だが斬られたはずのライアは蜃気楼のように立ち消える。
「・・・残像?、とても素人とは思えない妖しい動きをすると思ってましたがまさかその妖刀、『死神憑』ですか、だとしたら今のあなたは死神そのもの、『死神憑』と適合するとは、なんという業の深さ、やはりあなたは粛清されるべき人間のようだ」
『死神憑』とは斬った相手の血と魂を吸う事で無限に強化される妖刀の、その最上位。
死神に取り憑かれた剣は、持ち主の魂を食らう事により、その剣に宿る剣士達の記憶を呼び覚まし持ち主に付与する。
妖刀に完全適合したライアは、全ステータスオールEという貧弱なステータスを完全に克服する純粋な技の技量により、スザクを圧倒した。
ライアの肉体が貧弱過ぎるが故に、いかにスザクの隙をついて一撃見舞おうとも、それは薄皮一枚を撫でるようなものであり、ダメージにはならなかったが。
しかし、スザクからすれば一方的に攻撃されて手傷を負わされている状況であり、超エリートである彼にとって、この膠着は度し難いものであった。
そして観客は、クズで無能な若者の見本のような存在だった筈のライアが、想像を上回る激闘をしている事に歓喜し湧いていた。
「・・・いいでしょう、ならば全力で断ち切るまで、火の精霊よ、不死鳥の加護を授け、我が敵を焼き尽せ、《ディバイン・フレイム》」
スザクは身に炎を纏い、鎧と剣、両方に炎属性を付与する。
その炎は神聖なる浄化の炎、妖刀にとっては弱点となる特攻魔法だった。
「おおっと、炎が熱いのか、攻勢だったライア、ここで受けに回りました、スザク選手が押しています、どういう事でしょうか、村長」
「・・・ライアは邪悪であるが故に妖刀に強く適合したが、それ故に神聖の象徴である炎は弱点となるのだろう、光魔法では無い分マシとは言え、騎士の放つ炎は不死鳥の加護を持っておる、故に、あれに一太刀でも貰えばその傷から炎が広がり、浄化されてしまうだろう」
「なるほど、流石スザク選手、特級騎士の肩書きは伊達では無いという事でしょうか、しかしライアも、妖刀のおかげとはいえかなり善戦している様子、これは最後まで勝負は分からないか?」
その戦いは文字通り観戦していた村人の目に焼き付いた。
スザクは無駄の無い洗練された動きでライアを攻撃するが、ライアはそれを凪のように音の無い足さばきで華麗にかわした。
それは正しく激しく燃え盛る炎と、それに抗わずに流れる清流の戦いだった。
その名勝負を演じている男が、村ではドラ息子代表のライアである事を、その瞬間だけは皆が忘れて、ライアを応援していたのだった。
「はぁはぁ、埒が明きませんね、スタミナだけは一級品か、はたまた大号令と妖刀の等級が超一級なのか、ここまで戦って息一つ乱れないとは、・・・あなたを危険分子と認め、最終奥義で倒させてもらいます、集え、13の英霊の魂よ、救済の裁きを、これは世界を救う戦いである・・・!!《決議・開始》!!」
それは聖剣を再現する為に生み出された、擬似的な聖剣の生成魔法。
特級宝具である聖遺物の十字架を通じて13の英霊の承認を受ける事により、救済の象徴である最強の聖剣を生み出すという、騎士団の特級騎士だけに許された最強魔法だった。
「承認」と、過半数の承認を受けて擬似聖剣の発動が可決される。
スザクの持つ剣が聖剣と化し、最強の光魔法の加護を受けて眩い光を放つ。
誰もがその光に目を奪われて、そしてライアの死と敗北を確信したが。
「・・・次で最後か、なぁあんた、最後に聞かせて貰ってもいいかい?」
ライアは妖刀に体を明け渡していたが、聖剣の光により妖刀の支配が弱まり、それでライアは体の主導権を奪い返したのであった。
「驚きましたね、『死神憑』に魂を売り渡したと思ってましたが、まさか自我があったとは、信じられない事です、・・・それで聞きたい事とは」
スザクはライアを裁くべき罪人として見ていたが、それでも自身の全力を受け止めた好敵手として辞世の句くらいは聞くつもりで答えてやった。
「・・・あんたは強い、流石は特級騎士だな、多分、人間の中ではあんたは最強の部類にいる英雄なんだろう、・・・それで、なんでそんなあんたがこんな辺境の、辺鄙で不便なクソ田舎の寒村まで来たのか、出来れば教えてくれないかな?、・・・冥土の土産にさ」
そう、戦っている中でライアはずっと疑問に思っていた。
聖女派閥の最強の騎士である『剣の聖騎士』ウーナが魔王の捜索をしていてこの村にたどり着いた事。
それと関連するならば、騎士団派閥のスザクが一体何の用で、【魔王】と【勇者】の一体どっちに用があってこの村に来たのか、それはライアにとっては死活問題となる話なので聞かずにはいられない話だったのである。
「・・・いいでしょう、これは極秘任務なので本来は言えませんが、ですが、私は確信を持っていますのでお答えしましょう、私は、
──────────【勇者】の捜索に参りました」
そこで観客が一斉に騒いだ。
当然だ、【勇者】とは全世界注目の的であり、それが誕生したと知られたならば全人類を上げて【勇者】を見つけ出し、魔王軍との戦いに送り出すに違いないのだから。
「な・・・アイツも【勇者】を、クソッ、こっちは手がかりすら見つけられてないってのにッ!!」
そして【勇者】の捜索を命じられながらなんの手がかりも見つけられなかったシェーンは、確信を持つと言ったスザクの言葉に動揺
し、絶望した。
「・・・驚かないのですね、私は人間にとっては驚かずにはいられないような衝撃の真実を口にしたのですが」
「・・・いいや、普通に考えてお前みたいなスゴい奴、【勇者】か【魔王】の捜索のような大仕事でも無ければこんな田舎までわざわざ来る事なんて一生無いだろう、だから、当然と言えば当然の話なんだ、・・・それで【勇者】は見つかったか?」
「ええ・・・、まさか【勇者】があんな子供だとは思いませんでしたが、ですが、あの才覚、力強さ、身に合わぬ屈強さ、どこからどう見ても【勇者】に間違いありません、それが魔族に支配された村で飼い殺されているとは、やはり魔族は許し難い、だから私はあなたを倒し魔族を滅ぼして、【勇者】を貰い受けます!!」
その口ぶりからして目星をつけたのは俺では無いようだ、なので安心して売り文句に応えた。
「そうかい、・・・まぁ別にそれは好きにしろって話なんだがね、俺には俺の戦う理由があるッ!!、俺は勝たなきゃいけないんだ、だから全力で・・・、倒させてもらうッ!!!!」
「聖剣を持つ私に歯向かうとは愚かな、今すぐ背を向けて立ち去るのであれば、私もこの剣を収めてもよかったのに・・・、死にたいのなら、お望み通りに!!」
そこでスザクは剣を構えた。
もしその剣を正面から受け止めれば、俺はひとたまりもなく消し飛ぶだろう。
生き物の本能として、火に飛び込んだら燃え尽きて死ぬみたいな、直感的な死の予兆だけは感じ取れた。
だけど俺は逃げずに立ち向かった。
それは全部、自分の為だ。
この戦いの果てには明るい未来が待っている、だから俺はオールインして突っ込むのだ。
・・・なぁ妖刀、お前はこれで満足か、ここで終わって満足か、違うよな、お前が幾千幾万の血を啜ってもまだ足りないような、そんな強欲で業突く張りな呪いだって、俺は文字通り身に染みて理解ってるんだから。
だから妖刀、お前の全部、俺によこせ、そしたら俺がもっと沢山の血をお前に吸わせてやる、それがお前の力になるんだろう、満たされる事の無いお前の衝動を俺が満たしてやる、だから。
「───もっと寄越せ、お前の力を!!!」
俺の声に妖刀が応えた。
妖刀の中には妖刀に斬られた者達の怨嗟が渦巻いていた、それは血の記憶であり、妖刀が刈り取った魂の残滓だ。
そしてそれらの怨念を全て解放する事により、妖刀はこの一太刀に己の全てを賭けて、目の前の敵を断ち切る宝具となった。
どう見ても勝ち目の無い戦いにライアが挑んでいる、その姿を見たクローディアは、手助け出来ないと分かっていても、叫ばずにはいられなかった。
「いけ!!、ライア!!、絶対勝ってクロと決勝で戦うのん!!!」
「聖剣抜刀、我らに救済の光を、約束された勝利を、《エクスカリバー》」
「ダークネス、ギガ、ソード、ブレイクゥウウウウウウウウウウウウウ!!!!」
【貧者の一撃】【愚者の乾坤一擲】、それは敵が強大であればあるほど、自身が貧弱であればある程に効果を発揮する、起死回生のレアスキル。
【勇者】にだけ許された、世の理をひっくり返し運命を弾き返す、理不尽と不条理に抗う力。
擬似とは言え聖剣という最強の力に対して二つのスキルは最大限の効力を発揮して、ライアに立ち向かう力を与えた。
聖剣と妖刀、相反する属性を持つ二つの斬撃が衝突する。
「・・・馬鹿な!!、互角、擬似とは言えこちらは聖剣、それに抗う妖刀など聞いた事がありません!!」
「・・・これは、未来を捨てたこいつの執念の力だ、分からねぇよな、未来のあるお前には、その日暮らしで、未来なんか無い俺たちの気持ちなんかよぉ!!!」
それは純粋な嫉妬だった。
肉付きも良く高身長でその上イケメンなスザクは、最初からライアにとっては敵だったからだ。
貧食で、貧弱で、顔も頭脳もパッとしないライアにとって、超エリート騎士であるスザクの存在は憎悪の対象になり得るくらいに妬ましい。
【勇者】なんてスザクみたいな最初から持ってる奴がやれば自分は苦労も嫉妬も憎悪もしなかったのにと、そんな感傷を抱く程にスザクが憎かったのだ。
そしてそんななんでも持ってるやつが、ただの理屈で持ってない奴の貴重な労働力である魔族を奪おうとしているとすれば、それはライアにとっては琴線に触れるような理不尽だ。
だからライアは、今では理屈より先に感情でスザクに剣を向ける。
こいつにはクズで底辺な俺が勝たなくてはいけないと、そう思ったから。
殺意ではないただの嫉妬と憎悪だけで、殺意の刃を振り抜いたのであった。
「嘘だ・・・、千年の歴史に於いて一度も敗れる事の無い聖剣が、魔剣ですら無い妖刀に、・・・負けた・・・?」
「はぁはぁ、サンキュー妖刀、・・・いや『斬々宿儺』、お前のおかげで、未来を切り開けたよ」
俺がそう言うと、『斬々宿儺』は元々限界だったのか、役目を終えたかのように砕け散った。
怨念という魔力の全てを使い果たした妖刀は、それこそが本懐だったとでも言うように、満足気だった気がした。
「ああー!!、クロの刀が壊れちゃったのん!!」
「いや、お前がウーナの技を使った時点で限界だったからな?、あの技使ったら普通の剣はぶっ壊れるし、むしろ今までよくもったと言うか・・・」
「・・・私の負けです、見事な一太刀、どうやらあの妖刀に私は、魂を刈り取られたようだ、今は、とても、晴れやかな気持ちです」
スザクが地面にうつ伏せに倒れるとそこから血が染み出した。
仕方の無い話だ、お互いに死力を尽くした勝負、決着を付ければ敗者が死ぬのは必然だった。
俺は死にゆくスザクに尋ねた。
「・・・なぁ、最期に聞かせてくれよ、あんたが見つけた【勇者】って、誰なんだ?」
もしここで俺を指名されたなら、俺はもうこの村で生きていけない、そういう意味ではこの質問は賭けだったし、このまま口封じした方が都合が良かったが。
「ふ、茶番がお好きですね、あなただって分かっているのでしょう、あの子ですよ、あの年で特級騎士やSランク冒険者に匹敵する実力、それこそ勇者の存在証明じゃないですか、まさか知らなかったと、とぼけるつもりですか」
スザクがそう言って控え室から顔を覗かせるクロを指さすと、当然のように観客は驚きの声を上げた。
「ええええええええええええええええええええええええええ!!!?、クロって【勇者】だったのん!?」
「えええええええええええええええええええええええええ!!!!!?????、嘘だろオイ、お前、【勇者】だったのかよ!??」
クロとシェーンのみならず、観戦していた観客皆が似たような反応で驚きの声を上げる中。
「あやつは何を言っておるのだ?、【勇者】とは勇者の事であろう、何故・・・むぐっ」
「ミュトスさん、後でワイン飲ませてあげるので、ここは話を合わせてください」
「・・・はは、どうやらこの村の住人は皆節穴のようですね、まぁ普通はこんな田舎から勇者が誕生するなんて夢にも思わないか、だからきっと、魔族に騙されたんでしょうね・・・、でも、これであなた達の計画も終わりです、村人が勇者の誕生を知れば、それを隠し通す事は不可能ですから、・・・うっ、私が死んでも・・・・・・」
っと、そこで意識が遠のいたのかスザクは吐血し言葉を詰まらせた。
俺はそこでメリーさんを呼んでスザクにヒールをかけてやる。
「何故?、私を生かすのですか?、私は、魔族を殺そうとしてたのに」
「いや、なんか事情は分からないけど、お前がミュトス様を倒そうとしたのって、【勇者】が関係してるっていう使命感からなんだろ?、ミュトス様は村の大事な守り神であり、大切な仲間だけど、【勇者】を引き合いに出されたら、あんたの事、憎む事なんて出来ねぇよ、ま、バトルは正々堂々、男と男のガチンコ勝負で決着着いた訳だし、お互い文句はねェよな!!」
そう言って俺はスザクに握手を求めると、スザクもそれで毒気を抜かれたのか、握手を受け入れた。
「・・・どうやら私の方こそ勘違いをしていたようですね、あなたは洗脳されていたのでは無く、ただ、知らなかっただけ、そう、全ての元凶は、宣告を偽ったプリースト、あなただ!!」
そう言ってスザクはメリーさんに剣を向けるが、俺はメリーさんをかばうように前に出て、作り話を始めた。
「メリーさんを責めないでくれ、きっと、メリーさんも脅されていただけで、本当は、裏にもっと悪い奴がいるはずなんだ!!」
「脅されていた・・・?、ではそこのプリーストは一体誰に脅されていたっていうのですか?」
「─────────これも全て、フエメっていう奴の仕業なんだ、奴はサマーディ村の支配者で誰も逆らう事が出来ない存在で、村の男達から財産を貢がせるとんでもない暴君で、きっと【勇者】の事も自分が利用する為に隠してたに違いない、あの子も実は、そのフエメっていう奴の家の養子として引き取られたんだ・・・、俺もフエメに脅されて、汚い事を沢山やらされて来た・・・」
フエメが悪人である事を強調するように、俺はフエメにされた仕打ちをつけくわえる。
と、ここで俺がフエメを呼び捨てにして罪を擦り付けた事により観客側から怒号と石が飛んでくるものの、避けるとメリーさんに当たるので甘んじて受け入れた。
そして俺は、涙ぐみながら俺もフエメに操られた被害者みたいな雰囲気を作り出した。
「フエメ、フエメ・ファタールですか、絶世の美女であり、貴族すらも跳ね除ける程の人望の持ち主、彼女も騎士団派の勇者候補の情報にはありましたが、まさかその彼女が【勇者】を秘匿した元凶とは・・・」
と、スザクが神妙な顔で唸っていると、そこに従者にして護衛のメルを引き連れてフエメが現れた。
フエメは人気者であるが故にこういう人の多い場では姿を見せないし、こんな俗っぽいイベントには顔を出さないとも思っていたが、どうやらどこかのVIP席から観戦していたようであり、このタイミングで現れるのは俺としても誤算だった。
「私がフエメだけど、最初に言っておくと、あの子は【勇者】では無いわ」
俺は機嫌を損ねないようにフエメと目を合わさないように気配消して立ち去ろうとしつつ、フエメの言葉を聞いた。
この世で一番最初に俺が【勇者】であると見抜く人間がいたらそれは間違いなくフエメだ、故に、フエメが俺が勇者だと気づいている可能性もあるし、暴露されるならば何としてでも阻止する必要があった。
「あの子は【勇者】では無い?、ならば何故あなたはあの子を養子とし、そしてあの子はあんなにも強いのですか」
「簡単な事よ、クローディア、おいで」
フエメの呼びかけにクロは一目散に応じた。
どうやら順調に調教されているようで、尻尾があれば振り回しているというくらいの勢いでクロはフエメに飛びついた。
そしてフエメは自分に抱きついているクロの髪飾りを解いて、クロの角を露出させる。
クロは自分の角を露出させる事を嫌がっていたが、フエメには逆らえないのだろう、されるがままに角をスザクに見せた。
「角・・・その子も魔族だったのですか、なら確かに【勇者】では無いが、ならば何故あなたは、魔族を養子にしたのですか、魔族を養子にする理由など・・・!」
「・・・いいえ、この子は人間よ、人間に育てられて人間の価値観に生きて人間と同じ暮らしをしている、彼女が人間では無い部分なんて、角の有無と体の頑強さ程度のもの、体の造形の違いくらい人間同士でも多少は存在するしそれに、私はこの子の角、とても可愛らしいと思うもの」
「あ・・・」
そう言ってフエメは白魚のように白く柔らかな指でクロの角を優しく撫でた。
その言葉によりクロが魔族である事に疑問や生理的嫌悪のようなものを抱いていた人間も、絶対的支配者であるフエメが「可愛らしい」という価値観を植え付ける事で、「違和感」を「可愛らしいもの」という印象に上書きしたのであった。
まぁ元々ミュトスが村の大きな労働力として貢献していて、魔族が無害で有益な存在というのが広まっていたいうのもあるだろう。
クロが魔族である事の暴露に対して否定的な言葉は誰も言わなかった。
「理解出来たかしら、この子は【勇者】じゃないし、私は魔族であるこの子が迫害を受けないように保護しているだけ、もしあなたが勇者を探しているのなら・・・、そうね、そこのゴミとか捕まえて調べてみたらいいんじゃない、聖剣を打ち負かすくらいだから、もしかしたら勇者の可能性もあるわよね」
と、フエメがここで確信犯めいた爆弾を投下してきたので、俺は素知らぬ顔で否定した。
「はは、俺はただの【モンク】だし、聖剣に勝ったのはたまたまで、『斬々宿儺』が本気を出してくれたから、それに、俺が【勇者】だったらとっくにそれを自慢して世界を救う旅に出ていますよ、ね、メリーさん」
「え、あ、は、はい、そそそ、そうですね」
メリーさんはめちゃくちゃ下手な作り笑いを浮かべるものの、動揺しすぎていて怪しさしか無かった。
うーん、一言もしゃべらせないのも不自然かと思ったが、メリーさんに嘘をつかせるのは中々難しいんだと俺は反省する。
こんな嘘が下手な人に俺が騙されたのもきっと、プリーストという職業バイアスが大きったんだろう。
とにかく俺はこのままではまずいと会話の流れを変えた。
「というかそもそも、クロが【勇者】じゃないならこの村に【勇者】になれそうな候補なんていないですよ、そもそもここ悪人の村として有名だし、サマーディ村は闘技祭に勝ち上がるのが乳汁王子しかいないような雑魚ばっかだし、勝ち上がったメンツから考えても、この村に【勇者】がいるとはとても信じられない話ですが、スザクさんはもし【勇者】が他にいるとしたら、誰だと思いますか?」
「え、それは・・・」
他に心当たりが無かったのだろう、スザクは周囲を見渡すが、見当も付かず、首を傾げた。
「まぁ折角なんで、大会を最後まで見て行ってください、決勝まで見て行けば、この村には【勇者】なんていないって、分かる筈ですから」
俺がそう言うとスザクもそれで納得したのかは分からないが、それで決着となった。
しかし、ここで俺にとって最悪の事実の判明だ。
シェーンがいる事から魔族側が【勇者】の誕生を予見していたのは分かっていたが、ここに騎士団派という人間側にまで【勇者】の誕生が知れ渡っているというのは、俺にとっては逃げ場が無くなるという最悪の展開だろう。
故に俺は、本当にこの村に留まっていていいのか、それについて考えていたのであった。
もしかしたらナルカのヒモになりに行く日はそう遠く無いのかもしれない。
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