神の末裔は褥に微睡む。

末裔は夢を見る。

　こうして女神エレイアの末子すえごユレの末裔は、緑豊かなシュトレーゼンの地にて新王朝を興す。初代は末裔その人でなくその配偶者であったが、二代王からはユレの血脈が王冠を戴き続けた。そしてそれは今代に至るまで脈々と受け継がれている。

「って、イェン神が仰っていたけど、本当？」

　旧都で三百年続く祭りの謂れを習っていた幼い王子が、傍で微笑む美しい男神に問うた。イェン神と同じ顔をしたこの麗しい神は彼女の弟神ユレであり、王子のご先祖様だった。

「本当だよ。昏き神が寂しくなって暴れたりしないように、あなたも頑張って踊りを奉納しましょうね」

「はい」

　代々の王家の子どもたちは、王都シュトレーゼンの聖なる泉の水を花で飾った山車に積み、旧都に運んで昏き神の塚に捧げる。その後に奉納舞を捧げることで祭りの開会宣言の代わりにするのだ。

　旧都は十日間の祭りの間、大陸中からの観光客を受け入れて大いに賑わう。多少の喧嘩や揉め事はあれど、陽気で賑やかな祭りは昏き神を慰める。

　祭りを提案したのは、シュトレーゼン王朝の初代ジェレマイア王である。王朝の興りを見届けた神や妖精エルフはまだ存命で、こうして王子たちに当時のことを話して聞かせてくれる。

　幼い王子は国の歴史書に載っていない、初代王とその王妃の恋の話が大好きだった。沢山の子どもたちに恵まれて、賑やかで幸せな一生だったという。

「僕もアリスレア王妃がジェレマイア王に出会ったように、素敵な方のお嫁さんになれるかなぁ」

　数代ぶりに王家に生まれた神子返りの幼い王子は、初代王とその王妃の肖像画をうっとりと見上げたのだった。




　〈おしまい〉










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　幼馴染みの番カップル、ゲスさんのその後、鳥さんの求愛に困惑する侍従、軍務財務の共働き夫婦、外務卿の必死の嫁取り、ララちゃんミラちゃん姉妹、新国王夫妻のえちえちなど、いくつか番外編を予定しています。完結マークはその後でつけたいと思います。

　次作の準備やリアルのお仕事もありますので、不定期更新になります。