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1-4 初恋の彼はブラックホールの先に
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「えっ、うそ・・・」
私は何度も名前と内容を見返す。
『内藤 達也』
『久しぶり』
ポンポンっと二つメッセージが届く。
内藤 達也。
どこにでもありそうな名前。
だけど、その名前に過敏に私は反応していしまう。
だって、私の初恋の人の名前だ。
嬉しさと共に、その嬉しい出来事を素直に喜べない私は、がっかりするのが嫌なので、戸惑い高揚しながらも、まず疑ってかかる。
このメッセージがいたずらなんじゃないかと疑りながら、メッセージのアイコンを押す。
確かに彼だ。
写真をズームして見ると、昔の面影を残して、私が好きだったはにかんだ目元は今も全く変わっていない。
「って、何興奮しているんだろう、私」
久しぶりにドキドキしている私。
こぼれる笑顔と声。
歳を重ねて、良い女性、良い妻、良い母になったはずなのに、一瞬心がピュアだったあの頃に戻ってしまった。
『ひさしぶり・・・』
私は文字を入力したけれど、一文字ずつ消していく。
「うーーーんーーーっ」
ちょっと、彼とのトーク画面のまま机にスマホを置いて、机に両肘をついて顔を支えながらスマホを見つめる。
少し考えながら、気持ちを整理して、スマホの文字と達也くんの懐かしい顔を見る。
少ない情報から彼の気持ちや、彼がどんな人生を生きて来たのかと考えを巡らせる。
けれど、そんな二言と一枚の写真じゃ当然何にもわからない。
「今何してるんだろ?奥さんとか・・・できたのかな?」
私はコーヒーのカップを口に運ぶ。
「あちっ」
その熱さで私は我に返る。
「まっ・・・普通よね?同級生が今どうしているか考えるのは?」
私はスマホを持って、再びメッセージを打ち込む。
私は別に初恋の人じゃなくても、『久しぶり』ってメッセージが来たら、『久しぶり』って送り返す人だもん。
「・・・っ」
でも、私の親指は送信のボタンを押せずに、ピタッと止まった。
この気持ちを言葉で表現するのは・・・難しい。だって、言葉で表現するには支離滅裂過ぎる。渦のようなぐるぐる回る感情は大小の波を創り出し、そのボタンを押したくなったり、絶対に押すもんかと言ったり、今の立場の私が言葉にしてはならない欲望や、良心が打ち消し合う・・・
カシャッ
これ以上は私の頭も心もいっぱいになってしまう。
少し距離を置こう。
私はスマホの画面を切って、ボーっとテレビを見る。
『それはちゃうやろ!!』
『あははははは―――』
テレビは今、面白い話を流しているようだが、ちっとも頭は別の処理をしていて、その内容を考えようとしていないし、心も興味を持とうとしない。
どうやら、私の心はスマホの黒い画面にロックされたままのようだ―――
私は何度も名前と内容を見返す。
『内藤 達也』
『久しぶり』
ポンポンっと二つメッセージが届く。
内藤 達也。
どこにでもありそうな名前。
だけど、その名前に過敏に私は反応していしまう。
だって、私の初恋の人の名前だ。
嬉しさと共に、その嬉しい出来事を素直に喜べない私は、がっかりするのが嫌なので、戸惑い高揚しながらも、まず疑ってかかる。
このメッセージがいたずらなんじゃないかと疑りながら、メッセージのアイコンを押す。
確かに彼だ。
写真をズームして見ると、昔の面影を残して、私が好きだったはにかんだ目元は今も全く変わっていない。
「って、何興奮しているんだろう、私」
久しぶりにドキドキしている私。
こぼれる笑顔と声。
歳を重ねて、良い女性、良い妻、良い母になったはずなのに、一瞬心がピュアだったあの頃に戻ってしまった。
『ひさしぶり・・・』
私は文字を入力したけれど、一文字ずつ消していく。
「うーーーんーーーっ」
ちょっと、彼とのトーク画面のまま机にスマホを置いて、机に両肘をついて顔を支えながらスマホを見つめる。
少し考えながら、気持ちを整理して、スマホの文字と達也くんの懐かしい顔を見る。
少ない情報から彼の気持ちや、彼がどんな人生を生きて来たのかと考えを巡らせる。
けれど、そんな二言と一枚の写真じゃ当然何にもわからない。
「今何してるんだろ?奥さんとか・・・できたのかな?」
私はコーヒーのカップを口に運ぶ。
「あちっ」
その熱さで私は我に返る。
「まっ・・・普通よね?同級生が今どうしているか考えるのは?」
私はスマホを持って、再びメッセージを打ち込む。
私は別に初恋の人じゃなくても、『久しぶり』ってメッセージが来たら、『久しぶり』って送り返す人だもん。
「・・・っ」
でも、私の親指は送信のボタンを押せずに、ピタッと止まった。
この気持ちを言葉で表現するのは・・・難しい。だって、言葉で表現するには支離滅裂過ぎる。渦のようなぐるぐる回る感情は大小の波を創り出し、そのボタンを押したくなったり、絶対に押すもんかと言ったり、今の立場の私が言葉にしてはならない欲望や、良心が打ち消し合う・・・
カシャッ
これ以上は私の頭も心もいっぱいになってしまう。
少し距離を置こう。
私はスマホの画面を切って、ボーっとテレビを見る。
『それはちゃうやろ!!』
『あははははは―――』
テレビは今、面白い話を流しているようだが、ちっとも頭は別の処理をしていて、その内容を考えようとしていないし、心も興味を持とうとしない。
どうやら、私の心はスマホの黒い画面にロックされたままのようだ―――
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