39 / 58
39 守るために
しおりを挟む
アレクサンドルは、マーガレットを側室達の住む城ではなく、自分が保有している幼い頃の思い出の残る屋敷に住まわせ、そこへ通った。
どう言う訳かこの頃、王妃がアレクサンドルの外出を許すようになっていたのだ。
平民の側室の下へなら行っても構わないと、ただし、夜は必ず城へ戻っている事が条件だった。
それはアレクサンドルにとっては、願ってもない事。
会える時間には限りがあるが、マーガレットと過ごす時は、これまでになく幸せに満ちていた。
マーガレットと紡いでいく日々は、アレクサンドルに生きる希望を与えていく。
自ら愛する者に触れ、初めて唇を重ねた日、この行為がこんなに素晴らしいものだったことを知った。
愛しさが募り、彼女の肌に手を伸ばした。
それは、媚薬なしでは嫌悪しか感じた事がなかった行為。
しかし、マーガレットとの触れ合いは、今まで感じていたものとは全く違い、肌を重ねるという事が、愛を確かめ合う素晴らしい行為なのだと初めて感じた。
腕の中に抱くマーガレットを、離したくないと心から思い、この時が永遠に止まればいいと何度も願った。
「愛している」
告げるたびに、嬉しそうに笑みを浮かべるマーガレットが愛しくて仕方なかった。
アレクサンドルが彼女を側室へと迎えて二か月後。
マーガレットの体に新しい命が宿る。
◇
「平民の側室が…………子を成した⁈ 」
マーガレットの妊娠を知った王妃は、驚愕し激怒した。
何故なら、マーガレットの下へ通う王には媚薬は与えられていなかったのだ。
リフテス王の体は、媚薬無しには何一つ反応しないはず。
それに……。
今まで貴族の美しい女しか知らなかった王だ。
初めて会った平民の女が、物珍しく感じたのだろうどうせすぐに飽きる、と側室に迎えることを許した。
城にも住まわせず、あんな古い屋敷に置いている女。
どんなに平民の女の下へ通おうとも、子など出来るはずがないと王妃は高をくくっていた。
それなのに、平民の女は王の子を身籠った。
その上、今までであれば、子が出来た側室の下へは行くことをせず、生まれた子供にすら興味を示さなかった王が、平民の側室の下へは懐妊後も何度も通っている。
王が自ら会いに行き、子を授けた女。
平民の分際で、王の子を身籠った女。
王妃ジョゼフィーヌはそれが許せなかった。
ずっと城の中に閉じ込めて置くはずだった、麗しいリフテス王。
しかし、だんだんと弱り生気を失ってきていた。
ジョゼフィーヌが気に入っている、あの純美な美しさが損なわれていたのだ。
その為、あの方から助言を頂き、少しの間自由を与えることにした。
それが間違っていたのだろうか?
生気を取り戻した王は私に意見してきた。
あんなに従順で、人形の様だった美しいリフテス王が。
あれは自分が男にし、育て上げたのだ。
あれは、私の物、誰にも渡さない。
……もう、しばらくは外に出さずともいいだろう。
やはりアレは、城の中に入れておかなければ。
何も出来ない、何も知らない麗しい私のリフテス王。
…………私の美しい人形。
◇
マーガレットの妊娠が分かってしばらくした頃それは起きた。
悪戯程度の事からはじまり、次第に悪質さが増していった。
屋敷の周りに汚泥や動物の亡骸が置かれたり、配達された食物や飲み物に毒物が混入されるようになる。
マーガレットは、この事をアレクサンドルに伝えないで欲しいとメリーナに頼んでいた。
彼に自分の事で心配をかけたくない、そう話していた。
屋敷に起こる全ての悪意ある事は、王妃の仕業であると分かっていたからだ。
マーガレットとメリーナが屋敷の外に出ていた時だった。
突然、見知らぬ男達が物陰から襲って来た。
その時は、偶々近くにいた町の人達に助けられ、事なきを得た。
「マーガレット、さすがにコレは黙ってはおけないわ。王様に伝えます」
メリーナは青い顔をしたマーガレットに告げ、アレクサンドルに全てを話すことにした。
今までの様に嫌がらせ程度であれば、メリーナが何とか対処出来たが、直接手を出されてしまえば、もうメリーナ一人で対処して行く事は難しい。
本当なら魔法を使えば簡単な事。
しかし、女性しか住んでいない屋敷に入った刺客が、何者かにやられれば怪しまれる。
魔法を使える事が誰かに知れる、その事態は避けなければならなかった。
◇
メリーナはその後、訪ねて来たアレクサンドルに男達の事を話し、最近周りでおかしな事が起きていると告げた。
アレクサンドルには、残念ながら王妃の行いを止める術はない。
動かせる力もほとんど無い。
彼の味方となってくれているのは、臣下ではブノア大臣と、もう一人、それから侍従長、王の側にいる騎士達。
残る臣下達や側室達は、全て王妃の下にいる。
それでも、アレクサンドルは出来る限りの事をしてマーガレットを守ろうとした。
屋敷の周りに、味方の騎士達に平民のふりをして駐在して貰い、自分は彼女を守る為に屋敷へ行くことを控えた。
常に城にいる事で、王妃の目を自分に向け、マーガレットから逸らそうと考えた。
だが、自分で決めた事とはいえ、会えないことは辛く、せめてもの思いで自室の机の引き出しの奥にマーガレットの絵姿を忍ばせていた。
そんなアレクサンドルの心を知り、ブノア大臣や騎士達は、王妃に知られぬようマーガレットの様子を話して聞かせた。
ーーーーだが王妃がそれに気づかぬはずがない。
アレクサンドルが屋敷を訪れなくなっても、マーガレットに対する魔の手は止まらない。
王妃にとって、マーガレットはもはや側室の一人ではなかった。
自分からリフテス王を奪う悪女だ。
あの麗しい人形を渡してなるものか……。
絶対に渡さない。
王妃のリフテス王への執着は、執念へと変わっていたのだ。
◇
当時メリーナは、マーガレットを連れマフガルド王国へ戻ろうかと考えた事があった。
二人をずっと近くで見守って来たメリーナには、マーガレットとアレクサンドルの運命の絆が見えいた。
いま二人を離してしまえば、その絆が切れてしまうことも分かってしまったのだ。
マーガレットのお腹には、シリルの宿命の子が宿っている。
絆が切れれば、シリルとの宿命の子は消えてしまう。
シリルに必ず守ると約束したのだ。
それに、メリーナは二人の事が大好きだったから、どうしても出来なかった。
◇
アレクサンドルが屋敷を訪れなくなって、半年が経った。
彼が城から出なくなった事が効を奏したのか、マーガレットの周りで起きていた不穏な動きは、収まりを見せていた。
どう言う訳かこの頃、王妃がアレクサンドルの外出を許すようになっていたのだ。
平民の側室の下へなら行っても構わないと、ただし、夜は必ず城へ戻っている事が条件だった。
それはアレクサンドルにとっては、願ってもない事。
会える時間には限りがあるが、マーガレットと過ごす時は、これまでになく幸せに満ちていた。
マーガレットと紡いでいく日々は、アレクサンドルに生きる希望を与えていく。
自ら愛する者に触れ、初めて唇を重ねた日、この行為がこんなに素晴らしいものだったことを知った。
愛しさが募り、彼女の肌に手を伸ばした。
それは、媚薬なしでは嫌悪しか感じた事がなかった行為。
しかし、マーガレットとの触れ合いは、今まで感じていたものとは全く違い、肌を重ねるという事が、愛を確かめ合う素晴らしい行為なのだと初めて感じた。
腕の中に抱くマーガレットを、離したくないと心から思い、この時が永遠に止まればいいと何度も願った。
「愛している」
告げるたびに、嬉しそうに笑みを浮かべるマーガレットが愛しくて仕方なかった。
アレクサンドルが彼女を側室へと迎えて二か月後。
マーガレットの体に新しい命が宿る。
◇
「平民の側室が…………子を成した⁈ 」
マーガレットの妊娠を知った王妃は、驚愕し激怒した。
何故なら、マーガレットの下へ通う王には媚薬は与えられていなかったのだ。
リフテス王の体は、媚薬無しには何一つ反応しないはず。
それに……。
今まで貴族の美しい女しか知らなかった王だ。
初めて会った平民の女が、物珍しく感じたのだろうどうせすぐに飽きる、と側室に迎えることを許した。
城にも住まわせず、あんな古い屋敷に置いている女。
どんなに平民の女の下へ通おうとも、子など出来るはずがないと王妃は高をくくっていた。
それなのに、平民の女は王の子を身籠った。
その上、今までであれば、子が出来た側室の下へは行くことをせず、生まれた子供にすら興味を示さなかった王が、平民の側室の下へは懐妊後も何度も通っている。
王が自ら会いに行き、子を授けた女。
平民の分際で、王の子を身籠った女。
王妃ジョゼフィーヌはそれが許せなかった。
ずっと城の中に閉じ込めて置くはずだった、麗しいリフテス王。
しかし、だんだんと弱り生気を失ってきていた。
ジョゼフィーヌが気に入っている、あの純美な美しさが損なわれていたのだ。
その為、あの方から助言を頂き、少しの間自由を与えることにした。
それが間違っていたのだろうか?
生気を取り戻した王は私に意見してきた。
あんなに従順で、人形の様だった美しいリフテス王が。
あれは自分が男にし、育て上げたのだ。
あれは、私の物、誰にも渡さない。
……もう、しばらくは外に出さずともいいだろう。
やはりアレは、城の中に入れておかなければ。
何も出来ない、何も知らない麗しい私のリフテス王。
…………私の美しい人形。
◇
マーガレットの妊娠が分かってしばらくした頃それは起きた。
悪戯程度の事からはじまり、次第に悪質さが増していった。
屋敷の周りに汚泥や動物の亡骸が置かれたり、配達された食物や飲み物に毒物が混入されるようになる。
マーガレットは、この事をアレクサンドルに伝えないで欲しいとメリーナに頼んでいた。
彼に自分の事で心配をかけたくない、そう話していた。
屋敷に起こる全ての悪意ある事は、王妃の仕業であると分かっていたからだ。
マーガレットとメリーナが屋敷の外に出ていた時だった。
突然、見知らぬ男達が物陰から襲って来た。
その時は、偶々近くにいた町の人達に助けられ、事なきを得た。
「マーガレット、さすがにコレは黙ってはおけないわ。王様に伝えます」
メリーナは青い顔をしたマーガレットに告げ、アレクサンドルに全てを話すことにした。
今までの様に嫌がらせ程度であれば、メリーナが何とか対処出来たが、直接手を出されてしまえば、もうメリーナ一人で対処して行く事は難しい。
本当なら魔法を使えば簡単な事。
しかし、女性しか住んでいない屋敷に入った刺客が、何者かにやられれば怪しまれる。
魔法を使える事が誰かに知れる、その事態は避けなければならなかった。
◇
メリーナはその後、訪ねて来たアレクサンドルに男達の事を話し、最近周りでおかしな事が起きていると告げた。
アレクサンドルには、残念ながら王妃の行いを止める術はない。
動かせる力もほとんど無い。
彼の味方となってくれているのは、臣下ではブノア大臣と、もう一人、それから侍従長、王の側にいる騎士達。
残る臣下達や側室達は、全て王妃の下にいる。
それでも、アレクサンドルは出来る限りの事をしてマーガレットを守ろうとした。
屋敷の周りに、味方の騎士達に平民のふりをして駐在して貰い、自分は彼女を守る為に屋敷へ行くことを控えた。
常に城にいる事で、王妃の目を自分に向け、マーガレットから逸らそうと考えた。
だが、自分で決めた事とはいえ、会えないことは辛く、せめてもの思いで自室の机の引き出しの奥にマーガレットの絵姿を忍ばせていた。
そんなアレクサンドルの心を知り、ブノア大臣や騎士達は、王妃に知られぬようマーガレットの様子を話して聞かせた。
ーーーーだが王妃がそれに気づかぬはずがない。
アレクサンドルが屋敷を訪れなくなっても、マーガレットに対する魔の手は止まらない。
王妃にとって、マーガレットはもはや側室の一人ではなかった。
自分からリフテス王を奪う悪女だ。
あの麗しい人形を渡してなるものか……。
絶対に渡さない。
王妃のリフテス王への執着は、執念へと変わっていたのだ。
◇
当時メリーナは、マーガレットを連れマフガルド王国へ戻ろうかと考えた事があった。
二人をずっと近くで見守って来たメリーナには、マーガレットとアレクサンドルの運命の絆が見えいた。
いま二人を離してしまえば、その絆が切れてしまうことも分かってしまったのだ。
マーガレットのお腹には、シリルの宿命の子が宿っている。
絆が切れれば、シリルとの宿命の子は消えてしまう。
シリルに必ず守ると約束したのだ。
それに、メリーナは二人の事が大好きだったから、どうしても出来なかった。
◇
アレクサンドルが屋敷を訪れなくなって、半年が経った。
彼が城から出なくなった事が効を奏したのか、マーガレットの周りで起きていた不穏な動きは、収まりを見せていた。
1
お気に入りに追加
215
あなたにおすすめの小説
いくら政略結婚だからって、そこまで嫌わなくてもいいんじゃないですか?いい加減、腹が立ってきたんですけど!
夢呼
恋愛
伯爵令嬢のローゼは大好きな婚約者アーサー・レイモンド侯爵令息との結婚式を今か今かと待ち望んでいた。
しかし、結婚式の僅か10日前、その大好きなアーサーから「私から愛されたいという思いがあったら捨ててくれ。それに応えることは出来ない」と告げられる。
ローゼはその言葉にショックを受け、熱を出し寝込んでしまう。数日間うなされ続け、やっと目を覚ました。前世の記憶と共に・・・。
愛されることは無いと分かっていても、覆すことが出来ないのが貴族間の政略結婚。日本で生きたアラサー女子の「私」が八割心を占めているローゼが、この政略結婚に臨むことになる。
いくら政略結婚といえども、親に孫を見せてあげて親孝行をしたいという願いを持つローゼは、何とかアーサーに振り向いてもらおうと頑張るが、鉄壁のアーサーには敵わず。それどころか益々嫌われる始末。
一体私の何が気に入らないんだか。そこまで嫌わなくてもいいんじゃないんですかね!いい加減腹立つわっ!
世界観はゆるいです!
カクヨム様にも投稿しております。
※10万文字を超えたので長編に変更しました。
この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが
あなたには彼女がお似合いです
風見ゆうみ
恋愛
私の婚約者には大事な妹がいた。
妹に呼び出されたからと言って、パーティー会場やデート先で私を置き去りにしていく、そんなあなたでも好きだったんです。
でも、あなたと妹は血が繋がっておらず、昔は恋仲だったということを知ってしまった今では、私のあなたへの思いは邪魔なものでしかないのだと知りました。
ずっとあなたが好きでした。
あなたの妻になれると思うだけで幸せでした。
でも、あなたには他に好きな人がいたんですね。
公爵令嬢のわたしに、伯爵令息であるあなたから婚約破棄はできないのでしょう?
あなたのために婚約を破棄します。
だから、あなたは彼女とどうか幸せになってください。
たとえわたしが平民になろうとも婚約破棄をすれば、幸せになれると思っていたのに――
※作者独特の異世界の世界観であり、設定はゆるゆるで、ご都合主義です。
※誤字脱字など見直して気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。教えていただけますと有り難いです。
【完結】愛を知らない伯爵令嬢は執着激重王太子の愛を一身に受ける。
扇 レンナ
恋愛
スパダリ系執着王太子×愛を知らない純情令嬢――婚約破棄から始まる、極上の恋
伯爵令嬢テレジアは小さな頃から両親に《次期公爵閣下の婚約者》という価値しか見出してもらえなかった。
それでもその利用価値に縋っていたテレジアだが、努力も虚しく婚約破棄を突きつけられる。
途方に暮れるテレジアを助けたのは、留学中だったはずの王太子ラインヴァルト。彼は何故かテレジアに「好きだ」と告げて、熱烈に愛してくれる。
その真意が、テレジアにはわからなくて……。
*hotランキング 最高68位ありがとうございます♡
▼掲載先→ベリーズカフェ、エブリスタ、アルファポリス
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
女嫌いな辺境伯と歴史狂いの子爵令嬢の、どうしようもなくマイペースな婚姻
野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
恋愛
「友好と借金の形に、辺境伯家に嫁いでくれ」
行き遅れの私・マリーリーフに、突然婚約話が持ち上がった。
相手は女嫌いに社交嫌いな若き辺境伯。子爵令嬢の私にはまたとない好条件ではあるけど、相手の人柄が心配……と普通は思うでしょう。
でも私はそんな事より、嫁げば他に時間を取られて大好きな歴史研究に没頭できない事の方が問題!
それでも互いの領地の友好と借金の形として仕方がなく嫁いだ先で、「家の事には何も手出し・口出しするな」と言われて……。
え、「何もしなくていい」?!
じゃあ私、今まで通り、歴史研究してていいの?!
こうして始まる結婚(ただの同居)生活が、普通なわけはなく……?
どうやらプライベートな時間はずっと剣を振っていたい旦那様と、ずっと歴史に浸っていたい私。
二人が歩み寄る日は、来るのか。
得意分野が文と武でかけ離れている二人だけど、マイペース過ぎるところは、どこか似ている?
意外とお似合いなのかもしれません。笑
「君以外を愛する気は無い」と婚約者様が溺愛し始めたので、異世界から聖女が来ても大丈夫なようです。
海空里和
恋愛
婚約者のアシュリー第二王子にべた惚れなステラは、彼のために努力を重ね、剣も魔法もトップクラス。彼にも隠すことなく、重い恋心をぶつけてきた。
アシュリーも、そんなステラの愛を静かに受け止めていた。
しかし、この国は20年に一度聖女を召喚し、皇太子と結婚をする。アシュリーは、この国の皇太子。
「たとえ聖女様にだって、アシュリー様は渡さない!」
聖女と勝負してでも彼を渡さないと思う一方、ステラはアシュリーに切り捨てられる覚悟をしていた。そんなステラに、彼が告げたのは意外な言葉で………。
※本編は全7話で完結します。
※こんなお話が書いてみたくて、勢いで書き上げたので、設定が緩めです。
【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。
五月ふう
恋愛
リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。
「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」
今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。
「そう……。」
マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。
明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。
リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。
「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」
ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。
「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」
「ちっ……」
ポールは顔をしかめて舌打ちをした。
「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」
ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。
だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。
二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。
「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる