天国の糸 本気の浮気します。『悪女』だと誰もが私を罵っても、彼が私を『天使』だと囁くなら…私はそれでいい~

西東友一

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1-2 幸せな家族の時間、失われた妻の時間

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 カンッ

「お疲れ様」

「これから、よろしくね、ダーリン」

 旦那の明久と私は手に持った缶ビールと缶チューハイで乾杯する。

「あたちもーーーっ」

 まだ、3歳の娘、澪が身体を揺らしながら、おねだりをする。

「はいはい。じゃーみお、両手で持って・・・かんぱーいっ」

「かんぱーいっ」

 乾杯してあげると、嬉しそうに両手で持ったプラスチック製のコップで注いであった牛乳を飲む澪。

「みお、良い飲みっぷりだねぇ」

 明久が澪を褒めると、澪は身体を上下にしながら喜ぶ。

 親子三人の幸せな時間。

「今日は色々貰っちゃった。見てみて、寄せ書きも貰ったの」

「えっ、すごいじゃん。見せて見せて」

 私はお箸を置いて、色紙を取ってくる。

「じゃーん」

「おおおっ」

 私は明久に色紙を渡すと、明久もまじまじと書かれている文章を読む。

「寄せ書きなんて大学の卒業の時以来に見るなぁ。こうやって社会人になって書いてもらえるっていうのは、月乃の人望がなせる技だと、僕は思うな~」

「へへへっ。そうでしょ」

 私は明久から色紙を返してもらってもう一度見る。
 みんなからの温かいメッセージ。
 中央にはみんなで撮った写真が飾られていて、私もみんなもすごい嬉しそうに笑っている。

「あああああっ」

「だめだよ、澪。食事中は暴れちゃ」

 澪が暴れようとするので、私は澪を宥める。

 澪は最初ぐずったけれど、納得した様子でまたゆっくり食べ始める。

「澪も大分大きくなったよなぁ」

「えぇ、本当に。これからもっと大きくなるわよ」

「ママに似て、美人になれよおおおっ」

 首をフルフル揺らしながら、澪に語り掛ける明久を見て、キャッキャする澪。

「もう、ちゃんと、ご飯食べる時は食べるのに集中させてあげて」

「いいじゃないか、ご飯の時くらいしか澪と話せる時間が作れないんだから」

 それを言われてしまうと私も弱い。
 これから、主婦になれるのも明久が今までも、そしてこれからも頑張って働いてくれるからだ。

「もーーー、ちょっとだけよ」

 聞いているのかいないのか、明久と澪は遊びながらご飯を食べた。
 片づけがなかなかできなかったけれど、仕方ない。



「もう寝るの?」

「あぁ、澪を寝かしつけてたらね」

「・・・おやすみ」

「あぁ、おやすみ。明日からも頑張るね」

「うん」

 寝室へ向かう明久。

 月末の退職日が金曜日じゃないのが妬ましいけれど、明久は仕事。

「でも、今日は二人でお酒でも飲みながら・・・私の話をしたかったな・・・」

 私は花束やプレゼントを見る。

 帰るまでは私にとって劇的な一日だったけれど、家に戻ったらただの―――


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