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神様を数える。
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復活した三兄様が『ウチの姫に粗末なもん見せてんじゃねぇ!』と叫んでヴィラード国王を伸してから三日、アイラン砦のほど近くにヴィラード国は陣を張った。もう、侵攻の意思はない。陣と言うより、野営ってとこかな。
天幕も食料もウチからの差し入れである。なにしろ彼らはほとんど着の身着のままだったので。
戦に行くのに、武器以外なにも持たないってどう言うことよ。
ヴィラード国王は自分がなぜ半裸で戦さ場にいたのか理解していなかった。ここ数年の記憶は飛び飛びで、直近の一年ほどはまったく覚えていないらしい。伸びきった自分の髭に、ショックを受けていた。
兵士たちからも無作為に二十名ほど引っ張ってきて話を聞くと、だいたい似たり寄ったりだった。徴兵の通知を受け取って王都にたどり着いたところまでは覚えているのに、自分が白鷹騎士団と戦った記憶は一切ない。
どんだけ濃い瘴気にやられてたんだろ。
ザッカーリャがカーラちゃんになって瘴気を受け入れなくなったから、余剰分が彼らに貯まったのかもしれない。
私たちは一度城砦に戻って、休養をたっぷりとった。大兄様がヴィラード国王と会談するとき、一緒に行くことになっている。ヴィラード国王の体裁が整わないので、なかなか会談の日程が決まらないけど。
文官も武官も腹心がいないらしい。⋯⋯記憶の彼方にはいるらしいけど、彼らの処遇をどうしたのかまで記憶がない。罷免したのか辞職されたのか、すでに生命がないのか、それすらも不明という。
それ、復興できるの?
難民の皆さんにも炊き出しが行き届いて、しばらくは落ち着いているだろう。
アル従兄様が大兄様に届く報告を、世間話程度に話してくれるので、だいたい、ヴィラード国側の現在の状況はこんな感じだ。
白鷹騎士団の皆さんは、私に対する態度に変化はない。せいぜい『副団長の言ってること、本当だったんだぁ』くらいなものだ。そのかわり難民からは『聖女様に会いたい』って声が多く上がっているらしい。⋯⋯一応、まだ敵国なんだけどな。
それよりも、新たな一柱を迎えて、私たちは大騒ぎだ。
いゃ~、可愛い!
お名前はサープ君。なし崩しで巫女になったシーリアが名付けた。本性から離れすぎた名前だと、まだ幼いのでいろいろ保てなくなるから、サーペントからとったって言ってた。
⋯⋯スネークのスネちゃまとたいして変わらないのに、可愛いのはなぜだ。スネちゃまだって可愛いのに。国民的アニメに出てくる、虎の威を借る狐っぽいあの男の子に似てるのがよくないのかしら?
城砦の女性陣はサープ君に夢中になって、母様はメイドさんたちと一緒に兄様たちの子供の頃の衣服を引っ張り出している。寄ってたかってチヤホヤされて、テレテレとはにかむのが、可愛いったらないわよ。
カーラちゃんはちょっとお姉ちゃんぶって側にいて、その横にカーラちゃんの神子のミシェイル様とサープ君の巫女のシーリアがニコニコして見守っている。
二柱とも幼い神様なので、守護龍さんがそばにいても問題ないらしい。まだ圧倒的な力の差があるから、神の理に接触しそうなときは守護龍さんがなんとかするんだって。
そんなわけで守護龍さんは、嬉々としてサープ君の着せ替えに参加しているユンを、すぐ近くで見つめている。
タタンは三兄様とアリアンさんにくっついて、演習場に出かけて行った。これから聖女の一番近くで剣を持つことになるから、訓練は欠かさずにしたいんだって。⋯⋯性格的には剣士向きじゃないんだけど、この半月で実践を積んでメキメキ腕を上げているらしくて、三兄様にすっかり気に入られてしまった。
三兄様、帝都でタタンが初めてウチに来たとき、激しくガン飛ばしたの忘れてるでしょ⁈
ザシャル先生は休む間もなく帝都に向かった。一番早く移動できるからだって言ってた。黄金の三枚羽は移動に関してもなにか隠し玉があるのかもしれない。
私たちが帝都を出発したときとは、状況がまるで違う。二度と戻らない覚悟のミシェイル様は、大地母神の卵、女神カーラを連れての凱旋で、お人好しで巻き込まれのシーリアは、実りと金運の神サープの巫女になってしまった。
ユンと共にいるバロライの天龍フェイと併せて、三柱の神がひとところに集まっている異常事態。しかもカーラちゃんはアエラ国、サープ君はヴィラード国から連れてきちゃったんだよね。
そして、聖女(笑)の私。
《漢字》を駆使して、うっかり魔女っ子爆誕しちゃったけど、守護龍さんが薄く笑って言ったのよ。
『そなたは、我をも滅する力を持っている』
⋯⋯聖女様、世界最強?
神様が三柱いて、その神様を滅することのできる私がいる。
いいのか、ローゼウス辺境伯爵領⁈
天幕も食料もウチからの差し入れである。なにしろ彼らはほとんど着の身着のままだったので。
戦に行くのに、武器以外なにも持たないってどう言うことよ。
ヴィラード国王は自分がなぜ半裸で戦さ場にいたのか理解していなかった。ここ数年の記憶は飛び飛びで、直近の一年ほどはまったく覚えていないらしい。伸びきった自分の髭に、ショックを受けていた。
兵士たちからも無作為に二十名ほど引っ張ってきて話を聞くと、だいたい似たり寄ったりだった。徴兵の通知を受け取って王都にたどり着いたところまでは覚えているのに、自分が白鷹騎士団と戦った記憶は一切ない。
どんだけ濃い瘴気にやられてたんだろ。
ザッカーリャがカーラちゃんになって瘴気を受け入れなくなったから、余剰分が彼らに貯まったのかもしれない。
私たちは一度城砦に戻って、休養をたっぷりとった。大兄様がヴィラード国王と会談するとき、一緒に行くことになっている。ヴィラード国王の体裁が整わないので、なかなか会談の日程が決まらないけど。
文官も武官も腹心がいないらしい。⋯⋯記憶の彼方にはいるらしいけど、彼らの処遇をどうしたのかまで記憶がない。罷免したのか辞職されたのか、すでに生命がないのか、それすらも不明という。
それ、復興できるの?
難民の皆さんにも炊き出しが行き届いて、しばらくは落ち着いているだろう。
アル従兄様が大兄様に届く報告を、世間話程度に話してくれるので、だいたい、ヴィラード国側の現在の状況はこんな感じだ。
白鷹騎士団の皆さんは、私に対する態度に変化はない。せいぜい『副団長の言ってること、本当だったんだぁ』くらいなものだ。そのかわり難民からは『聖女様に会いたい』って声が多く上がっているらしい。⋯⋯一応、まだ敵国なんだけどな。
それよりも、新たな一柱を迎えて、私たちは大騒ぎだ。
いゃ~、可愛い!
お名前はサープ君。なし崩しで巫女になったシーリアが名付けた。本性から離れすぎた名前だと、まだ幼いのでいろいろ保てなくなるから、サーペントからとったって言ってた。
⋯⋯スネークのスネちゃまとたいして変わらないのに、可愛いのはなぜだ。スネちゃまだって可愛いのに。国民的アニメに出てくる、虎の威を借る狐っぽいあの男の子に似てるのがよくないのかしら?
城砦の女性陣はサープ君に夢中になって、母様はメイドさんたちと一緒に兄様たちの子供の頃の衣服を引っ張り出している。寄ってたかってチヤホヤされて、テレテレとはにかむのが、可愛いったらないわよ。
カーラちゃんはちょっとお姉ちゃんぶって側にいて、その横にカーラちゃんの神子のミシェイル様とサープ君の巫女のシーリアがニコニコして見守っている。
二柱とも幼い神様なので、守護龍さんがそばにいても問題ないらしい。まだ圧倒的な力の差があるから、神の理に接触しそうなときは守護龍さんがなんとかするんだって。
そんなわけで守護龍さんは、嬉々としてサープ君の着せ替えに参加しているユンを、すぐ近くで見つめている。
タタンは三兄様とアリアンさんにくっついて、演習場に出かけて行った。これから聖女の一番近くで剣を持つことになるから、訓練は欠かさずにしたいんだって。⋯⋯性格的には剣士向きじゃないんだけど、この半月で実践を積んでメキメキ腕を上げているらしくて、三兄様にすっかり気に入られてしまった。
三兄様、帝都でタタンが初めてウチに来たとき、激しくガン飛ばしたの忘れてるでしょ⁈
ザシャル先生は休む間もなく帝都に向かった。一番早く移動できるからだって言ってた。黄金の三枚羽は移動に関してもなにか隠し玉があるのかもしれない。
私たちが帝都を出発したときとは、状況がまるで違う。二度と戻らない覚悟のミシェイル様は、大地母神の卵、女神カーラを連れての凱旋で、お人好しで巻き込まれのシーリアは、実りと金運の神サープの巫女になってしまった。
ユンと共にいるバロライの天龍フェイと併せて、三柱の神がひとところに集まっている異常事態。しかもカーラちゃんはアエラ国、サープ君はヴィラード国から連れてきちゃったんだよね。
そして、聖女(笑)の私。
《漢字》を駆使して、うっかり魔女っ子爆誕しちゃったけど、守護龍さんが薄く笑って言ったのよ。
『そなたは、我をも滅する力を持っている』
⋯⋯聖女様、世界最強?
神様が三柱いて、その神様を滅することのできる私がいる。
いいのか、ローゼウス辺境伯爵領⁈
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