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前世の約束 前世の記憶のあるヤンデレ×あの子(注 死ネタとなります)

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「来世では絶対に一緒になろうな」

目が覚める。
これは俺の前世の声だ。
俺は前世の記憶を持っている。
前世では俺は男で、どこかの店の主人だったようだ。
周りの者たちからは「旦那様」や「若旦那」と呼ばれていた。
若旦那には最愛の人がいたが身分が違うため周りから反対されていたようだった。
そして、お互い愛し合っていたのに、悲しい愛の行く末は心中だった。

最近記憶がよりはっきりしてきている。
毎日のようにこの夢を見るのは、近い未来前世の最愛の人と会えるのだと俺は確信し、朝も昼も夜もなく毎日のように探したが、見つからない日々を過ごした。

今日も一日中ひたすら探した。
気がつけば深夜になり、知らない夜の町をさ迷って、今日はやめて家路へつこうと駅へ行った。
もうこれが終電のようだった。
終電前だというのに人はほとんどおらず、仕事帰りの若いサラリーマンらしき男がいるだけのようだった。

今日も会えなかった。
俺の勘違いなのか?
この世に、最愛の人はいないのではないか?
会うこともできずに、俺は一人死に逝くのではないか?

足元から絶望が這ってくるような気がして、俺は駅のホームにしゃがみ込む。
静かなホームに電車が来るアナウンスが流れた時だった。

「あの、大丈夫ですか…?」

頭の上から女性の声がした。
顔を上げて声のした方を見る。

いつの間にかいたのだろうか、若い女性が俺を心配そうに見つめていた。
その澄んだ瞳と俺の虚ろな目が合う。

「見つけた」

それはまるで魂が出した声のようだった。

やっと、やっと見つけた。
一目で分かった。
この人だ。

前世とは姿は違うが、優しそうな顔つきはあのままだ。
年齢も俺と変わらないように見える。
魂が歓喜に震えるのが分かった。
俺の中の前世の男も喜んでいるのだろう。
「早く自分のものにしてしまえ」という声が聞こえたような気がした。

彼女も俺のことを覚えているはずだ。やっと今生で結ばれる。そう思うと涙が出た。

「やっと会えた」

涙で震える声で目の前にいる彼女に言う。
けれど運命の再開は叶わなかった。

「え…?どちら様ですか…?」

優しそうな瞬く間に顔が硬くひきつる。

最愛の人は俺を覚えていなかった。
前世の記憶を忘れてしまっている。

「どうして…」

愕然としている俺を、訝しそうに彼女は見る。

「本当に大丈夫ですか…?すごく顔色が悪いですよ」

そんな彼女の声が鈍く響いて聞こえた。

嘘だろ、約束したじゃないか。
こう言ったはずだ。

「来世では…絶対に一緒になろうな…」

ポツリと声に出した約束の声に「ヒッ…!」と息を飲む声がした。

「だ…旦那様…?」

この世で初めてその名で呼ばれる。
驚いて彼女を見れば、信じられないというような顔をしている。

俺をそう呼ぶということは前世の記憶が甦ったということだろう。

「覚えていたか…?」

彼女の腕を反射的に掴んだ。
歓喜で言葉にならないが、ずっと言いたかった愛しい人の前世の名前を言おうと口を開く。
しかし、その前に言葉を遮られた。

「嫌です…旦那様…っ…堪忍してください…」

彼女は何かに恐怖して、おののいて首をガタガタと振る。

「どうした…?なぜ嫌がる?」

掴んだ腕を離すまいと力を込めると彼女は泣き出してしまった。
記憶を戻したショックからなのか彼女はうわ言のように「嫌です、やめてください、旦那様」としか言わない。

大丈夫だ、俺はここにいる。

そう言って抱き締めようと伸ばした手を大きな力で振り払われた。

「あんた、さっきから何してんだ?」

声の方を見れば、終電を待っていた若いサラリーマンの男だった。
腕は彼女の手から離れて男に掴まれている。

「嫌がってるだろ、やめろよ。新手のナンパなら別の場所でしろ」

ナンパだと?
聞き捨てならないその言葉にカッとなる。

「彼女と俺は恋人だ!」
「そうは見えないな、彼女だって泣いてる」
「俺たちの邪魔をするなっ!」

怒声をあげ、男の手を振り払う。

前世の記憶がまた甦った。
あの時もそうだった。

俺と彼女の仲を妬む他の者たちによって俺たちは引き離された。
泣かせるつもりなどなかったのに、前世の記憶でも彼女は今のように泣いていた。

嫌です、旦那様。

記憶の中の声と彼女の先程の声が重なる。
そうだ。
俺と離れるのが嫌だったんだよな。
大丈夫、分かっているから。

今だってそうだ。
だから泣いているんだろう?

来世では絶対に結ばれる。
そう誓っただろう?
今度こそ、今度こそ幸せになるんだ。
もう、誰にも邪魔はさせない。

振り払った男の制止など気にも留めず、俺は最愛の人を抱えてホームの向こうへ飛び込んだ。

目をつんざくようなライトの光も、今はまるで二人を照らす陽の光のように思えた。
やっとこれで最愛の人と結ばれると思った。

「これで、ずっと一緒やな」

けたたましい音の中に前世の俺の声がした。
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