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1-1 終わりは始まり
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「みなさん、10年間。長いようで短い日々でしたが、こんな私と一緒に仕事をしてくださりありがとうございました」
パチパチパチパチッ
私が花束を大事そうに抱えながら頭を下げると、職場のみんなが盛大な拍手をくれる。
ぐすっ
それが嬉しくて、でも、そんなみんなと別れるのが寂しくて・・・私は鼻をすする。
「何泣いてんのよ、月乃」
「白井先輩だって・・・」
ちょっと涙目になっているのは、白井先輩。
私がこの会社に入って、右も左もわからないときに厳しく、それはもう、大変厳しく仕事のいろはを教えてくれた。怖くて、そして、面倒見のいい先輩。そんな気の強い先輩だったけれど、先輩の目には涙が溜まっていた。白井先輩と私は目が合うとお互いにこぼれるように笑った。そしたら、二人とも涙の方も頬をツーっとこぼれた。
「綾坂先輩っ」
後輩の女の子たちが後ろに両手を隠しながら私を囲む。
「これ、私たちからです。今まで本当にありがとうございましたっ」
後輩たちはプレゼントを私の目の前に差し出す。
「わぁ、ありがと~」
私は順番に後輩たちから一言とプレゼントを手に取る。
「わぁ~これ好きだったやつ。これもこれも・・・」
どれも、高級ブランドのコスメのロゴが入っている。
「また、遊びに来てくださいね」
「えぇ、みんな、ほんとーーーーーーに、ありがとう!!」
私は抱えきれないほどのプレゼントを貰い、後輩にも少し持って貰いながら拍手を受けながら、会社のフロアの入口へ向かう。
「本当にありがとうございました」
ふり返った私は深々と頭を下げて、顔を上げる。
一緒に苦楽を乗り越えた仲間たち。そして、戦ってきた戦場であり、私の居場所だった職場。
この景色を絶対に忘れないように私は心に焼き付けた。
「すいません、ありがとうございます」
仲の良かった白井先輩や後輩の女の子たち数名が駐車場まで見送りに来てくれた。
「じゃあ、元気でね?」
「もちろん、余裕ですよ。それよりも先輩もお体気を付けてくださいね」
「なーに、言ってんのよ。主婦だって言ったって、やることはいっぱいあるんだから大変よ?」
「はーいっ」
「返事はっ」
「はいっ」
こんなやりとりをできるのも今日が最後だと思うと、感傷に浸りたくなる。
「じゃあねっ」
「はいっ」
私は車を走らせる。
手を振ってくれているみんなを私はサイドミラー、そしてバックミラーの順で小さくなるまで確認した。
「ひっく、ひっく・・・っ。うええええええええっ」
私は大泣きした。
寂しくて寂しくて、一目も気にせず、私は車内で一人大きな声を出して、泣いた。
そう、私は10年勤めた会社を辞職したのだ。
パチパチパチパチッ
私が花束を大事そうに抱えながら頭を下げると、職場のみんなが盛大な拍手をくれる。
ぐすっ
それが嬉しくて、でも、そんなみんなと別れるのが寂しくて・・・私は鼻をすする。
「何泣いてんのよ、月乃」
「白井先輩だって・・・」
ちょっと涙目になっているのは、白井先輩。
私がこの会社に入って、右も左もわからないときに厳しく、それはもう、大変厳しく仕事のいろはを教えてくれた。怖くて、そして、面倒見のいい先輩。そんな気の強い先輩だったけれど、先輩の目には涙が溜まっていた。白井先輩と私は目が合うとお互いにこぼれるように笑った。そしたら、二人とも涙の方も頬をツーっとこぼれた。
「綾坂先輩っ」
後輩の女の子たちが後ろに両手を隠しながら私を囲む。
「これ、私たちからです。今まで本当にありがとうございましたっ」
後輩たちはプレゼントを私の目の前に差し出す。
「わぁ、ありがと~」
私は順番に後輩たちから一言とプレゼントを手に取る。
「わぁ~これ好きだったやつ。これもこれも・・・」
どれも、高級ブランドのコスメのロゴが入っている。
「また、遊びに来てくださいね」
「えぇ、みんな、ほんとーーーーーーに、ありがとう!!」
私は抱えきれないほどのプレゼントを貰い、後輩にも少し持って貰いながら拍手を受けながら、会社のフロアの入口へ向かう。
「本当にありがとうございました」
ふり返った私は深々と頭を下げて、顔を上げる。
一緒に苦楽を乗り越えた仲間たち。そして、戦ってきた戦場であり、私の居場所だった職場。
この景色を絶対に忘れないように私は心に焼き付けた。
「すいません、ありがとうございます」
仲の良かった白井先輩や後輩の女の子たち数名が駐車場まで見送りに来てくれた。
「じゃあ、元気でね?」
「もちろん、余裕ですよ。それよりも先輩もお体気を付けてくださいね」
「なーに、言ってんのよ。主婦だって言ったって、やることはいっぱいあるんだから大変よ?」
「はーいっ」
「返事はっ」
「はいっ」
こんなやりとりをできるのも今日が最後だと思うと、感傷に浸りたくなる。
「じゃあねっ」
「はいっ」
私は車を走らせる。
手を振ってくれているみんなを私はサイドミラー、そしてバックミラーの順で小さくなるまで確認した。
「ひっく、ひっく・・・っ。うええええええええっ」
私は大泣きした。
寂しくて寂しくて、一目も気にせず、私は車内で一人大きな声を出して、泣いた。
そう、私は10年勤めた会社を辞職したのだ。
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