5 / 17
少女時代
出会い3
しおりを挟む
「ありがとう、ありがとう・・・ううぅっ」
王妃が今度は嬉しそうに泣きながら私に抱き着いてくる。でも、このおばさんが涙で私の服を濡らすんじゃないかと思いつつ、抵抗してまたキーキー声を出されるのも嫌だったので、視線は合わせずジト目で前を向いていた。
「流石です。フローラ様っ。花の妖精の名は伊達じゃないですねっ!!」
連れて来た兵士が嬉しそうに叫ぶ。
小さかった頃は「花の妖精」と言われてたいそう可愛がられていたものだ。
そのうち、ちゃんと説明しているのに、薬の悪い部分、副作用などに恨みを持った人や、私を妬んだ医者や薬師などが「東洋の魔女」と呼ぶことになるのをこの時は知らず、通り名ってかっこいいと思っていた私は、顔には出さないようにしていたけれど、ちょっとだけ嬉しくなっていた。
「なんということじゃ・・・っ」
お医者のお爺ちゃんもびっくりして魂が飛び出そうになっていた。
まぁ、このお爺ちゃんは私を認めてくれることになるお爺ちゃん。国一番のお医者ともなると人に敬意を払うのは当然らしい。こんな生意気な年下の私とも友達になってくれることになる。
「フローラ?聞いたことがあるぞ」
国王様が記憶を呼び起こそうとしているのを見て、兵士が自慢するように
「そこにいらっしゃるジェイド様が国一の名医ならば、ここにいらっしゃるフローラ様は世界一最少の薬師っ」
ギロッ
「違うでしょ、世界一の薬師よ」
私が睨むと、兵士はたじろぐ。
「しっ、失礼しましたっ」
(世界一最少って・・・せめて、世界最年少だし、言葉としても・・・)
「まぁ・・・いいわ。みんな浮かれているけど、私はまだ治したわけじゃないから」
私はディアス王子の首のリンパを触る。やはり、シコリになって腫れている。
(これくらいなら、あの薬が使えるかしら?)
言っておくが私は医者じゃない。血を見るのは大っ嫌いだったし、怪我は専門外。歳を重ねて毎月のように血を見るようになってからは、血を見るのも平気になったけれど、グロいのはお医者さんにお任せだ。
それを勘違いしてくる人もたくさんいて、見捨てるのかと罵られることもこの後もたくさんあった。
そう、私は勘違いされやすいのだ。
いや、ほんとに。怪我に対しての知識なんて、文句を言う人と同じくらいしかないのに、文句を言う人は責任逃れで、私に押し付けてくる。全く迷惑な話だ。
・・・と、いつの間にか全員が私を見ていた。
「さて・・・、キミ。もう一度聞こうか。私の実験台になるかい?」
さっきと言うてることちゃいますやんっ、て顔をお医者のお爺ちゃんがしていた。
王妃が今度は嬉しそうに泣きながら私に抱き着いてくる。でも、このおばさんが涙で私の服を濡らすんじゃないかと思いつつ、抵抗してまたキーキー声を出されるのも嫌だったので、視線は合わせずジト目で前を向いていた。
「流石です。フローラ様っ。花の妖精の名は伊達じゃないですねっ!!」
連れて来た兵士が嬉しそうに叫ぶ。
小さかった頃は「花の妖精」と言われてたいそう可愛がられていたものだ。
そのうち、ちゃんと説明しているのに、薬の悪い部分、副作用などに恨みを持った人や、私を妬んだ医者や薬師などが「東洋の魔女」と呼ぶことになるのをこの時は知らず、通り名ってかっこいいと思っていた私は、顔には出さないようにしていたけれど、ちょっとだけ嬉しくなっていた。
「なんということじゃ・・・っ」
お医者のお爺ちゃんもびっくりして魂が飛び出そうになっていた。
まぁ、このお爺ちゃんは私を認めてくれることになるお爺ちゃん。国一番のお医者ともなると人に敬意を払うのは当然らしい。こんな生意気な年下の私とも友達になってくれることになる。
「フローラ?聞いたことがあるぞ」
国王様が記憶を呼び起こそうとしているのを見て、兵士が自慢するように
「そこにいらっしゃるジェイド様が国一の名医ならば、ここにいらっしゃるフローラ様は世界一最少の薬師っ」
ギロッ
「違うでしょ、世界一の薬師よ」
私が睨むと、兵士はたじろぐ。
「しっ、失礼しましたっ」
(世界一最少って・・・せめて、世界最年少だし、言葉としても・・・)
「まぁ・・・いいわ。みんな浮かれているけど、私はまだ治したわけじゃないから」
私はディアス王子の首のリンパを触る。やはり、シコリになって腫れている。
(これくらいなら、あの薬が使えるかしら?)
言っておくが私は医者じゃない。血を見るのは大っ嫌いだったし、怪我は専門外。歳を重ねて毎月のように血を見るようになってからは、血を見るのも平気になったけれど、グロいのはお医者さんにお任せだ。
それを勘違いしてくる人もたくさんいて、見捨てるのかと罵られることもこの後もたくさんあった。
そう、私は勘違いされやすいのだ。
いや、ほんとに。怪我に対しての知識なんて、文句を言う人と同じくらいしかないのに、文句を言う人は責任逃れで、私に押し付けてくる。全く迷惑な話だ。
・・・と、いつの間にか全員が私を見ていた。
「さて・・・、キミ。もう一度聞こうか。私の実験台になるかい?」
さっきと言うてることちゃいますやんっ、て顔をお医者のお爺ちゃんがしていた。
0
お気に入りに追加
896
あなたにおすすめの小説
命を狙われたお飾り妃の最後の願い
幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・ざまぁ系・ハピエン】
重要な式典の真っ最中、いきなりシャンデリアが落ちた――。狙われたのは王妃イベリナ。
イベリナ妃の命を狙ったのは、国王の愛人ジャスミンだった。
短め連載・完結まで予約済みです。設定ゆるいです。
『ベビ待ち』の女性の心情がでてきます。『逆マタハラ』などの表現もあります。苦手な方はお控えください、すみません。
婚約破棄されたのたが、兄上がチートでツラい。
藤宮
恋愛
「ローズ。貴様のティルナシア・カーターに対する数々の嫌がらせは既に明白。そのようなことをするものを国母と迎え入れるわけにはいかぬ。よってここにアロー皇国皇子イヴァン・カイ・アローとローザリア公爵家ローズ・ロレーヌ・ローザリアの婚約を破棄する。そして、私、アロー皇国第二皇子イヴァン・カイ・アローは真に王妃に相応しき、このカーター男爵家令嬢、ティルナシア・カーターとの婚約を宣言する」
婚約破棄モノ実験中。名前は使い回しで←
うっかり2年ほど放置していた事実に、今驚愕。
婚約破棄してくださって結構です
二位関りをん
恋愛
伯爵家の令嬢イヴには同じく伯爵家令息のバトラーという婚約者がいる。しかしバトラーにはユミアという子爵令嬢がいつもべったりくっついており、イヴよりもユミアを優先している。そんなイヴを公爵家次期当主のコーディが優しく包み込む……。
※表紙にはAIピクターズで生成した画像を使用しています
断罪シーンを自分の夢だと思った悪役令嬢はヒロインに成り代わるべく画策する。
メカ喜楽直人
恋愛
さっきまでやってた18禁乙女ゲームの断罪シーンを夢に見てるっぽい?
「アルテシア・シンクレア公爵令嬢、私はお前との婚約を破棄する。このまま修道院に向かい、これまで自分がやってきた行いを深く考え、その罪を贖う一生を終えるがいい!」
冷たい床に顔を押し付けられた屈辱と、両肩を押さえつけられた痛み。
そして、ちらりと顔を上げれば金髪碧眼のザ王子様なキンキラ衣装を身に着けたイケメンが、聞き覚えのある名前を呼んで、婚約破棄を告げているところだった。
自分が夢の中で悪役令嬢になっていることに気が付いた私は、逆ハーに成功したらしい愛され系ヒロインに対抗して自分がヒロインポジを奪い取るべく行動を開始した。
宮廷外交官の天才令嬢、王子に愛想をつかれて婚約破棄されたあげく、実家まで追放されてケダモノ男爵に読み書きを教えることになりました
悠木真帆
恋愛
子爵令嬢のシャルティナ・ルーリックは宮廷外交官として日々忙しくはたらく毎日。
クールな見た目と頭の回転の速さからついたあだ名は氷の令嬢。
婚約者である王子カイル・ドルトラードを長らくほったらかしてしまうほど仕事に没頭していた。
そんなある日の夜会でシャルティナは王子から婚約破棄を宣言されてしまう。
そしてそのとなりには見知らぬ令嬢が⋯⋯
王子の婚約者ではなくなった途端、シャルティナは宮廷外交官の立場まで失い、見かねた父の強引な勧めで冒険者あがりの男爵のところへ行くことになる。
シャルティナは宮廷外交官の実績を活かして辣腕を振るおうと張り切るが、男爵から命じられた任務は男爵に文字の読み書きを教えることだった⋯⋯
婚約破棄されたおっとり令嬢は「実験成功」とほくそ笑む
柴野
恋愛
おっとりしている――つまり気の利かない頭の鈍い奴と有名な令嬢イダイア。
周囲からどれだけ罵られようとも笑顔でいる様を皆が怖がり、誰も寄り付かなくなっていたところ、彼女は婚約者であった王太子に「真実の愛を見つけたから気味の悪いお前のような女はもういらん!」と言われて婚約破棄されてしまう。
しかしそれを受けた彼女は悲しむでも困惑するでもなく、一人ほくそ笑んだ。
「実験成功、ですわねぇ」
イダイアは静かに呟き、そして哀れなる王太子に真実を教え始めるのだった。
※こちらの作品は小説家になろうにも重複投稿しています。
断罪されて婚約破棄される予定のラスボス公爵令嬢ですけど、先手必勝で目にもの見せて差し上げましょう!
ありあんと
恋愛
ベアトリクスは突然自分が前世は日本人で、もうすぐ婚約破棄されて断罪される予定の悪役令嬢に生まれ変わっていることに気がついた。
気がついてしまったからには、自分の敵になる奴全部酷い目に合わせてやるしか無いでしょう。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる