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スカウトは突然に。
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「それでだ、守護龍殿とローゼウス嬢、あと、そっちの坊ちゃん嬢ちゃん、騎士団預かりにしてくれませんかね」
騎士さんが言った。
「賛成いたします!」
三兄様うるさい。上司さんの言うこと、ちゃんと聞かせてよ!
「ここを拠点とする白鷹騎士団の幹部の方と思いますが、彼らは未成年です。保護者は学院に入学させたものと思っておりますので、きちんと説明した上で本人と保護者の了承を得てください」
ザシャル先生、至極真っ当なご意見です。
「おお、自己紹介がまだでありましたな。私は白鷹騎士団団長、ギジェ・フィッツヒューと申す。そこのローゼウスとアリアンは、副団長を務めております」
三兄様とアリアン卿が胸に手を当てて会釈をした。三兄様、二十五歳で副団長だなんて、私がいなきゃ仕事できるんじゃない? みんなも同じようなことを思ったのか、シーリアの視線が温いわ。ユンは三兄様を見ようとして、守護龍様に止められていた。
「帝立学院の客員指導員のザシャルと申します」
ザシャル先生、客員だったの?
「フィッツヒュー団長、幾つかお尋ねする」
「うむ」
「まずは、どこからどこまでも見ておられる」
うわぁ、大雑把なようでいて、包み隠さず全て喋りやがれという圧力。騎士団の責任者相手にかっこいいデス、先生! 通じたようでフィッツヒュー団長が、頭を掻いて苦笑した。ザシャル先生は眠たげな目元を細めて微笑んでいる。
「そうだなぁ、ローゼウス嬢が媒体鉱石を使わずに火柱を打ち立てて、そっちの嬢ちゃんがいきなり火球を大きくして、坊ちゃんが剣を掲げて炎を呼んで、小さい嬢ちゃんが龍珠で龍を喚んだあたり?」
全部じゃないの。声は聞こえてないから、見たまんまってとこか。
「順番に行こうか。まずローゼウス嬢、君は媒体鉱石を使っていないように見えた。あぁ、手には掲げていたのはわかっているよ。ただ、そこに魔力を通していなかった。高位の魔術師は媒体がない時は、心のうちに光を探す。初めて魔術の実習をするはずの君が、媒体を使わない。異常だとは思わないか?」
本人に向かって異常だとは言われても、はいとは言いづらいわよ。三兄様、ここは怒るとこでしょ!
「次にそっちの嬢ちゃん。ローゼウス嬢にくらべりゃ常識の範囲内だが、初めてであのサイズは無ぇ。どんなセンスの塊だ」
シーリアがちょっとデレた。やだ、ツンデレオカン、可愛いわよ。アリアン卿が口開けて惚けてるわ。わからんでもない。
「坊ちゃん、お前さんは純粋な青田買いだ。魔法剣士って言うのは意外と少ない。戦闘に耐え得る魔法を持つ奴ってのは、だいたい魔法を極めちまうから剣なんて持たねぇんだ。さっきウチのローゼウスが突っ込んでいったとき、反射的に構えたろ? 実に良い」
タタンがびっくりしている。眼鏡の奥の目がまん丸になって、可愛いぞ。なんか豆柴っぽくて滾るわ。
「で、小さい嬢ちゃん。龍珠を持ってるってこたぁ、バロライの巫女姫だろう? そっちの守護龍殿は人型に変化している⋯⋯。つまりそれだけ魔力を食っているってことだ。人型になるにはどえらい魔力が必要らしいからな。守護龍は龍体では最強の生物だが、人型になるとそれに器用さが加わる。契約の巫女以外はどうでもいい生き物だから、あんたの首根っこを抑えとかねぇと、帝国が滅びる」
「あい」
ユンはなんでも無いように返事をした。彼女にとってはよくわかってることなんだろう。何せ、守護龍さんがユン可愛さにヒトを殺しそうなのを止めてるくらいだもん。
「そんなわけで、普通の授業は学院でもいいが、魔術や、剣術の鍛錬は騎士団でやってもらいたい」
フィッツヒュー団長が締めくくった。
「私からひとこと。学院は反対しないと思います。むしろ手に余ると、両手を上げて差し出すでしょうね」
先生、職員会議するって言ったじゃん! 話し合う前に厄介払いされそうに言わないでよ!
「では、保護者の同意を得ねばなりませんな。バロライへは宮廷魔術師から連絡をとってもらおう」
騎士団なのに早馬使わないんだ。
「ローゼウス嬢は、ウチのローゼウスが既に賛成していたな」
ちょっと待て。保護者は父だから。そばにいたいだけの三兄様の意見をローゼウス家の総意にしないでください。
「僕はお嬢様のいかれるところならどこへでも」
まあ、そうでしょうね。お嬢様の就学に付き添う名目での入学だから、どこへでもついていくでしょ。ただ、ダフ商会で就職決まってたりしないのかしら?
「騎士団ですか⋯⋯。わたくしは吝かではありませんが、団長様が面倒なことになられませんか?」
「面倒とは?」
「はじめまして、フィッツヒュー団長様。わたくしシーリア・ダフと、申します。ダフ商会の一人娘でございます」
「マジか⋯⋯⁈」
シーリアが美しい礼をした。足首が見える簡素な動きやすいドレスを着ているので、カーテシーじゃないけど、略式礼としては完璧な出来栄えだ。さすが平民とは言え、大商会のご令嬢よね。
フィッツヒュー団長が頭を抱えた。そんなに驚くことかしら?
騎士さんが言った。
「賛成いたします!」
三兄様うるさい。上司さんの言うこと、ちゃんと聞かせてよ!
「ここを拠点とする白鷹騎士団の幹部の方と思いますが、彼らは未成年です。保護者は学院に入学させたものと思っておりますので、きちんと説明した上で本人と保護者の了承を得てください」
ザシャル先生、至極真っ当なご意見です。
「おお、自己紹介がまだでありましたな。私は白鷹騎士団団長、ギジェ・フィッツヒューと申す。そこのローゼウスとアリアンは、副団長を務めております」
三兄様とアリアン卿が胸に手を当てて会釈をした。三兄様、二十五歳で副団長だなんて、私がいなきゃ仕事できるんじゃない? みんなも同じようなことを思ったのか、シーリアの視線が温いわ。ユンは三兄様を見ようとして、守護龍様に止められていた。
「帝立学院の客員指導員のザシャルと申します」
ザシャル先生、客員だったの?
「フィッツヒュー団長、幾つかお尋ねする」
「うむ」
「まずは、どこからどこまでも見ておられる」
うわぁ、大雑把なようでいて、包み隠さず全て喋りやがれという圧力。騎士団の責任者相手にかっこいいデス、先生! 通じたようでフィッツヒュー団長が、頭を掻いて苦笑した。ザシャル先生は眠たげな目元を細めて微笑んでいる。
「そうだなぁ、ローゼウス嬢が媒体鉱石を使わずに火柱を打ち立てて、そっちの嬢ちゃんがいきなり火球を大きくして、坊ちゃんが剣を掲げて炎を呼んで、小さい嬢ちゃんが龍珠で龍を喚んだあたり?」
全部じゃないの。声は聞こえてないから、見たまんまってとこか。
「順番に行こうか。まずローゼウス嬢、君は媒体鉱石を使っていないように見えた。あぁ、手には掲げていたのはわかっているよ。ただ、そこに魔力を通していなかった。高位の魔術師は媒体がない時は、心のうちに光を探す。初めて魔術の実習をするはずの君が、媒体を使わない。異常だとは思わないか?」
本人に向かって異常だとは言われても、はいとは言いづらいわよ。三兄様、ここは怒るとこでしょ!
「次にそっちの嬢ちゃん。ローゼウス嬢にくらべりゃ常識の範囲内だが、初めてであのサイズは無ぇ。どんなセンスの塊だ」
シーリアがちょっとデレた。やだ、ツンデレオカン、可愛いわよ。アリアン卿が口開けて惚けてるわ。わからんでもない。
「坊ちゃん、お前さんは純粋な青田買いだ。魔法剣士って言うのは意外と少ない。戦闘に耐え得る魔法を持つ奴ってのは、だいたい魔法を極めちまうから剣なんて持たねぇんだ。さっきウチのローゼウスが突っ込んでいったとき、反射的に構えたろ? 実に良い」
タタンがびっくりしている。眼鏡の奥の目がまん丸になって、可愛いぞ。なんか豆柴っぽくて滾るわ。
「で、小さい嬢ちゃん。龍珠を持ってるってこたぁ、バロライの巫女姫だろう? そっちの守護龍殿は人型に変化している⋯⋯。つまりそれだけ魔力を食っているってことだ。人型になるにはどえらい魔力が必要らしいからな。守護龍は龍体では最強の生物だが、人型になるとそれに器用さが加わる。契約の巫女以外はどうでもいい生き物だから、あんたの首根っこを抑えとかねぇと、帝国が滅びる」
「あい」
ユンはなんでも無いように返事をした。彼女にとってはよくわかってることなんだろう。何せ、守護龍さんがユン可愛さにヒトを殺しそうなのを止めてるくらいだもん。
「そんなわけで、普通の授業は学院でもいいが、魔術や、剣術の鍛錬は騎士団でやってもらいたい」
フィッツヒュー団長が締めくくった。
「私からひとこと。学院は反対しないと思います。むしろ手に余ると、両手を上げて差し出すでしょうね」
先生、職員会議するって言ったじゃん! 話し合う前に厄介払いされそうに言わないでよ!
「では、保護者の同意を得ねばなりませんな。バロライへは宮廷魔術師から連絡をとってもらおう」
騎士団なのに早馬使わないんだ。
「ローゼウス嬢は、ウチのローゼウスが既に賛成していたな」
ちょっと待て。保護者は父だから。そばにいたいだけの三兄様の意見をローゼウス家の総意にしないでください。
「僕はお嬢様のいかれるところならどこへでも」
まあ、そうでしょうね。お嬢様の就学に付き添う名目での入学だから、どこへでもついていくでしょ。ただ、ダフ商会で就職決まってたりしないのかしら?
「騎士団ですか⋯⋯。わたくしは吝かではありませんが、団長様が面倒なことになられませんか?」
「面倒とは?」
「はじめまして、フィッツヒュー団長様。わたくしシーリア・ダフと、申します。ダフ商会の一人娘でございます」
「マジか⋯⋯⁈」
シーリアが美しい礼をした。足首が見える簡素な動きやすいドレスを着ているので、カーテシーじゃないけど、略式礼としては完璧な出来栄えだ。さすが平民とは言え、大商会のご令嬢よね。
フィッツヒュー団長が頭を抱えた。そんなに驚くことかしら?
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