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気になる人々のその後のはなし。
獣王姫は気づかない。✳︎
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〈ジョエーレ×アルノルド〉
王太子妃から贈り物が届いたのは、午後も早い時間だった。侯爵邸の主人たるジョエーレ宛に届いたそれを、家宰は然るべき礼節を持って受け取り、主人の書斎に置いた。中身の詮索はしない。高貴な方からの贈り物だからである。
主人夫妻の帰宅は時間がずれて、その日は良人がひとりで帰ってきた。夫人は残業らしい。
共に帰宅した時は、アルノルドは自分の足で歩くことがほとんどない。馬車から降りる段階で抱き下ろされ、後はずっと抱き抱えられての移動になる。新婚当時は『脚が萎える』と怒っていた彼も諦めて、騎士団の訓練で身体の衰えを防いでいるという。
妻が一緒にいないジョエーレは身軽で、家宰の出迎えに鷹揚に頷くと、贈り物の知らせを受けた。
「おう、中身の確認して礼状書いとくわ」
自由気ままな魔術師であるが、そこは侯爵家の当主だ。礼節はわきまえている。
書斎にある黒檀の重厚な机の上に、赤い袱紗をひいて贈り物の箱が置かれていた。包装は特にないが、箱自体に繊細な彫り物が施してあって、室内に飾っても違和感がない。
宝石箱のように錠がかかっていて、玄関で家宰から受け取っていた封筒を確認する、中にはやはり鍵が入っていた。
箱を開けて、ジョエーレはニンマリした。
一番上に載せてあったメッセージカードは、王太子妃付きの侍女のもので、この贈り物の真実の送り主であった。一介の侍女が侯爵に贈り物などできるはずもなく、王太子妃の名を借りたのだろう。もちろん妃も承知している。自分の名でメッセージを書く勇気はなかったようだが。
カードの下には、美しくカッティングされた薬壜がぎっしり詰まっている。中に入っているのは表向き美容液だが、実のところ閨で多用されるものだ。初心な王太子妃は、恥ずかしがって侍女に贈り物の手配を任せたのだろう。
しばらく前、妻のアルノルドが王太子妃の侍女と約束したものである。その時の様子は風の魔法で全て聴いている。メッセージカードには不意打ちでご使用ください、と書かれていて、ジョエーレは淫靡に目を細めた。
その日の夜は、アルノルドは帰ってこなかった。通信符と自分の魔力を込めた宝飾品で居場所はわかっているし、本人が通信符できちんと連絡してきた。更に宿泊先⋯⋯王太子宮の侍従長からも使者が来て、これでは心配のしようがない。わざわざ呼び寄せたジーンスワークの氷華の君も引き摺り込んで、寝間着で茶話会なるものをするのだと言う。なんと王太子を追い出したのだそうだ。
当然、王太子宮の侍女が風の魔法で会話を伝えてくれる。今回は魔力の高い氷華の君の参加もあって魔法で声を飛ばすのは難しいかと思われたが、案外酒に弱かった氷華の君が潰れたあとから、無事に声が届くようになった。
瑠璃が知ったら『この、ストーカー野郎ども』と蔑んだ眼差しを向けること請け合いだ。
そして翌日、王太子宮から仕事に出かけた妻を定時で攫って帰宅すると、ジョエーレは妻を抱き上げたまま寝室に飛び込んだ。
「ご飯、まだっ」
アルノルドが唇をツンと尖らせて文句を言った。
「後にしろ。昨日、予告もなくオアズケにしたお前が悪い」
「ひゃんっ」
ズボンの腰からシャツを引っ張り出して手を滑り込ませると、慣れた体に快感が走る。腕を上げて下げて腰を浮かし、ジョエーレが自分の服を剥ぎ取るのに協力しながら、アルノルドも良人の唇を求めた。積極的に舌を絡め、唾液をすする。
お互いすっかり裸になるころには、アルノルドは口付けに夢中になっていて、良人の腿に跨るように座って首に縋り付いた。ぴったり合わさった素肌の感触が、常よりもしっとりしている。王太子宮で特別なマッサージを受けたようだ。恐らく、香油の送り主だろう。
くちゅくちゅと音を立てて口づけを交わしながら、ジョエーレの手が香油を纏って菊座を探る。クルクルと入り口を馴染ませると、すぐに抵抗なく指を飲み込んだ。自分が拓いた体は、素直に奥を明け渡してくれる。二本、三本とあっという間に指は増え、温かい胎内が物欲しげに蠢いた。
「待って、ジョエル。舐めたい」
アルノルドのお強請りを、ジョエーレは聞かぬふりをした。幼い顔立ちの妻がする口淫は拙くてとても興奮するが、今日はすべての種を胎の中にぶちまけたかった。大体アルノルドが口淫を強請るときは、自分の体力の温存を狙っているときが多い。
「無駄打ちしたくねぇんだ。諦めろ、可愛こちゃん」
言うが否や、ぐちゅんと勢いよく突き込んだ。
「ああああああぁッ」
最初から奥まで拓かれて、アルノルドは押し出されるように白濁で腹を濡らした。反り返った白い喉が目に入って、ジョエーレが思わず噛みつくと、菊座がキュッと絞られて、楔の逞しさがまざまざと感じられた。良人よりもずっと小さな体が、健気に熱杭を舐めしゃぶっている。
「美味いか?」
耳に息を吹き込むように言ってやるとこくこくと頷いて、ジョエーレがなにも言わずとも、首に回した腕を頼りに腰を動かし始めた。
ゆっくりと上下に動き、熱杭のカサが内壁を刮げるようにする。抜けるギリギリまで腰を浮かせてまた飲み込むのを繰り返していたが、緩慢な動きに焦れたジョエーレが、ズドンと一気に突き込んだ。
「ーーーーッ」
「昨日はどんな話しをしてたんだ? 俺より優先する、大事な話しだったんだよなぁ? 華姫さんはちっちゃくて可愛いもんな。まさか男にしてもらったのか?」
とびきり甘い声で、意地悪を言う。無論ありえない。万が一があったら、昨夜のうちにアルノルドは手討ちになったうえ、ジョエーレは処刑の沙汰が下り、侯爵家は取り潰しだ。
「それとも氷華の君か? いや、あいつは良人以外に抱かれるタマじゃねぇな。突っ込んでもらったか?」
れろんと耳を舐める。アルノルドが腰をくねらせた。
「意地悪ぅ。ジョエルがいいの、ジョエルしか知らないぃ」
「わかってるさ。でも、意地悪を言われて感じただろう?」
「⋯⋯んぁーーーーッ」
アルノルドの中が激しく蠢いて、ジョエーレは自分の楔に伝わる蠢動で、妻が激しい絶頂の中にあることを感じた。
しばらく瘧のように震えて、その後、ぐったりと力が抜けた。まだ意識は飛ばしていないが、絶頂の余韻にとろけてぐにゃぐにゃと背骨が抜けたようになっている。
抵抗しない体を寝台に押し倒して、割開いた膝を抱えると、奥に居座ったままふたつ目の窄まりを押し上げた。アルノルドは必死に良人の体にしがみつき、脚を絡めて腰を揺すった。
「ジョエルぅ⋯⋯いいよぅ⋯⋯⋯⋯おく、とんとんしてぇ⋯⋯ッ」
「こうか?」
「ひゃああぁぁんッ」
ひときわ高い声で啼いて、アルノルドはふたたび達した。ジョエーレはアルノルドを休ませずにガツガツと突くと、ようやく一度目の逐情を果たした。
肩で息をしながら繋がったまま起き上がる。まだ力を失わない楔でクイクイと悪戯すると、アルノルドの腰が揺れてくちゅくちゅと音がした。
ジョエーレが寝台の外に手を伸ばすと、すかさず冷たい飲み物が入ったグラスが手渡されて、彼は一気に飲み干した。空のグラスを突き返すと新しいグラスが渡されて、こちらは先程のものより少しぬるい。アルノルドに口移しで与えると、何度かに分けて飲み込んで、閉じていた目をうっとりと開けた。
「気持ちいいな?」
「⋯⋯うん、いいの」
はふはふと浅く息をついで、ゆるく腰を揺らす。濃い茶色の瞳がチョコレートの艶を放って潤んだ。
視える目で見ると、アルノルドの体から靄のように魔力が立ち上っていくのがわかる。魔力を溜める器がほとんどないので、取り込んだ端から放出していくのだ。
「⋯⋯もっとぉ」
「水? こっち?」
「あぁん、こっちぃ」
腹筋に力を入れて楔をピクピク震わせると、それだけでキュウッと中が締まった。
「よし、いい子だ。後でいっぱいやろうな。その前にちょっと、補給しとけ」
侍従がサービスワゴンを素早く寄せ、ジョエーレはその上からダイスにカットされた桃を指で摘んで、直接アルノルドの口に入れた。指ごと舐めさせて、時折舌を摘んだり口蓋をくすぐったりすると、口の端から果汁を滴らせて咀嚼した。
何種類かの果物を淫靡に給餌して、ベタベタになった顎を舐めてやる。咀嚼しながらアルノルドは何度か達して、花芯をジョエーレの腹に擦り付けていた。
軽食というにも少なすぎる量だったが、果糖と水分をしっかり摂らせたことに満足すると、ジョエーレは腹の上にアルノルドを乗せて寝そべった。
侍従がその横でワゴンを退け、床に放ったままの衣類をかき集めた。それから丁寧に手を拭いて、清潔にしてから新しい手袋をつけて、宝石箱のような繊細な彫り物が施された箱の中から、カッティングが美しいガラスの薬壜を取り出して、恭しくジョエーレに渡した。
キュ、とガラスの擦れる音がして蓋が開けられ、中の透明な美容液を腹の上で懸命に立ち上がるアルノルドの花芯に垂らす。ジョエーレの腹もしとどに濡れた。
「ジョエルぅ⋯⋯ねぇ、くちゅくちゅしてぇ⋯⋯」
言いながら自分の手を花芯に添えて辿々しく擦り、ゆるく腰を揺すってジョエーレに強請る。大きく腿を開いて、花芯をいじる姿を見せつける。
「いつまで経っても魔力に慣れねぇなぁ。でろんでろんに酔っ払って、可愛いったらありゃしねぇ」
呟いて、下から連続で突き上げる。突き上げた回数のけぞって、アルノルドはあんあん啼き続けた。突いて、掻き回して、押し上げて、ふたたび中に放つ。
もう一度起き上がって、松の針葉が交差するように膝を立てて下肢をからげると、えぐる角度が変わってアルノルドの体がビクビクと揺れた。ジョエーレも自分が奥まで分け入った感触を得て、最後の突き上げを開始した。
「ああああぁぁッ⋯⋯あッあッあッ⋯⋯ひ⋯⋯いぁっっッ」
「気やったなぁ。もうちょっと付き合え」
動くのも儘ならぬ締め付けの中、それでも抽送を繰り返す。昇り切って降りてこないアルノルドは、たくましい楔の形を胎に刻んで、霰もなく身をよじった。
「⋯⋯っ」
息を詰めて吐き出すと、最奥に塗り込めるように数度柔らかく突いて、ジョエーレはようやく動きを止めた。
収めたままで、アルノルドの花芯に悪戯をする。ぶちまけた美容液⋯⋯サラリとした香油だろうか、それをアルノルドの上半身に塗り込めるように愛撫した。アルノルドは意識を飛ばしていたが、胸の尖りをいじられて、小さく喘いだ。半開きの口から赤い舌がのぞいていやらしかった。
ジョエーレがひとしきりアルノルドを堪能し終えると、侍従が温かい濡れ布を差し出す。何枚か使って腹を拭き上げると繋がったまま寝そべって、胸の上に眠るアルノルドをのせた。
「お食事とご入浴の支度は、いつもどうりに」
「頼む」
侍従はワゴンを押して出て行った。
すうすうとアルノルドの寝息が聞こえる。
「可愛いなぁ。酔っ払って、でろんでろんになって、侍従に全部見られてるのも気付かねぇ。アルノー、起きたら飯食って風呂入ってもう一回しような。今度は舐めてくれるんだろ?」
返事はない。
小さな体で自分の大きな楔を健気に受け止める妻の頭を撫でる。柔らかな猫っ毛が、指の間をすり抜けた。
アルノルドの感覚は、常人と少し違う。獣の王たる瞳の持ち主は、無邪気で子どもっぽい一面を持っている。
世の中には、馬に好かれる者、犬をうまく訓練して使う者、鳥を使役する者、突出した才能を持つ者は稀にいる。けれど、陸の獣と空の獣の両方を条件もなく懐かせ、言うがままに操るのは獣王眼の持ち主だけだ。
獣王眼の持ち主は、人間より動物に寄り添おうとするため保護が難しい。子供のうちに獣に馴染みすぎて、獣王眼の稀有な価値を知らぬ田舎の村では、忌み子と言われて命を奪われることもある。
アルノルドが保護されたのは、懐こい仔犬のような性質だったおかげだ。孤高の狼のような性質だったら、口減らしで捨てられていただろう。
獣の一途さで、気儘な自分を愛してくれるアルノルドが、愛しくて仕方がない。
魔法使いは気儘だ。魔術師団に所属するようになって、魔術師と呼ばれるようになってからも、自由気儘に好きなことをやってきた。人を傷つけがちな火の属性持ちのため、魔術師団に所属するほど大きな魔力は、魔力を持たぬものには恐怖でしかないらしい。
「魔力? 確かに怖いけど、それよりも魔術師のくせに僕より剣術が強いのが憎たらしい」
騎士団に所属しながらも獣王眼のみを必要とされているひ弱な騎士は、唇を可愛く尖らせて言った。ジョエーレが堕ちるのはあっという間だった。
寒村の産まれのアルノルドに恋を囁き、騙くらかすように妻に迎えた。ステッラ魔術師団副団長として求婚し、王の御前で婚約を宣誓するまで、爵位を知らせなかったのだ。王の眼前で「アンタ、侯爵だったの⁈ それって一番最初に言うことでしょ!」と叫んだのは、魔術師団では今でも笑い話だ。
魔力がほとんどないアルノルドは、閨の度に魔力酔いを起こしてふにゃふにゃになる。酔っている間のことは覚えているようだが、注意力が散漫の上、ジョエーレしか見ていないので、仕事のできる侍従たちは死角を突いて世話をする。
⋯⋯知られたら、離縁されそうだ。
「んう⋯⋯」
ジョエーレの上でアルノルドが身動いだ。塗り込めた美容液がほのかに花の香りを立ち上らせる。
ジョエーレは埋めたままの楔が首をもたげるのを感じて、ニヤリと笑んだ。
「アルノー、気持ちいいか?」
小さく腰を揺すると、胎内がピクピクと応えた。
一生気づかないでいて。恥ずかしがるお前も見たいけど、恥ずかしがりすぎて消えてしまっては困るから。
アルノルドの体にあちこち悪戯をけしかけながら、ジョエーレは妻が目覚めるのを待つことにした。
王太子妃から贈り物が届いたのは、午後も早い時間だった。侯爵邸の主人たるジョエーレ宛に届いたそれを、家宰は然るべき礼節を持って受け取り、主人の書斎に置いた。中身の詮索はしない。高貴な方からの贈り物だからである。
主人夫妻の帰宅は時間がずれて、その日は良人がひとりで帰ってきた。夫人は残業らしい。
共に帰宅した時は、アルノルドは自分の足で歩くことがほとんどない。馬車から降りる段階で抱き下ろされ、後はずっと抱き抱えられての移動になる。新婚当時は『脚が萎える』と怒っていた彼も諦めて、騎士団の訓練で身体の衰えを防いでいるという。
妻が一緒にいないジョエーレは身軽で、家宰の出迎えに鷹揚に頷くと、贈り物の知らせを受けた。
「おう、中身の確認して礼状書いとくわ」
自由気ままな魔術師であるが、そこは侯爵家の当主だ。礼節はわきまえている。
書斎にある黒檀の重厚な机の上に、赤い袱紗をひいて贈り物の箱が置かれていた。包装は特にないが、箱自体に繊細な彫り物が施してあって、室内に飾っても違和感がない。
宝石箱のように錠がかかっていて、玄関で家宰から受け取っていた封筒を確認する、中にはやはり鍵が入っていた。
箱を開けて、ジョエーレはニンマリした。
一番上に載せてあったメッセージカードは、王太子妃付きの侍女のもので、この贈り物の真実の送り主であった。一介の侍女が侯爵に贈り物などできるはずもなく、王太子妃の名を借りたのだろう。もちろん妃も承知している。自分の名でメッセージを書く勇気はなかったようだが。
カードの下には、美しくカッティングされた薬壜がぎっしり詰まっている。中に入っているのは表向き美容液だが、実のところ閨で多用されるものだ。初心な王太子妃は、恥ずかしがって侍女に贈り物の手配を任せたのだろう。
しばらく前、妻のアルノルドが王太子妃の侍女と約束したものである。その時の様子は風の魔法で全て聴いている。メッセージカードには不意打ちでご使用ください、と書かれていて、ジョエーレは淫靡に目を細めた。
その日の夜は、アルノルドは帰ってこなかった。通信符と自分の魔力を込めた宝飾品で居場所はわかっているし、本人が通信符できちんと連絡してきた。更に宿泊先⋯⋯王太子宮の侍従長からも使者が来て、これでは心配のしようがない。わざわざ呼び寄せたジーンスワークの氷華の君も引き摺り込んで、寝間着で茶話会なるものをするのだと言う。なんと王太子を追い出したのだそうだ。
当然、王太子宮の侍女が風の魔法で会話を伝えてくれる。今回は魔力の高い氷華の君の参加もあって魔法で声を飛ばすのは難しいかと思われたが、案外酒に弱かった氷華の君が潰れたあとから、無事に声が届くようになった。
瑠璃が知ったら『この、ストーカー野郎ども』と蔑んだ眼差しを向けること請け合いだ。
そして翌日、王太子宮から仕事に出かけた妻を定時で攫って帰宅すると、ジョエーレは妻を抱き上げたまま寝室に飛び込んだ。
「ご飯、まだっ」
アルノルドが唇をツンと尖らせて文句を言った。
「後にしろ。昨日、予告もなくオアズケにしたお前が悪い」
「ひゃんっ」
ズボンの腰からシャツを引っ張り出して手を滑り込ませると、慣れた体に快感が走る。腕を上げて下げて腰を浮かし、ジョエーレが自分の服を剥ぎ取るのに協力しながら、アルノルドも良人の唇を求めた。積極的に舌を絡め、唾液をすする。
お互いすっかり裸になるころには、アルノルドは口付けに夢中になっていて、良人の腿に跨るように座って首に縋り付いた。ぴったり合わさった素肌の感触が、常よりもしっとりしている。王太子宮で特別なマッサージを受けたようだ。恐らく、香油の送り主だろう。
くちゅくちゅと音を立てて口づけを交わしながら、ジョエーレの手が香油を纏って菊座を探る。クルクルと入り口を馴染ませると、すぐに抵抗なく指を飲み込んだ。自分が拓いた体は、素直に奥を明け渡してくれる。二本、三本とあっという間に指は増え、温かい胎内が物欲しげに蠢いた。
「待って、ジョエル。舐めたい」
アルノルドのお強請りを、ジョエーレは聞かぬふりをした。幼い顔立ちの妻がする口淫は拙くてとても興奮するが、今日はすべての種を胎の中にぶちまけたかった。大体アルノルドが口淫を強請るときは、自分の体力の温存を狙っているときが多い。
「無駄打ちしたくねぇんだ。諦めろ、可愛こちゃん」
言うが否や、ぐちゅんと勢いよく突き込んだ。
「ああああああぁッ」
最初から奥まで拓かれて、アルノルドは押し出されるように白濁で腹を濡らした。反り返った白い喉が目に入って、ジョエーレが思わず噛みつくと、菊座がキュッと絞られて、楔の逞しさがまざまざと感じられた。良人よりもずっと小さな体が、健気に熱杭を舐めしゃぶっている。
「美味いか?」
耳に息を吹き込むように言ってやるとこくこくと頷いて、ジョエーレがなにも言わずとも、首に回した腕を頼りに腰を動かし始めた。
ゆっくりと上下に動き、熱杭のカサが内壁を刮げるようにする。抜けるギリギリまで腰を浮かせてまた飲み込むのを繰り返していたが、緩慢な動きに焦れたジョエーレが、ズドンと一気に突き込んだ。
「ーーーーッ」
「昨日はどんな話しをしてたんだ? 俺より優先する、大事な話しだったんだよなぁ? 華姫さんはちっちゃくて可愛いもんな。まさか男にしてもらったのか?」
とびきり甘い声で、意地悪を言う。無論ありえない。万が一があったら、昨夜のうちにアルノルドは手討ちになったうえ、ジョエーレは処刑の沙汰が下り、侯爵家は取り潰しだ。
「それとも氷華の君か? いや、あいつは良人以外に抱かれるタマじゃねぇな。突っ込んでもらったか?」
れろんと耳を舐める。アルノルドが腰をくねらせた。
「意地悪ぅ。ジョエルがいいの、ジョエルしか知らないぃ」
「わかってるさ。でも、意地悪を言われて感じただろう?」
「⋯⋯んぁーーーーッ」
アルノルドの中が激しく蠢いて、ジョエーレは自分の楔に伝わる蠢動で、妻が激しい絶頂の中にあることを感じた。
しばらく瘧のように震えて、その後、ぐったりと力が抜けた。まだ意識は飛ばしていないが、絶頂の余韻にとろけてぐにゃぐにゃと背骨が抜けたようになっている。
抵抗しない体を寝台に押し倒して、割開いた膝を抱えると、奥に居座ったままふたつ目の窄まりを押し上げた。アルノルドは必死に良人の体にしがみつき、脚を絡めて腰を揺すった。
「ジョエルぅ⋯⋯いいよぅ⋯⋯⋯⋯おく、とんとんしてぇ⋯⋯ッ」
「こうか?」
「ひゃああぁぁんッ」
ひときわ高い声で啼いて、アルノルドはふたたび達した。ジョエーレはアルノルドを休ませずにガツガツと突くと、ようやく一度目の逐情を果たした。
肩で息をしながら繋がったまま起き上がる。まだ力を失わない楔でクイクイと悪戯すると、アルノルドの腰が揺れてくちゅくちゅと音がした。
ジョエーレが寝台の外に手を伸ばすと、すかさず冷たい飲み物が入ったグラスが手渡されて、彼は一気に飲み干した。空のグラスを突き返すと新しいグラスが渡されて、こちらは先程のものより少しぬるい。アルノルドに口移しで与えると、何度かに分けて飲み込んで、閉じていた目をうっとりと開けた。
「気持ちいいな?」
「⋯⋯うん、いいの」
はふはふと浅く息をついで、ゆるく腰を揺らす。濃い茶色の瞳がチョコレートの艶を放って潤んだ。
視える目で見ると、アルノルドの体から靄のように魔力が立ち上っていくのがわかる。魔力を溜める器がほとんどないので、取り込んだ端から放出していくのだ。
「⋯⋯もっとぉ」
「水? こっち?」
「あぁん、こっちぃ」
腹筋に力を入れて楔をピクピク震わせると、それだけでキュウッと中が締まった。
「よし、いい子だ。後でいっぱいやろうな。その前にちょっと、補給しとけ」
侍従がサービスワゴンを素早く寄せ、ジョエーレはその上からダイスにカットされた桃を指で摘んで、直接アルノルドの口に入れた。指ごと舐めさせて、時折舌を摘んだり口蓋をくすぐったりすると、口の端から果汁を滴らせて咀嚼した。
何種類かの果物を淫靡に給餌して、ベタベタになった顎を舐めてやる。咀嚼しながらアルノルドは何度か達して、花芯をジョエーレの腹に擦り付けていた。
軽食というにも少なすぎる量だったが、果糖と水分をしっかり摂らせたことに満足すると、ジョエーレは腹の上にアルノルドを乗せて寝そべった。
侍従がその横でワゴンを退け、床に放ったままの衣類をかき集めた。それから丁寧に手を拭いて、清潔にしてから新しい手袋をつけて、宝石箱のような繊細な彫り物が施された箱の中から、カッティングが美しいガラスの薬壜を取り出して、恭しくジョエーレに渡した。
キュ、とガラスの擦れる音がして蓋が開けられ、中の透明な美容液を腹の上で懸命に立ち上がるアルノルドの花芯に垂らす。ジョエーレの腹もしとどに濡れた。
「ジョエルぅ⋯⋯ねぇ、くちゅくちゅしてぇ⋯⋯」
言いながら自分の手を花芯に添えて辿々しく擦り、ゆるく腰を揺すってジョエーレに強請る。大きく腿を開いて、花芯をいじる姿を見せつける。
「いつまで経っても魔力に慣れねぇなぁ。でろんでろんに酔っ払って、可愛いったらありゃしねぇ」
呟いて、下から連続で突き上げる。突き上げた回数のけぞって、アルノルドはあんあん啼き続けた。突いて、掻き回して、押し上げて、ふたたび中に放つ。
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「ああああぁぁッ⋯⋯あッあッあッ⋯⋯ひ⋯⋯いぁっっッ」
「気やったなぁ。もうちょっと付き合え」
動くのも儘ならぬ締め付けの中、それでも抽送を繰り返す。昇り切って降りてこないアルノルドは、たくましい楔の形を胎に刻んで、霰もなく身をよじった。
「⋯⋯っ」
息を詰めて吐き出すと、最奥に塗り込めるように数度柔らかく突いて、ジョエーレはようやく動きを止めた。
収めたままで、アルノルドの花芯に悪戯をする。ぶちまけた美容液⋯⋯サラリとした香油だろうか、それをアルノルドの上半身に塗り込めるように愛撫した。アルノルドは意識を飛ばしていたが、胸の尖りをいじられて、小さく喘いだ。半開きの口から赤い舌がのぞいていやらしかった。
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⋯⋯知られたら、離縁されそうだ。
「んう⋯⋯」
ジョエーレの上でアルノルドが身動いだ。塗り込めた美容液がほのかに花の香りを立ち上らせる。
ジョエーレは埋めたままの楔が首をもたげるのを感じて、ニヤリと笑んだ。
「アルノー、気持ちいいか?」
小さく腰を揺すると、胎内がピクピクと応えた。
一生気づかないでいて。恥ずかしがるお前も見たいけど、恥ずかしがりすぎて消えてしまっては困るから。
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女子禁制の禁断の場所。
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