6 / 68
本当にかっこよかった
しおりを挟む
バルコニーへと出たエスターは、庭を眺めていたが忽然と消えた。
王女達には消えたように見えただろう、だがオスカーには、エスターが何かを見つけバルコニーを蹴り上げて、ある所へ一目散に飛んでいくのが見えていた。
エスターの側に行こうとバルコニーへ向かったマリアナ王女は目を白黒させている。まぁ、突然エスターが目の前から消えたのだからそうなるだろう。
アイツはどこへ行ったんだ? そう思いオスカーもバルコニーへ出て見ると、弟は物干場でメイドに声を掛けている。
…… 茶色の髪だ……
まさか、傷を負ったあのメイドなのか?
しかし……凄い跳躍だな……
俺でもあの場所まで一瞬で飛ぶのは難しいな、と考えていると、横でマリアナ王女がハンカチを口に咥えワナワナと震えている。
…… この王女、あれが見えているのか?
まさか⁈
「あのキラキラしているのはエスター様ですわっ‼︎ なぜあんな下々の者の所へいらっしゃっるのっ‼︎ 」
「下々って……」
さすがにハッキリ見えている訳ではないようだ。
「すぐ呼び戻さなければ! エスター様が汚れてしまうわっ!」
「汚れる……?」
マリアナ王女は近くに居た近衛兵にエスターを連れ戻す様に指示を出すと、自らも迎えに行くとサロンを出て行ってしまった。
「弟も厄介な相手に好かれたものだ……」
いや、兄弟揃って……だな、とオスカーは晴れた空を見上げて思うのだった。
ーーーーーー*
木陰に座り、メイド帽を外した。爽やかな風が髪の間をすり抜けていく。
……ふう、とひとつため息を吐いた。
マーサはよく見ているなぁ……バレない様に普段通りにしていたつもりだったけど、彼女にはお見通しだったみたい。
背中の痛みはそこまでないから誤魔化せるけれど顔色までは無理だよね。
運悪く魔獣にやられてしまったが、死なずにすんでいる、もしかして私って運がいいのかしら?
それに……助けてくれたのって皆が騒いでいたレイナルド公爵様だったのよね……。
( どちらかは分からないけど……)
銀色の髪に青い目だったもの。
みんながあれだけ騒ぐのも分かる……
本当にカッコよかった。
まだ昨日の事なのだが、ずいぶん前の事の様に思いながら庭園の方を見た。
( あの辺で襲われたんだよね、一階のサロンの……あ、サロンって……もしかして、メイド長が言っていたのは、二階のサロンだったのか)
城の庭園に面した一階のサロンの真上には、円形のバルコニーのある二階のサロンがある。
( なんだ、だったら道からは見えないじゃない )
さっきぴょんぴょん飛び跳ねて見ようとしていたリリアを思い出したら何だかおかしくなって、ふふっと笑った。
その時だ
「楽しそうだね」
その人は突然目の前に降りて来た。
陽の光を受けて煌めく銀色の髪が風に靡き、青の瞳が真っ直ぐに私を捉えている。
( わぁ……なんてキレイな人……)
私は一瞬見惚れてしまった。
……このキレイな人は、私を助けてくれようと手を伸ばしてくれたあの人に似てる⁈ 本人?
……と、いうことは……!
私は慌てて立ち上がり頭を下げる。
「も、申し訳ございません」
「えっ、どうして?僕が急に来たんだから……頭を上げてよ」
「いえ、それは出来ません」
「なぜ?」
「私は下働きのメイドです。本来ならこうして公爵様にお目に掛かる事も、お声がけする事も許されておりません」
「……そんな事、僕がいいって言ってるんだよ」
レイナルド公爵様は私の両腕を持ち、半ば強引に頭を上げさせた。
「ちゃんと顔を見せて欲しいんだ……」
掴まれた腕からドクンッと衝撃が走る。
「え……」
二人の目と目が合った。
なぜか胸の鼓動が高まり体が熱くなる。
私達はそのまま、言葉を交わすことなくただ見つめ合った。
それはどれくらいの時間だっただろう、レイナルド公爵様の青い瞳が次第に金色に変わりはじめて……。
「エスターさーまー‼︎‼︎ 」
響き渡る大きな声で、私達はハッと我に返った。
「エスター様…… 」
「そう、僕はエスター・レイナルドだ、君は?」
彼の瞳は完全に金色に変わり、ずっと私を見つめて離さない。
「私は……「エスター様‼︎ すぐお戻りになってーっ‼︎ 」
庭園から王女様の大きな声がする。
その時ちょうど、近衛兵が物干場までエスター様を迎えに来た。
「エスター様、どうかお戻り下さい。マリアナ王女様がお待ちでございます」
ーーチッ、エスター様は舌打ち( ⁈ )すると早口で話した。
「名前、教えて」
「は、はい、シャーロット・ディーバンです」
「わかった」
そう言うと私の頬にキス( ‼︎ ) を残して、近衛兵の下へ向かった。
私はそっと頬を押さえたまま、リリア達が戻るまで呆然とその場で立ち尽くしていた。
( キス……されちゃった……)
王女達には消えたように見えただろう、だがオスカーには、エスターが何かを見つけバルコニーを蹴り上げて、ある所へ一目散に飛んでいくのが見えていた。
エスターの側に行こうとバルコニーへ向かったマリアナ王女は目を白黒させている。まぁ、突然エスターが目の前から消えたのだからそうなるだろう。
アイツはどこへ行ったんだ? そう思いオスカーもバルコニーへ出て見ると、弟は物干場でメイドに声を掛けている。
…… 茶色の髪だ……
まさか、傷を負ったあのメイドなのか?
しかし……凄い跳躍だな……
俺でもあの場所まで一瞬で飛ぶのは難しいな、と考えていると、横でマリアナ王女がハンカチを口に咥えワナワナと震えている。
…… この王女、あれが見えているのか?
まさか⁈
「あのキラキラしているのはエスター様ですわっ‼︎ なぜあんな下々の者の所へいらっしゃっるのっ‼︎ 」
「下々って……」
さすがにハッキリ見えている訳ではないようだ。
「すぐ呼び戻さなければ! エスター様が汚れてしまうわっ!」
「汚れる……?」
マリアナ王女は近くに居た近衛兵にエスターを連れ戻す様に指示を出すと、自らも迎えに行くとサロンを出て行ってしまった。
「弟も厄介な相手に好かれたものだ……」
いや、兄弟揃って……だな、とオスカーは晴れた空を見上げて思うのだった。
ーーーーーー*
木陰に座り、メイド帽を外した。爽やかな風が髪の間をすり抜けていく。
……ふう、とひとつため息を吐いた。
マーサはよく見ているなぁ……バレない様に普段通りにしていたつもりだったけど、彼女にはお見通しだったみたい。
背中の痛みはそこまでないから誤魔化せるけれど顔色までは無理だよね。
運悪く魔獣にやられてしまったが、死なずにすんでいる、もしかして私って運がいいのかしら?
それに……助けてくれたのって皆が騒いでいたレイナルド公爵様だったのよね……。
( どちらかは分からないけど……)
銀色の髪に青い目だったもの。
みんながあれだけ騒ぐのも分かる……
本当にカッコよかった。
まだ昨日の事なのだが、ずいぶん前の事の様に思いながら庭園の方を見た。
( あの辺で襲われたんだよね、一階のサロンの……あ、サロンって……もしかして、メイド長が言っていたのは、二階のサロンだったのか)
城の庭園に面した一階のサロンの真上には、円形のバルコニーのある二階のサロンがある。
( なんだ、だったら道からは見えないじゃない )
さっきぴょんぴょん飛び跳ねて見ようとしていたリリアを思い出したら何だかおかしくなって、ふふっと笑った。
その時だ
「楽しそうだね」
その人は突然目の前に降りて来た。
陽の光を受けて煌めく銀色の髪が風に靡き、青の瞳が真っ直ぐに私を捉えている。
( わぁ……なんてキレイな人……)
私は一瞬見惚れてしまった。
……このキレイな人は、私を助けてくれようと手を伸ばしてくれたあの人に似てる⁈ 本人?
……と、いうことは……!
私は慌てて立ち上がり頭を下げる。
「も、申し訳ございません」
「えっ、どうして?僕が急に来たんだから……頭を上げてよ」
「いえ、それは出来ません」
「なぜ?」
「私は下働きのメイドです。本来ならこうして公爵様にお目に掛かる事も、お声がけする事も許されておりません」
「……そんな事、僕がいいって言ってるんだよ」
レイナルド公爵様は私の両腕を持ち、半ば強引に頭を上げさせた。
「ちゃんと顔を見せて欲しいんだ……」
掴まれた腕からドクンッと衝撃が走る。
「え……」
二人の目と目が合った。
なぜか胸の鼓動が高まり体が熱くなる。
私達はそのまま、言葉を交わすことなくただ見つめ合った。
それはどれくらいの時間だっただろう、レイナルド公爵様の青い瞳が次第に金色に変わりはじめて……。
「エスターさーまー‼︎‼︎ 」
響き渡る大きな声で、私達はハッと我に返った。
「エスター様…… 」
「そう、僕はエスター・レイナルドだ、君は?」
彼の瞳は完全に金色に変わり、ずっと私を見つめて離さない。
「私は……「エスター様‼︎ すぐお戻りになってーっ‼︎ 」
庭園から王女様の大きな声がする。
その時ちょうど、近衛兵が物干場までエスター様を迎えに来た。
「エスター様、どうかお戻り下さい。マリアナ王女様がお待ちでございます」
ーーチッ、エスター様は舌打ち( ⁈ )すると早口で話した。
「名前、教えて」
「は、はい、シャーロット・ディーバンです」
「わかった」
そう言うと私の頬にキス( ‼︎ ) を残して、近衛兵の下へ向かった。
私はそっと頬を押さえたまま、リリア達が戻るまで呆然とその場で立ち尽くしていた。
( キス……されちゃった……)
20
お気に入りに追加
352
あなたにおすすめの小説
【完結】元お飾り聖女はなぜか腹黒宰相様に溺愛されています!?
雨宮羽那
恋愛
元社畜聖女×笑顔の腹黒宰相のラブストーリー。
◇◇◇◇
名も無きお飾り聖女だった私は、過労で倒れたその日、思い出した。
自分が前世、疲れきった新卒社会人・花菱桔梗(はなびし ききょう)という日本人女性だったことに。
運良く婚約者の王子から婚約破棄を告げられたので、前世の教訓を活かし私は逃げることに決めました!
なのに、宰相閣下から求婚されて!? 何故か甘やかされているんですけど、何か裏があったりしますか!?
◇◇◇◇
お気に入り登録、エールありがとうございます♡
※ざまぁはゆっくりじわじわと進行します。
※「小説家になろう」「エブリスタ」様にも掲載しております(アルファポリス先行)。
※この作品はフィクションです。特定の政治思想を肯定または否定するものではありません(_ _*))
疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!
ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。
退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた!
私を陥れようとする兄から逃れ、
不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。
逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋?
異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。
この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?
ただ貴方の傍にいたい〜醜いイケメン騎士と異世界の稀人
花野はる
恋愛
日本で暮らす相川花純は、成人の思い出として、振袖姿を残そうと写真館へやって来た。
そこで着飾り、いざ撮影室へ足を踏み入れたら異世界へ転移した。
森の中で困っていると、仮面の騎士が助けてくれた。その騎士は騎士団の団長様で、すごく素敵なのに醜くて仮面を被っていると言う。
孤独な騎士と異世界でひとりぼっちになった花純の一途な恋愛ストーリー。
初投稿です。よろしくお願いします。
異世界で王城生活~陛下の隣で~
遥
恋愛
女子大生の友梨香はキャンピングカーで一人旅の途中にトラックと衝突して、谷底へ転落し死亡した。けれど、気が付けば異世界に車ごと飛ばされ王城に落ちていた。神様の計らいでキャンピングカーの内部は電気も食料も永久に賄えるられる事になった。
グランティア王国の人達は異世界人の友梨香を客人として迎え入れてくれて。なぜか保護者となった国陛下シリウスはやたらと構ってくる。一度死んだ命だもん、これからは楽しく生きさせて頂きます!
※キャンピングカー、魔石効果などなどご都合主義です。
※のんびり更新。他サイトにも投稿しております。
告白さえできずに失恋したので、酒場でやけ酒しています。目が覚めたら、なぜか夜会の前夜に戻っていました。
石河 翠
恋愛
ほんのり想いを寄せていたイケメン文官に、告白する間もなく失恋した主人公。その夜、彼女は親友の魔導士にくだを巻きながら、酒場でやけ酒をしていた。見事に酔いつぶれる彼女。
いつもならば二日酔いとともに目が覚めるはずが、不思議なほど爽やかな気持ちで起き上がる。なんと彼女は、失恋する前の日の晩に戻ってきていたのだ。
前回の失敗をすべて回避すれば、好きなひとと付き合うこともできるはず。そう考えて動き始める彼女だったが……。
ちょっとがさつだけれどまっすぐで優しいヒロインと、そんな彼女のことを一途に思っていた魔導士の恋物語。ハッピーエンドです。
この作品は、小説家になろう及びエブリスタにも投稿しております。
【完結済】私、地味モブなので。~転生したらなぜか最推し攻略対象の婚約者になってしまいました~
降魔 鬼灯
恋愛
マーガレット・モルガンは、ただの地味なモブだ。前世の最推しであるシルビア様の婚約者を選ぶパーティーに参加してシルビア様に会った事で前世の記憶を思い出す。 前世、人生の全てを捧げた最推し様は尊いけれど、現実に存在する最推しは…。 ヒロインちゃん登場まで三年。早く私を救ってください。
前世では美人が原因で傾国の悪役令嬢と断罪された私、今世では喪女を目指します!
鳥柄ささみ
恋愛
美人になんて、生まれたくなかった……!
前世で絶世の美女として生まれ、その見た目で国王に好かれてしまったのが運の尽き。
正妃に嫌われ、私は国を傾けた悪女とレッテルを貼られて処刑されてしまった。
そして、気づけば違う世界に転生!
けれど、なんとこの世界でも私は絶世の美女として生まれてしまったのだ!
私は前世の経験を生かし、今世こそは目立たず、人目にもつかない喪女になろうと引きこもり生活をして平穏な人生を手に入れようと試みていたのだが、なぜか世界有数の魔法学校で陽キャがいっぱいいるはずのNMA(ノーマ)から招待状が来て……?
前世の教訓から喪女生活を目指していたはずの主人公クラリスが、トラウマを抱えながらも奮闘し、四苦八苦しながら魔法学園で成長する異世界恋愛ファンタジー!
※第15回恋愛大賞にエントリーしてます!
開催中はポチッと投票してもらえると嬉しいです!
よろしくお願いします!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる