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ラピスラズリの溜息 03
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ラピスラズリの溜息 03
花柳瑠璃、二十歳。弟が王子さまに完食されましたが、なにか?
はーちゃんがミケさまに連れられて、ジーンスワーク辺境伯爵領に旅立つのを見送った。王妃陛下のお召しがあって、その日はそのまま陛下のお側に侍ることになったわ。
男の子しか産まなかった陛下は、女の子を飾ることに楽しみを見出してしまったらしい。⋯⋯と言う建前で、わたしは度々王妃宮に招かれている。
ジーンスワーク辺境伯爵の王都邸にイケオジ騎士団長が突撃してきた翌日、わたしはご領主さまに連れられて王妃宮に登った。異世界のひらひら蝶々は小紋に半幅帯で、オーガンジーのショールを兵児帯がわりに二重使い。
王妃陛下に拝謁するには、着物も帯も格が合わない気もするけど、お太鼓にすると地味なのよ。椅子に腰掛けるとき帯が邪魔だから、お太鼓の方が楽なんだけどね。
王妃陛下は異世界の蝶々姫に夢中だ。そんな噂が王城で囁かれている。半分本当だけど、わたしが度々王城に登っても不思議がないように、あえて撒かれた噂話だ。何のための登城かと言えば、阿呆な坊ちゃんズの余罪を調べるためだ。
ご領主さまはイケオジ騎士団長から、自由に使って良いと託された騎士団を、容赦なく使った。わたしははっきり言って役立たずなんだけど、ご領主さまの活動の隠蓑が役割なのよね。ご領主さまは王妃陛下の親友だけど、力のある上位貴族だから、理由もなく頻繁に登城しすぎては、貴族のパワーバランスが崩れてしまう。重用されすぎると危険視されては困るのだ。
だからわたしの保護者として城に登り、騎士団の稽古をつけ、調査の報告を受けている。
やっぱりあのふたり、叩けば叩くほど埃が出た。邸の若い女中はほとんどが被害者で、下位貴族の令嬢や、城下町の年頃の少女も大勢が犠牲になっていた。調べていくうちに、年若い少年の被害者も現れ始めて、報告を受けたご領主さまは次第に訝しく思い始めた。
これだけ被害者がいて、欠片すらも表に出ないはずがない。女中は邸の中のこととしても、城下町では噂くらい出るはずだ。
秘密裏に事情を聞いても、青くなって震えるばかりで、とても調書が取れない。
王妃さまの御前で報告を聞いたご領主さまは、手にした扇をピシリと鳴らした。ご領主さまは王妃さまに目配せしたあと、わたしに向き直った。
「何か思うことあるようじゃ。陛下に申し上げよ」
あら、猫が何匹か逃げてたかしら。そんなに不機嫌そうにしてた?
「話を聞きに向かうのは、騎士さまだけでございますか?」
「⋯⋯不足かや?」
「我が弟の様を鑑みて、被害者本人は殿方を恐れていられるのでは? また、ご家族も騎士団を疑っていられるやもしれません」
「ふむ、ハリーがあれであったな。して、騎士団を疑ごうておるとは?」
「⋯⋯今まで放って置いたのに今更、と」
沈黙が降りる。
「さもありなん」
王妃さまがほう、と吐息を漏らして眉を顰められた。
「これはレオンに内密にしておく訳にはいかぬようね。我が王子を呼んで参れ。被害者の方はレオンが参ってからにしましょう。して、加害者は今、牢の中かしら?」
控えていた騎士に問うと、彼は何とも言えない表情をした。
「コンラッド・チェスターは父親が引き取っていきました。正式な書類を持って、看守に牢の扉を開けさせたので、現在、邸の周りを監視しております。マウリーノ・ロレッタは⋯⋯父親から騎士団に相談が来ております」
茶髪のほう、父親が胡散臭いわね。その書類、どっから出てきたのよ? 金髪のほうは相談?
女三人に見つめられて、騎士が怯んだ。美魔女ふたりの目力、すごいんでしょうね。わたしこっち側でよかったわ。
それでも訓練された騎士だ。しっかり説明してくれた。
ロレッタ男爵の相談とは、息子の婚姻についてだった。何言ってんの、と思ったけど、話を続けてもらうと何やら妙なことになっていた。
男爵は婿養子で、男爵家では隠居した先代とその娘が、実質の権力者であるそうな。息子と娘の教育にも関わることが許されず、舅と妻によって我儘放題に育ったことを悔やんでいると言う。そこら辺は、ちょっと調べたら嘘はないと判明した。肩身の狭い入婿は、領民からもひどく同情されていたのだ。
で、息子だ。身分を剥奪して領地で蟄居と言われているけど、舅はすぐに恩赦で身分を取り戻してやると息巻いているらしい。
ほぉ、わたしにのしかかって置いて、それを許してやると思うなよ。
ここでひとりの男が登場する。男爵の遠縁にあたる三十手前の男だ。男爵本人は婿なので、男爵家とは縁がない。その男はちょっと有名な傭兵で、騎士団員も知っていた。体は縦にも横にも大きく、強くて稼ぎのいい傭兵なんだって。その男が、金髪野郎を嫁に欲しいと言っているらしい。
「嫁⁈」
話の途中で、ぶった切っちゃった。見れば美魔女ふたりも目をパチクリさせている。
「男爵は謹慎中の上、帰領の支度中なので、詰所に相談に来たのは男爵から一筆もらった傭兵なんです。⋯⋯マウリーノ・ロレッタの幼少期がいかに素直で可愛らしかったか、どんなふうにクソジジイに性格がねじ曲げられたか延々と語るんです」
騎士が遠い目をした。
自領で蟄居させても、舅の歪んだ倫理観で保護されていれば、更生など望めない。ならばねじ曲がっていく息子の性根を嘆き、何度も諭そうとしてくれた男の元にいるのがいいのではないか。何より結婚してしまえば、恩赦が出たとしても男爵家に戻ることはない。男爵はそう考えているらしかった。
アリなんじゃない?
将来的にはどうだかわからないけど、今の段階では自分が男の下敷きになるなんて思ってもないだろうし、相手の傭兵、かなりヤンデレ臭がするんだけど。蟄居と言うより監禁になる気がしないでもないけど、本人には罰が与えられて、舅にはギャフンと言わせられて、傭兵は念願の妻を手に入れる。
「彼は自宅の監視も受け入れると言っています。むしろ仕事で家を空ける際は、監視を強化するよう懇願されました」
留守中の逃亡阻止ですか! 直接的な言葉は言わないけど、言外の思考が透けて見えるよ!
「して、その傭兵の名は?」
「暁の獅子バルダッサーレ殿です」
「⋯⋯バルダッサーレ・ヴィンチかや?」
「はっ」
ご領主さま、知ってるっぽい。
「ロレッタ男爵の息子は、ヴィンチにくれてやるが良い。その前に、妾と会談せよと伝えておきやれ。⋯⋯昔の部下じゃ。遠縁のチビの惚気話をたんと聞かされたが、それが今になってこのような次第になるとはの。世の中、わからぬものじゃ」
火薔薇姫の部下ですか! てことは十年くらい前の話だから、当時の金髪野郎は嫁入りにはお年頃ってわけだ。男爵家の跡取りだから諦めてたところ、今になって降って湧いたチャンス。二つ名持ちの傭兵が逃すはずがない。
「奴は使える。恩を売っておいて損はない」
ご領主さまがニヤリと笑った。花の顔容が束の間肉食獣になる。美しい猫科の獣だ。
「ではレオンや、マウリーノ・ロレッタはそれで良いな?」
王妃さまが仰った。王太子さま、来てたの? いつの間にっ⁈
「ルーリィ嬢がそれで良ければ」
「王妃さまの御心のままに」
ご領主さまの意見を、すでに王妃さまが支持していらっしゃる。暁の獅子とやらのヤンデレ話しに、お腹がいっぱいだってのが正直なところ。
騎士は報告することはこれ以上ないのか、扉の前まで下がって行った。あとは警護に徹するのみなのね。
そこでご領主さまは、コンラッド・チェスターのことを王太子さまに話して聞かせた。騎士の報告のほかに、法務大臣の沙汰についても伝えると、彼の周りで紫電が弾けた。
そうよねー。はーちゃんのこと、殴って押さえつけて首絞めた奴だもんねー。徹底的に洗って極刑にしてやるつもりだったって、イケオジが言ってたわ。それを『私刑』ですって? 『私刑』するなら、とっくにペニスを切り落としてから、順番に手足をもいでるでしょうよ。
「正式な書類を提示したのですね? 騎士団でなければ、どこで作成された書類なのでしょうね」
そりゃやっぱり法務でしょ。騎士団に内緒で沙汰をして、おっそろしいほど軽い罰しか与えてないんだもん。はーちゃんに疵がつかないよう表沙汰に出来ないのを利用して、小さな諍いとして片をつけるつもりなんだねー。
誰もが同じことを思ってる。
「チェスター伯爵は法務大臣に賄賂でも贈っているのでしょう」
全くなかったことにすると、王太子さまが不審に思うとでも思ったんでしょうね。だから、逃げ道のある処罰を下して、さっさと執行させたのよ。
「被害者の言葉を、わたしが聞きに行ってもよろしゅうございますか? もちろん騎士さまもご一緒に。あと、どなたか見目の優しい文官の方もいらしていただけると喜びます」
巷で人気の蝶々姫、出動しようじゃないか。騎士だけでは警戒しても、女と文官なら話してくれるかもしれない。騎士も連携していろところを見せれば、彼らにも心を開いてくれるかもしれない。
その代わり、法務大臣の汚職は任せた。イケオジが調べてご領主さまに預けた書類が役に立つと思う。わたしの言いたいことが伝わったのか、王太子さまは控えていた騎士に、法務大臣の周りを洗うよう指示を出していた。
「では父上に、証拠が揃った暁には即刻法務大臣の罷免が出来るよう、奏上して参ります」
コンラッド・チェスターを牢に戻すには、書類の無効を証明しなければならない。そのために、まずは法務大臣とチェスター伯爵の収賄を明らかにしなければならない。周りくどいけどそう言うことだ。
わたしたちは其々成すべきことをするために、一旦解散した。午後には幾人かの被害者にあって話を聞いた。やっぱり男性恐怖症気味の人もいたし、今まで騎士団が取り締まってこなかったことへの不信感もあった。よっぽど巧妙に揉み消して来たんだろう。
あと、口止め。
ある下級貴族の令嬢は、親すら被害を知らずにいた。処女でなくなれば婚姻に不利になる。そんな娘は家族が困る。犯しながら延々とそんなことを耳元に吹きこんだらしい。誰にも言えず、自分の嫁入りの時にバレてひどいことになる前にと、自殺未遂を繰り返した。
城下町の年端もいかない少年の父親は、息子に乱暴されたことを訴えようとして、その妹を犯すと脅された。父親の職場を潰すと脅されたり、実際に家族が職場を追い出されたり、市井の民にとっては死活問題だ。
ただ、面白い話もあった。あ、面白いって言っちゃダメね。被害者の証言なんだから。
金髪野郎、あんまり関わってなかった。なんか、脅されて見張りとかしてた話がチラホラと。
茶髪野郎と勘違いお嬢様の婚約は、お金が欲しい子爵家と地位を上げたい男爵家の、政略結婚だった。先代男爵は孫息子を従者のように差し出しもしたって言うのは、男爵と領民の話。
そうして。
行動を共にするようになり、見張りをしないと妹と婚約破棄すると脅す、一緒に犯させてお前も共犯だと脅す、誰かにバラしたら妹を犯して棄てると脅す、とかとか。
マウリーノ・ロレッタが被害者の様相を呈してきた。一緒にやらなきゃ妹が同じ目に遭う。少女を犯しながら呪詛のように繰り返される。被害者の姿は目の前にあるから、妹が犯される想像なんてすぐ出来る。こりゃ心を病んじゃうわ。
翌日の午前中までかけて、十人に会って、七人の話を聞いた。条件は決して名前を出さないこと。
簡単な昼食後、お茶の時間に合わせて王妃宮へ侍るために登城すると、取り次ぎが謁見の間へ向かうようにと言う。先導されて謁見の間に着くと、両陛下、王太子殿下、ご領主さま、宰相さまがお揃いになっていて、薄汚れて疲れ切った騎士がへたり込んでいた。
「カルロッタ殿、法務大臣は任せました。陛下、カルロッタ殿が証拠を集めたら、速やかに大臣を更迭・罷免してください。では、御前失礼」
王太子さまが紫電を飛ばしながら、わたしの脇を猛スピードで走り抜けた。その後を、幾人かの騎士が追いかけていく。
何があったの⁈
「ルーリィや、ハリーが拐かされたそうじゃ」
はぁ⁈
ハイネン子爵令嬢と一緒に? はーちゃん、アンタ何やってんのよ!
魔法をかけられた蔓植物と巨鳥を使って、空から誘拐って、どこの昔話よ。連れ去られたのはふたり、どちらを標的にしていたのかは不明。
それだけしか情報はない。王太子さまは現場に駆け付けるべく出て行ったのね。うわぁ、犯人ご愁傷様。茶髪野郎へのイライラ、全部八つ当たりされるんじゃない?
はーちゃんのことは心配だけど、王都にいるわたしにはなにも出来ない。気を取り直してサロンに移る。被害者の証言を調書にして皆さんに読んでもらうと、やっぱり妙な沈黙が⋯⋯。
「ヴィンチに知られたら、コンラッド・チェスターは殺されるであろうな」
「その前に、我が王子ではないか?」
「我が国、いや帝国の獅子を二頭同時に怒らせるとは、馬鹿な男であるな」
獅子の煌めきと暁の獅子。そうね、二頭の獅子だわよ。その気はなくても、がっつり逆鱗に触れてるみたいね。
追い討ちをかけるように、コンラッド・チェスター逃亡の知らせが届いた。ご領主さまは見張っていたはずであるのに、と烈火の如く怒り、騎士を震え上がらせた。チェスター邸のそばでならず者が喧嘩で付け火をしようとし、それを止めに行っている間に逃げられたと言う。ただの喧嘩なら、見張りを残して最低人数で場所を離れるが、付け火はダメだ。小火のうちに全員で消化にあたったところ、その隙を突かれてしまった。
あからさまな陽動だけど、大火になったら大勢の人が死ぬ。どちらを優先するべきかと問われたら、ご領主さまでも消火活動と言うでしょうね。
コンラッド・チェスターは南の隣国の温泉地に、居を構えるつもりらしい。ふざけるな! あんな治外法権みたいなところで、羽を伸ばされてたまるもんですか‼︎ 足取りを追うと、途中で捕まらないよう、一旦北上してから、西へ迂回して南を目指すようだ。
北?
はーちゃんの誘拐があったのは北だ。
「ハイネン子爵領の手前には、ここ何年か盗賊団のが隠れ住んでいると言う噂が報告されております。付け火をしたならず者を捕らえましたが、盗賊団との関わりがありそうです。裏は未だ取れておりませんが、先にご報告を」
騎士がご領主さまに伝えると、ご領主さまは立ち上がった。
「コンラッド・チェスターの刑は無効じゃ。なにがなんでも捕らえてまいれ! 盗賊団じゃと? 王太子殿下を早馬で追いかけさせよ。今の話を伝えるのじゃ」
なんて事!
その誘拐犯と茶髪野郎を逃した奴が同じグループなら、はーちゃんと鉢合わせするかもしれない! 奴の下衆っぷりなら、全部はーちゃんのせいとか逆恨みしそうじゃない!
夜になり、朝が来て、昼が来る。
早馬は何度もハイネン子爵領と行き来して、王太子さまの様子を伝えてくる。ミケさまたちと合流して、地元自警団も交えて山狩りを始めたらしい。その間、ご領主さまは法務大臣を捕縛して、コンラッド・チェスターの実刑無効の宣言をした。
慌ただしく事態が進んでいく中で、わたしはなにも出来なかった。ただ時を待つ。眠りも浅く、食欲もない。この異世界で、地に足をつけて生きて行くと決めたのに、はーちゃんが居なくちゃ、それもままならない。わたしの大事な弟だ!
そこに届けられた、はーちゃん救出の一報。そして同時にコンラッド・チェスター捕縛の知らせ。
一気に気が抜けて、へなへなと座り込んだ。この三日、いろんなことがありすぎだわ!
ひとまず安心したので、食べて寝よう。
そうして落ち着いて、人間の生活に戻ったころ、ハイネン子爵領と行き来している早馬で、モーリンからの私的報告書が届けられた。
なんてこったい。
うちの大事なはーちゃんが、頭っからバリバリと美味しく頂かれてしまったそうな。
『大変お可愛らしゅうございましたが、殿下はケダモノでございましたわ』
この報告書、誰かの目に留まる前に、燃やしたほうがいいかしら?
花柳瑠璃、二十歳。弟が王子さまに完食されましたが、なにか?
はーちゃんがミケさまに連れられて、ジーンスワーク辺境伯爵領に旅立つのを見送った。王妃陛下のお召しがあって、その日はそのまま陛下のお側に侍ることになったわ。
男の子しか産まなかった陛下は、女の子を飾ることに楽しみを見出してしまったらしい。⋯⋯と言う建前で、わたしは度々王妃宮に招かれている。
ジーンスワーク辺境伯爵の王都邸にイケオジ騎士団長が突撃してきた翌日、わたしはご領主さまに連れられて王妃宮に登った。異世界のひらひら蝶々は小紋に半幅帯で、オーガンジーのショールを兵児帯がわりに二重使い。
王妃陛下に拝謁するには、着物も帯も格が合わない気もするけど、お太鼓にすると地味なのよ。椅子に腰掛けるとき帯が邪魔だから、お太鼓の方が楽なんだけどね。
王妃陛下は異世界の蝶々姫に夢中だ。そんな噂が王城で囁かれている。半分本当だけど、わたしが度々王城に登っても不思議がないように、あえて撒かれた噂話だ。何のための登城かと言えば、阿呆な坊ちゃんズの余罪を調べるためだ。
ご領主さまはイケオジ騎士団長から、自由に使って良いと託された騎士団を、容赦なく使った。わたしははっきり言って役立たずなんだけど、ご領主さまの活動の隠蓑が役割なのよね。ご領主さまは王妃陛下の親友だけど、力のある上位貴族だから、理由もなく頻繁に登城しすぎては、貴族のパワーバランスが崩れてしまう。重用されすぎると危険視されては困るのだ。
だからわたしの保護者として城に登り、騎士団の稽古をつけ、調査の報告を受けている。
やっぱりあのふたり、叩けば叩くほど埃が出た。邸の若い女中はほとんどが被害者で、下位貴族の令嬢や、城下町の年頃の少女も大勢が犠牲になっていた。調べていくうちに、年若い少年の被害者も現れ始めて、報告を受けたご領主さまは次第に訝しく思い始めた。
これだけ被害者がいて、欠片すらも表に出ないはずがない。女中は邸の中のこととしても、城下町では噂くらい出るはずだ。
秘密裏に事情を聞いても、青くなって震えるばかりで、とても調書が取れない。
王妃さまの御前で報告を聞いたご領主さまは、手にした扇をピシリと鳴らした。ご領主さまは王妃さまに目配せしたあと、わたしに向き直った。
「何か思うことあるようじゃ。陛下に申し上げよ」
あら、猫が何匹か逃げてたかしら。そんなに不機嫌そうにしてた?
「話を聞きに向かうのは、騎士さまだけでございますか?」
「⋯⋯不足かや?」
「我が弟の様を鑑みて、被害者本人は殿方を恐れていられるのでは? また、ご家族も騎士団を疑っていられるやもしれません」
「ふむ、ハリーがあれであったな。して、騎士団を疑ごうておるとは?」
「⋯⋯今まで放って置いたのに今更、と」
沈黙が降りる。
「さもありなん」
王妃さまがほう、と吐息を漏らして眉を顰められた。
「これはレオンに内密にしておく訳にはいかぬようね。我が王子を呼んで参れ。被害者の方はレオンが参ってからにしましょう。して、加害者は今、牢の中かしら?」
控えていた騎士に問うと、彼は何とも言えない表情をした。
「コンラッド・チェスターは父親が引き取っていきました。正式な書類を持って、看守に牢の扉を開けさせたので、現在、邸の周りを監視しております。マウリーノ・ロレッタは⋯⋯父親から騎士団に相談が来ております」
茶髪のほう、父親が胡散臭いわね。その書類、どっから出てきたのよ? 金髪のほうは相談?
女三人に見つめられて、騎士が怯んだ。美魔女ふたりの目力、すごいんでしょうね。わたしこっち側でよかったわ。
それでも訓練された騎士だ。しっかり説明してくれた。
ロレッタ男爵の相談とは、息子の婚姻についてだった。何言ってんの、と思ったけど、話を続けてもらうと何やら妙なことになっていた。
男爵は婿養子で、男爵家では隠居した先代とその娘が、実質の権力者であるそうな。息子と娘の教育にも関わることが許されず、舅と妻によって我儘放題に育ったことを悔やんでいると言う。そこら辺は、ちょっと調べたら嘘はないと判明した。肩身の狭い入婿は、領民からもひどく同情されていたのだ。
で、息子だ。身分を剥奪して領地で蟄居と言われているけど、舅はすぐに恩赦で身分を取り戻してやると息巻いているらしい。
ほぉ、わたしにのしかかって置いて、それを許してやると思うなよ。
ここでひとりの男が登場する。男爵の遠縁にあたる三十手前の男だ。男爵本人は婿なので、男爵家とは縁がない。その男はちょっと有名な傭兵で、騎士団員も知っていた。体は縦にも横にも大きく、強くて稼ぎのいい傭兵なんだって。その男が、金髪野郎を嫁に欲しいと言っているらしい。
「嫁⁈」
話の途中で、ぶった切っちゃった。見れば美魔女ふたりも目をパチクリさせている。
「男爵は謹慎中の上、帰領の支度中なので、詰所に相談に来たのは男爵から一筆もらった傭兵なんです。⋯⋯マウリーノ・ロレッタの幼少期がいかに素直で可愛らしかったか、どんなふうにクソジジイに性格がねじ曲げられたか延々と語るんです」
騎士が遠い目をした。
自領で蟄居させても、舅の歪んだ倫理観で保護されていれば、更生など望めない。ならばねじ曲がっていく息子の性根を嘆き、何度も諭そうとしてくれた男の元にいるのがいいのではないか。何より結婚してしまえば、恩赦が出たとしても男爵家に戻ることはない。男爵はそう考えているらしかった。
アリなんじゃない?
将来的にはどうだかわからないけど、今の段階では自分が男の下敷きになるなんて思ってもないだろうし、相手の傭兵、かなりヤンデレ臭がするんだけど。蟄居と言うより監禁になる気がしないでもないけど、本人には罰が与えられて、舅にはギャフンと言わせられて、傭兵は念願の妻を手に入れる。
「彼は自宅の監視も受け入れると言っています。むしろ仕事で家を空ける際は、監視を強化するよう懇願されました」
留守中の逃亡阻止ですか! 直接的な言葉は言わないけど、言外の思考が透けて見えるよ!
「して、その傭兵の名は?」
「暁の獅子バルダッサーレ殿です」
「⋯⋯バルダッサーレ・ヴィンチかや?」
「はっ」
ご領主さま、知ってるっぽい。
「ロレッタ男爵の息子は、ヴィンチにくれてやるが良い。その前に、妾と会談せよと伝えておきやれ。⋯⋯昔の部下じゃ。遠縁のチビの惚気話をたんと聞かされたが、それが今になってこのような次第になるとはの。世の中、わからぬものじゃ」
火薔薇姫の部下ですか! てことは十年くらい前の話だから、当時の金髪野郎は嫁入りにはお年頃ってわけだ。男爵家の跡取りだから諦めてたところ、今になって降って湧いたチャンス。二つ名持ちの傭兵が逃すはずがない。
「奴は使える。恩を売っておいて損はない」
ご領主さまがニヤリと笑った。花の顔容が束の間肉食獣になる。美しい猫科の獣だ。
「ではレオンや、マウリーノ・ロレッタはそれで良いな?」
王妃さまが仰った。王太子さま、来てたの? いつの間にっ⁈
「ルーリィ嬢がそれで良ければ」
「王妃さまの御心のままに」
ご領主さまの意見を、すでに王妃さまが支持していらっしゃる。暁の獅子とやらのヤンデレ話しに、お腹がいっぱいだってのが正直なところ。
騎士は報告することはこれ以上ないのか、扉の前まで下がって行った。あとは警護に徹するのみなのね。
そこでご領主さまは、コンラッド・チェスターのことを王太子さまに話して聞かせた。騎士の報告のほかに、法務大臣の沙汰についても伝えると、彼の周りで紫電が弾けた。
そうよねー。はーちゃんのこと、殴って押さえつけて首絞めた奴だもんねー。徹底的に洗って極刑にしてやるつもりだったって、イケオジが言ってたわ。それを『私刑』ですって? 『私刑』するなら、とっくにペニスを切り落としてから、順番に手足をもいでるでしょうよ。
「正式な書類を提示したのですね? 騎士団でなければ、どこで作成された書類なのでしょうね」
そりゃやっぱり法務でしょ。騎士団に内緒で沙汰をして、おっそろしいほど軽い罰しか与えてないんだもん。はーちゃんに疵がつかないよう表沙汰に出来ないのを利用して、小さな諍いとして片をつけるつもりなんだねー。
誰もが同じことを思ってる。
「チェスター伯爵は法務大臣に賄賂でも贈っているのでしょう」
全くなかったことにすると、王太子さまが不審に思うとでも思ったんでしょうね。だから、逃げ道のある処罰を下して、さっさと執行させたのよ。
「被害者の言葉を、わたしが聞きに行ってもよろしゅうございますか? もちろん騎士さまもご一緒に。あと、どなたか見目の優しい文官の方もいらしていただけると喜びます」
巷で人気の蝶々姫、出動しようじゃないか。騎士だけでは警戒しても、女と文官なら話してくれるかもしれない。騎士も連携していろところを見せれば、彼らにも心を開いてくれるかもしれない。
その代わり、法務大臣の汚職は任せた。イケオジが調べてご領主さまに預けた書類が役に立つと思う。わたしの言いたいことが伝わったのか、王太子さまは控えていた騎士に、法務大臣の周りを洗うよう指示を出していた。
「では父上に、証拠が揃った暁には即刻法務大臣の罷免が出来るよう、奏上して参ります」
コンラッド・チェスターを牢に戻すには、書類の無効を証明しなければならない。そのために、まずは法務大臣とチェスター伯爵の収賄を明らかにしなければならない。周りくどいけどそう言うことだ。
わたしたちは其々成すべきことをするために、一旦解散した。午後には幾人かの被害者にあって話を聞いた。やっぱり男性恐怖症気味の人もいたし、今まで騎士団が取り締まってこなかったことへの不信感もあった。よっぽど巧妙に揉み消して来たんだろう。
あと、口止め。
ある下級貴族の令嬢は、親すら被害を知らずにいた。処女でなくなれば婚姻に不利になる。そんな娘は家族が困る。犯しながら延々とそんなことを耳元に吹きこんだらしい。誰にも言えず、自分の嫁入りの時にバレてひどいことになる前にと、自殺未遂を繰り返した。
城下町の年端もいかない少年の父親は、息子に乱暴されたことを訴えようとして、その妹を犯すと脅された。父親の職場を潰すと脅されたり、実際に家族が職場を追い出されたり、市井の民にとっては死活問題だ。
ただ、面白い話もあった。あ、面白いって言っちゃダメね。被害者の証言なんだから。
金髪野郎、あんまり関わってなかった。なんか、脅されて見張りとかしてた話がチラホラと。
茶髪野郎と勘違いお嬢様の婚約は、お金が欲しい子爵家と地位を上げたい男爵家の、政略結婚だった。先代男爵は孫息子を従者のように差し出しもしたって言うのは、男爵と領民の話。
そうして。
行動を共にするようになり、見張りをしないと妹と婚約破棄すると脅す、一緒に犯させてお前も共犯だと脅す、誰かにバラしたら妹を犯して棄てると脅す、とかとか。
マウリーノ・ロレッタが被害者の様相を呈してきた。一緒にやらなきゃ妹が同じ目に遭う。少女を犯しながら呪詛のように繰り返される。被害者の姿は目の前にあるから、妹が犯される想像なんてすぐ出来る。こりゃ心を病んじゃうわ。
翌日の午前中までかけて、十人に会って、七人の話を聞いた。条件は決して名前を出さないこと。
簡単な昼食後、お茶の時間に合わせて王妃宮へ侍るために登城すると、取り次ぎが謁見の間へ向かうようにと言う。先導されて謁見の間に着くと、両陛下、王太子殿下、ご領主さま、宰相さまがお揃いになっていて、薄汚れて疲れ切った騎士がへたり込んでいた。
「カルロッタ殿、法務大臣は任せました。陛下、カルロッタ殿が証拠を集めたら、速やかに大臣を更迭・罷免してください。では、御前失礼」
王太子さまが紫電を飛ばしながら、わたしの脇を猛スピードで走り抜けた。その後を、幾人かの騎士が追いかけていく。
何があったの⁈
「ルーリィや、ハリーが拐かされたそうじゃ」
はぁ⁈
ハイネン子爵令嬢と一緒に? はーちゃん、アンタ何やってんのよ!
魔法をかけられた蔓植物と巨鳥を使って、空から誘拐って、どこの昔話よ。連れ去られたのはふたり、どちらを標的にしていたのかは不明。
それだけしか情報はない。王太子さまは現場に駆け付けるべく出て行ったのね。うわぁ、犯人ご愁傷様。茶髪野郎へのイライラ、全部八つ当たりされるんじゃない?
はーちゃんのことは心配だけど、王都にいるわたしにはなにも出来ない。気を取り直してサロンに移る。被害者の証言を調書にして皆さんに読んでもらうと、やっぱり妙な沈黙が⋯⋯。
「ヴィンチに知られたら、コンラッド・チェスターは殺されるであろうな」
「その前に、我が王子ではないか?」
「我が国、いや帝国の獅子を二頭同時に怒らせるとは、馬鹿な男であるな」
獅子の煌めきと暁の獅子。そうね、二頭の獅子だわよ。その気はなくても、がっつり逆鱗に触れてるみたいね。
追い討ちをかけるように、コンラッド・チェスター逃亡の知らせが届いた。ご領主さまは見張っていたはずであるのに、と烈火の如く怒り、騎士を震え上がらせた。チェスター邸のそばでならず者が喧嘩で付け火をしようとし、それを止めに行っている間に逃げられたと言う。ただの喧嘩なら、見張りを残して最低人数で場所を離れるが、付け火はダメだ。小火のうちに全員で消化にあたったところ、その隙を突かれてしまった。
あからさまな陽動だけど、大火になったら大勢の人が死ぬ。どちらを優先するべきかと問われたら、ご領主さまでも消火活動と言うでしょうね。
コンラッド・チェスターは南の隣国の温泉地に、居を構えるつもりらしい。ふざけるな! あんな治外法権みたいなところで、羽を伸ばされてたまるもんですか‼︎ 足取りを追うと、途中で捕まらないよう、一旦北上してから、西へ迂回して南を目指すようだ。
北?
はーちゃんの誘拐があったのは北だ。
「ハイネン子爵領の手前には、ここ何年か盗賊団のが隠れ住んでいると言う噂が報告されております。付け火をしたならず者を捕らえましたが、盗賊団との関わりがありそうです。裏は未だ取れておりませんが、先にご報告を」
騎士がご領主さまに伝えると、ご領主さまは立ち上がった。
「コンラッド・チェスターの刑は無効じゃ。なにがなんでも捕らえてまいれ! 盗賊団じゃと? 王太子殿下を早馬で追いかけさせよ。今の話を伝えるのじゃ」
なんて事!
その誘拐犯と茶髪野郎を逃した奴が同じグループなら、はーちゃんと鉢合わせするかもしれない! 奴の下衆っぷりなら、全部はーちゃんのせいとか逆恨みしそうじゃない!
夜になり、朝が来て、昼が来る。
早馬は何度もハイネン子爵領と行き来して、王太子さまの様子を伝えてくる。ミケさまたちと合流して、地元自警団も交えて山狩りを始めたらしい。その間、ご領主さまは法務大臣を捕縛して、コンラッド・チェスターの実刑無効の宣言をした。
慌ただしく事態が進んでいく中で、わたしはなにも出来なかった。ただ時を待つ。眠りも浅く、食欲もない。この異世界で、地に足をつけて生きて行くと決めたのに、はーちゃんが居なくちゃ、それもままならない。わたしの大事な弟だ!
そこに届けられた、はーちゃん救出の一報。そして同時にコンラッド・チェスター捕縛の知らせ。
一気に気が抜けて、へなへなと座り込んだ。この三日、いろんなことがありすぎだわ!
ひとまず安心したので、食べて寝よう。
そうして落ち着いて、人間の生活に戻ったころ、ハイネン子爵領と行き来している早馬で、モーリンからの私的報告書が届けられた。
なんてこったい。
うちの大事なはーちゃんが、頭っからバリバリと美味しく頂かれてしまったそうな。
『大変お可愛らしゅうございましたが、殿下はケダモノでございましたわ』
この報告書、誰かの目に留まる前に、燃やしたほうがいいかしら?
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