ヤマトナデシコはじめました。

織緒こん

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 ブライトさまがおれを残して、王太子宮を出てから数時間。ダンスの特訓中だった。

 男性用の女性パート、なんじゃいそりゃあって意味不明イミフな振り付けを習っている。男性同士の同性婚が普通にあるから、パートナーが女性の真似をする必要もないってことか。

「お人形みたいな女性同士もいますし、岩と丸太のような男性同士もいますもの」

 マーサさん、それメッチャわかりやすい例え! みんながみんな、ロベルトさんやアルノルドさんみたいな奥様じゃないもんね。

「ハリーさまならドレスも素敵だと思いますが、女性になりたいわけではございませんでしょ?」

「はい」

 振袖はもうね、戦闘服とか勝負服だと思うことにした。日本の民族衣装として、第一礼装として、これが着物だって胸を張ってやる。⋯⋯女性ものだってのは声を小さくしちゃうけど。

 サロンに繋がる小ホールで、カナリーさんがピアノを弾いて、モーリンさんとトレアくんが踊る。モーリンさんの方が背が高いので、おれのパートはトレアくんの係りだ。

 椅子に座ってふたりが踊るのを見ながら、マーサさんの解説を聞く。

「いち、に、さん、回る。ステップ、ステップ、下がる。手を忘れないでーー回るっ」

 振袖で夜会の時は踊らずに済むのかな。草履じゃ無理。

「ダンス用のお召し物は、殿下のお下がりではなくて、新しくお仕立てしますから。殿下のものは裾が広がらないので、妃殿下がお召しになるにはお地味です」

 公の場ではしょうがない。普段着はたくさん貰ったけど、場に相応しい装いは大事だ。

「では、ハリーさま。踊ってみましょう」

 カナリーさんがポロンと軽やかな音を響かせたとき、サロンのテラスから「ピロローー」っと声がした。

「ハヤテの声だね。アルノルドさんから先触れは?」

「聞いておりませんが」

 アルノルドさんは陛下とブライトさまの両方から、王太子宮の庭へ騎獣で直接入ることを許可された。魔狼、魔熊の背はもちろん、魔鷲に乗って空から降りてくることも含まれる。

 でも先触れも約束も無いなんて。

 サロンからテラスに出ると、鞍をつけたハヤテがぐったりと伏していた。

「ハリーさま、矢が!」

 トレアくんが叫んで、おれは慌ててハヤテに駆け寄った。胸から腹に数本の矢が刺さって、血の匂いがしている。

「アルノルドさんがいない⋯⋯マーサさん、騎士団の詰所に向かってください。モーリンさんは王妃宮のるぅ姉を。魔力を増やしてあげたら治りが早いかもしれないです」

 マーサさんとモーリンさんが音もなくテラスから辞すると、入れ替わりにカリオ侍従長とアントニオさんがやって来た。他にも幾人か侍従さんがいて、テキパキとテラスに敷物を敷いたり、タライにお湯を作ったりしている。

 血生臭いのでトレアくんには下がってもらった。子どもが見るものじゃない。

 ピルピルとか細い鳴き声で、ハヤテが何か訴える。おれにはどうすることもできなくて、胸の羽毛を撫でさする。ブライトさまに貰った服が、赤黒く血に染まった。

 カナリーさんがおれのそばで、励ましてくれる。ブライトさまが不在の今、王太子宮の主人は妃になるおれだ。マーサさんとモーリンさんにお遣いを頼んで、トレアくんを下がらせて、あとは何をすれば良い?

 空からピピッと軽やかな鳥の声がして、鮮やかな青と赤の翼を持った魔鳥が飛び込んできた。新幹線ちゃんの⋯⋯この色はノゾミだったかな。るぅ姉の先触れだ。

「ママ、クル。ママ、スグクル」

 テラスを囲う垣根にとまりチュンチュン鳴いた。程なくしてマーサさんの先導で現れたるぅ姉は、ワンピースドレスが汚れるのも構わずに、ハヤテに抱きついた。

「ハヤテよく頑張ったわ」

 潤んだ瞳で羽毛を撫でている。

「ねぇ、この矢、抜いちゃダメかな?」

「⋯⋯血が出過ぎちゃわない?」

 漫画とかで、お腹に刺さったナイフ抜かないってやつか。

「矢尻の返しがありますから、騎士団の獣医が来るまで待ちましょう」

 カナリーさんに言われてるぅ姉は頷くと、止まっていた手の動きを再開させた。

「ルーリィさま、ハヤテの魔力が増えて来ています。このまま撫ででやってください」

 おれたちには見ることができないのに、カナリーさんには見えている。もどかしく感じながら、おれもハヤテの羽を撫でた。おれが撫でてもるぅ姉と違って変化はない。それでも、そうしないではいられなかった。

 ガツガツと蹄の音がして、騎馬が数頭、庭に駆け込んできた。先頭はブライトさまだ。王太子宮の庭に緊急時とは言え、こんな無礼が許されるのは本人が先導しているからだろう。美しく整えられた芝生が蹄に抉られて、無残な姿を晒している。

「玻璃!」

 飛ぶように下馬して、ブライトさまが駆けつける。後ろから数人の騎士さまと、騎士団の制服に似た服を着た人がやって来る。

「君が無事でよかった。馬や獣魔の専門家だ。ここは彼に任せよう」

 紹介された男性が獣医さんなのか。獣医さんは熊みたいな風貌で、馬の背から下ろして来たトランクを広げて、中から刃物を取り出した。テレビで見る医療用メスとは違い、小さいだけで普通のナイフだ。

「玻璃、ルーリィ嬢、一旦離れよう。邪魔になる」
「はい」

 心配だけど、そう言われたら離れるしかない。

「総団長、妃殿下は奥に引っ込んでくださっても良いですが、ルーリィ嬢は近くで待機してもらっても良いですか? これから血と一緒に魔力が流れるんで。声をかけるまで、体をぬくめて待機しててください」

「ではサロンにいるとしよう。ふたりとも真っ青だ」

 ハヤテが心配だけど、これ以上は本当に邪魔になる。素直に離れて、るぅ姉とふたりどちらからともなく手を伸ばし、ギュッと抱き合った。

 ハヤテの血がお互いをさらに汚す。

 ブライトさまに促されて、サロンに移動する。美しいカーペットを汚すことに気付いて入室を躊躇うと、ブライトさまに抱き上げられた。

「ルーリィ嬢も湯を使って着替えを」

「ありがとうございます。でもすぐに汚れますわ」

「騎士団から防水布性のマントを持って来させる。血に汚れたままでは病を貰う」

「⋯⋯『感染症』ですね」

「ニホンにもある病なのか。理解が早くて助かる」

 るぅ姉は大きなマントに包まれて、警護の騎士さまが抱き上げた。王妃宮から付いて来た侍女さんがそばに控え、マーサさんが客間へ案内して行った。

 それを見送って、自分たちも王太子の私室に向かうと、浴室で降ろされておでこにキスを受けた。

「ひとりで出来る?」

「子供じゃありませんよ」

 心配そうに言われて苦笑する。

「そうじゃなくて、動揺していない?」

 動揺なんて、もちろんしてるさ。けど、ブライトさまが来てくれたから、おれは大丈夫だ。

「キスしてくれたら、大丈夫。そしたらサロンに戻ってください」

 仕事に行く旦那さまを引き止める、イタイ彼女にはなりません。それよりもアルノルドさんだよ。騎士団の皆さんと一緒に来なかったってことは、何かあったんだ。

 ブライトさまに小鳥のキスを貰って、背中を見送る。気は急くけど、るぅ姉が言ったように感染症の危険があるから、全身を綺麗に洗う。ブライトさまも着替えだけはしてるだろうな。

 浴室から出ると、カナリーさんが「緊急時ですから」と無念そうに魔法で髪を乾かしてくれた。脱衣所の引き出しに常備してある寝間着を着ていたので、新しい服を出してもらう。

 心得たカナリーさんはすぐに部屋を出て行って、着替えが終わった頃合いに再び現れた。

 サロンに戻ると新幹線ちゃんたちがピルピル鳴きながら、パタパタと忙しなく飛んでいる。

「ママ、ママ」
「はーてノ、ママ、オチタ」
「イタイノ、アト、はーてノママ、オチタ」

 ソファーに腰掛けてヴァーリ団長と話していたブライトさまが、新幹線ちゃんたちの声に顔を上げた。

「ママ、はルーリィ嬢のことか。落ちた⋯⋯はーて⋯⋯」


 もしかして。

「ブライトさま。はーて、はハヤテのことかも。ハヤテのママ、アルノルドさん。ねぇ、アルノルドさんはどこですか? 可愛いハヤテがこんな目に遭っていて、そばにいないなんてあり得ません」

 わずかな沈黙の後、ブライトさまは言った。

「ステッラは飛行訓練に出たまま行方不明になっている」

 やっぱり。

「昨日の夕刻の帰投予定時刻を過ぎても帰らなかったが、昨日は風が強かった。獣舎ではハヤテをどこかで休ませていると考えていたので、報告が上がったのは今朝だ」

 今朝って、執事さんがプライベート空間までやって来たやつか。でも、騎士がひとり帰らないって、わざわざ報告に来る? 

「同時にシェランディア王国の新大使が消えた」

 新大使、おれ会ったことないけど。ついこの間大使館に入ったばかりの、エルメル・ダビの後釜。

「アルノルドさんの飛行訓練は、どっちに飛んだのですか?」

「⋯⋯南だ」

 ですよねー。アルノルドさんの行方不明事件に、シェランディア大使の話をぶっ込んでくるとか、それ以外ないもん。

 着替えたるぅ姉も合流して、サロンは騎士団の詰所のように物々しい空気に包まれた。ハヤテが騎士団の獣舎ではなく、こちらに来てしまったからだろう。

「そうだ、るぅ姉。新幹線ちゃんたちの言葉って、鸚鵡返し? それとも意思表示?」

 教え込まれた言葉を音として真似しているだけなのか、ひとの言葉を理解するほど知能があるのか。

「あと、ほかの獣と意思疎通できる?」

 一度に聞いてごめんね。でも気になった。

「微妙。何か言ってた? おいで、ヒカリ」

 るぅ姉が、手を差し伸べると一話の魔鳥が降りて来た。ピルピルっと甘えた声を出す。

「おはなし、して」

 幼児に喋りかけるように言うと、ヒカリはキロキロと目を動かした。顔の形は十姉妹じゅうしまつに似ていて体の大きさは鸚鵡くらいある。結構重そうだ。

「はーて、ママ、オチタ」

「ハヤテからハヤテのママが、落ちた?」

「オチタ、オチタ」

「ヒカリが見た?」

「はーてガ、ミタ!」

「ハヤテをいじめた人は、見た?」

「ハネ、ハネ、キラキラ、ハネ」

 るぅ姉すごい。微妙とか言いながら、会話を成立させている。卵を孵した時のレスポンス、偶然じゃなかったんだ。

「ありがとう、ヒカリ」

 宙に放つと他の子たちがとまっている棚に飛んで行った。

「魔鳥の言葉がどれほど信用できるか。それから、どう解釈するか。騎士団の見解はいかがですか? 言葉を覚え始めた赤ちゃんと一緒ですから」

 日本でも、子供の証言は証拠にならない場合があるからね。その上、獣魔だけど鳥だし。

 羽をつけたキラキラした人間がハヤテを虐めた(攻撃した)のでアルノルドさんが転落した。

 こう言う風にしか聞こえないんだけど。

 南に行ったアルノルドさん、キナ臭いシェランディア王国、消えた新大使、羽と金(?)で飾った襲撃者。

「飛行路を陸路から辿らせています」

「陸路ですか。森の上とか突っ切ってたら追いきれませんね」

「魔術師団が出てきましたよ。当然ですね」

 魔術師は国に誓いを立てた魔法使いの総称だって習った。魔術師と名乗れるのは、国家組織の魔術師団に所属している魔法使いだけだ。カナリーさんたちは魔術師団員じゃないから、魔法使いだ。

 お妃教育のおかげで、なんとか話についていける。

「ステッラ副団長が、人殺しみたいな顔して騎士団に襲撃してきましたよ」

「ステッラさん? アルノルドさんの縁者の方?」

「旦那さんよ。魔力を辿りに行くのね」

 ヴァーリ団長が疲れたように言う。るぅ姉はほっと息をついた。おれもちょっと安心してきた。ブライトさまがおれのなかの魔力を辿れるように、アルノルドさんの旦那さまもアルノルドさんを辿れるんだ。

「⋯⋯アルノルドさんに怪我がないと良いんだけど」

 ハヤテのお腹にあれだけ矢が刺さっていたんだ。心配で胸が苦しい。

 おれが誘拐されたとき、皆んなはこんな気持ちだったんだ。情報がないってこんなに辛いんだね。

「ハヤテは大丈夫かな」

 るぅ姉も気にして、時たまテラスに視線を向けている。獣医さんからのお呼びはかからなかったけど、おれはブライトさまに断ってからソファーをはなれ、窓越しにハヤテの様子を見た。覗かれてハヤテが興奮しないように、こっそりとだ。

「ピルルーー」

 あ、バレた。獣魔のサーチレーダー、侮ったらダメだった。こっち向いてピルピル鳴いて、獣医さんがちょっと困ってる。

「すみませんが、妃殿下はお隠れいただいて、ルーリィ嬢に来てもらえませんか」

 テラスから獣医さんが言った。おれはすごすごとブライトさまのそばに戻り、るぅ姉が苦笑しながら立ち上がった。すぐにブカブカのマントが着せかけられて、フードもすっぽり被らされていた。直接血に触れないように重装備だ。

 窓を開けるとるぅ姉にくっついて、新幹線ちゃんたちも外に出た。ペットのインコや鸚鵡は外に出しちゃダメだけど、この子たちはどっか行って、野生化することはなさそうだ。

 ハヤテの甘えた声を聞きながら、ブライトさまの隣に腰掛ける。

「ヴァーリ団長、聞きたいのですが良いですか?」

「おや、わたしで良いのですか?」

 ヴァーリ団長はブライトさまをチラリと見た。騎士団の総団長はブライトさまだから、差し置いて良いのかと言うことだね。

「客観的な意見が欲しいのです。ぼくとるぅ姉は騎士団の所属じゃありません。ぼくたちとアルノルドさんは個人的な友達にもなりましたが、仕事中に事件に巻き込まれていて、それも大きな国際問題になりそうです。いくら友達でも、いえ、家族でさえないぼくたちが、ここに居るのはおかしくないですか?」

 例えば日本で誘拐事件があったとしよう。被害者の友人が警察署の対策本部に入れるわけがない。署長の奥さんなんて、もっと入れない、いや、入らない。

 友達の一大事、もっと知りたいし、不安で仕方がない。でも、おれがここに居るのはおかしくないか?

「殿下ではなく、わたしに聞きますか」

「はい、客観的に、と言いましたよ」

「それは殿下がハリーさまの好奇心を満たすために、規則を破っていないかと言うことですか?」

「そこまで言いませんが、ぼくやるぅ姉が知らなくて良いことや、知ってはいけない事もあるんじゃないかと。ほら、捜査上の秘密とかもあるでしょう?」

 ドラマとかで見てた。相方が代替わりしていくインテリ眼鏡の刑事ドラマ、母さんが今の相方役のファンでさ。主人公は『余計な首つっこむな』って、ボケ担当の役者さんに突っ込まれてた。刑事なのに。おれは刑事でもない。

「一般人への『情報漏洩』⋯⋯秘密を漏らす? になりませんか? 部外者は引っ込んでろ、みたいな」

「殿下、ハリーさまに愛想など尽かされないでくださいよ。素晴らしい王妃になられる方だ。ニホン国でお妃教育でもされて来たのでしょうか? なんと思慮深い方だ。お可愛らしさに隠れて、こんな理知的なお考えをお持ちだ」

 ヴァーリ団長、もっとゆっくり言ってくれ。褒められている気はするけど、早口過ぎて聞き取れない。

「お前が玻璃を語るな。それに、愛想を尽かされるわけないだろう」

「わかりませんよ。夜がしつこすぎてお褥滑りでも申し出られたらどうしますか。あれだけ輝くなんて、相当しつこくなさってると思いますがね」

 ちょっと待て! オシトネスベリがなんだか知らないけど、話がダメな方向に進んでいる! このチョイ悪イケオジ、なに言ってるの⁈

「話がズレてます! とにかく、ぼくとるぅ姉はここにいても問題はないのですか?」

「結論から言いますと、いてください。我々の目の届く範囲にいていただきたい。そして、情報を手に入れておいてください」

「それは何故?」

「標的が異世界の対人形だからです」

 まだ仮想だが、と前置いてブライトさまが話しを引き継いだ。

「シェランディア王国を仮想敵国として進めていく。かの国の建国の物語では、最初の王妃は神の娘だったと言う」

 金銀に輝く神の娘を得た男は、神の加護を受けて国を平らかにし、王となった。男の冒険は現実的なものから荒唐無稽なものまであるが、最終的に王になるのはどの絵本でも同じ。

 シェランディア人が金銀で飾るのは、神の加護を表し、神への崇拝を示している。⋯⋯成金趣味で品がないと思ってた、ごめん。

 で、この神の娘と言われる王妃さま、実際には豪商か盗賊の娘と思われるとか。とにかく金持ちの奥さんの、持参金だか実家の援助だかを資金源に兵を挙げ、国を平定した訳だ。

 三代目か四代目の王が国史を編纂したときに、建国の物語を作ったらしい。未来に於いての真実になるように、歴史を作ったんだ。成金の王家だと言われないよう、お金持ちの王妃を神格化して。

 で、現在。

 国は帝国の属国に甘んじ、王は神の娘になぞらえた美姫を侍らせ、国力は落ちた。

 そこに現れたのが異世界神の国から落ちてきた、金銀で装った年頃の娘たち。王妃として迎えれば、現王の地盤は盤石であり、別の誰かであれば、王の器ありと示すことができる。

「他力本願も甚だしいですわね」

 不機嫌そうなるぅ姉の声。血で汚れたマントを脱がせて貰いながら、帰ってくる。青白かったほっぺたが少し赤い。少し元気になった様子から、ハヤテは大丈夫だと知れる。様子を見に行きたいけど、今は我慢だ。

「その他力本願の阿呆が、何をしてくるのかわかりません。おふたりには最新の情報をお持ちいただいて、絶えず自衛に徹していただきたい」

 ヴァーリ団長が言って、ブライトさまが頷いた。なるほど、警護される側の意識がちゃんとしてないと、守れるはずのものも守れないんだ。危険を理解して、大人しくしとけってことだ。

 アルノルドさんが心配だ。ハヤテの怪我も酷かった。獣舎で待ってるユーリャちゃんたちも心細いだろう。

 それでもおれは、なによりも自分を守らないといけない。ブライトさまがおれの心の揺れを感じたのか、そっと肩を抱いてくれた。

 ⋯⋯安心は、ここにある。
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