6 / 14
6
しおりを挟む
確かに。
私はディーラーになったカイジンを見ました。カイジンは平然を装っておりますが、上機嫌なのを隠せていません。
私のカードは、ハートのA、ハートの2、ハートの3、ハートの4、ハートの5。先ほど、ウィン王子がカイジンを倒した手札だ。きっと、カイジンは回収した時にはっきりとした傷をカードに付けたのでしょう。本当に手癖が悪い方です。
「レイズ」
(あれ?)
ウィン王子は寂しそうな顔をして、「レイズ」を宣言された。それが私は不思議で、何を考えているのか興味を持った。
「ごほんっ」
ただ、ディーラーであるカイジンはその本分を忘れて、無粋にも私を急かすようにわざとらしい咳込みをする。オールインしろと言わんばかりに。
「……レイズ」
「なっ」
いちいちディーラーが反応するのを止めていただきたい。私がせっかくポーカーフェイスに努めても、カイジンのリアクションで悟られてしまうかもしれない。私はチップをどれぐらい前に出そうか考える。山ほどあるチップ。けれど、しょせんはテーブルの上に収まるだけのチップ。これが私の……価値。
「こちらにあるチップが私の身だとすれば、王子のチップはいかように?」
私はウィン王子の目を見て話をする。
「そのチップは一枚……」
「ディーラーには聞いておりません。ただのディーラーは黙っていてください」
カイジンは頭にきた顔をしたけれど、先ほどのこともあってウィン王子の前なので、大人しく奥歯を噛みしめていた。
「キミはどうしたい? クレア」
「私は……私の身も心も、そして命もお金になど換算したくはありません」
「おいおい、お金があればさぁ」
「あぁ、ちなみにあなたとは婚約破棄させていただきますので、貴方のところには一銭も入りませんよ、カイジン」
「はぁ!? ・・・・・・んぐっ」
キレそうになったカイジンがまたもウィン王子に睨まれ、大人しくする。今度は顔が真っ赤だ。
「当たり前でしょ? 婚約者を賭けの対象にするなんて。それとも、文句があるなら結婚式の資金として渡したお金を返してもらいますが?」
余計なことは言うな、と私は目で釘をさす。
「わかりました……」
悪い男との手切れ金と思えば、まぁ、いいでしょう。
「もうすでにスタートしてしまったが、このチップは何にすれば、キミは満足だい?」
「ウィン王子も、ウィン王子自身を賭けてください」
「「「なっ」」」
セバス、カイジン、元ディーラーが驚いて声を出す。
(表情を変えませんか……王子)
私を除いて、ただ一人、ウィン王子は表情を全く変えずに私の目を見ていた。
私はディーラーになったカイジンを見ました。カイジンは平然を装っておりますが、上機嫌なのを隠せていません。
私のカードは、ハートのA、ハートの2、ハートの3、ハートの4、ハートの5。先ほど、ウィン王子がカイジンを倒した手札だ。きっと、カイジンは回収した時にはっきりとした傷をカードに付けたのでしょう。本当に手癖が悪い方です。
「レイズ」
(あれ?)
ウィン王子は寂しそうな顔をして、「レイズ」を宣言された。それが私は不思議で、何を考えているのか興味を持った。
「ごほんっ」
ただ、ディーラーであるカイジンはその本分を忘れて、無粋にも私を急かすようにわざとらしい咳込みをする。オールインしろと言わんばかりに。
「……レイズ」
「なっ」
いちいちディーラーが反応するのを止めていただきたい。私がせっかくポーカーフェイスに努めても、カイジンのリアクションで悟られてしまうかもしれない。私はチップをどれぐらい前に出そうか考える。山ほどあるチップ。けれど、しょせんはテーブルの上に収まるだけのチップ。これが私の……価値。
「こちらにあるチップが私の身だとすれば、王子のチップはいかように?」
私はウィン王子の目を見て話をする。
「そのチップは一枚……」
「ディーラーには聞いておりません。ただのディーラーは黙っていてください」
カイジンは頭にきた顔をしたけれど、先ほどのこともあってウィン王子の前なので、大人しく奥歯を噛みしめていた。
「キミはどうしたい? クレア」
「私は……私の身も心も、そして命もお金になど換算したくはありません」
「おいおい、お金があればさぁ」
「あぁ、ちなみにあなたとは婚約破棄させていただきますので、貴方のところには一銭も入りませんよ、カイジン」
「はぁ!? ・・・・・・んぐっ」
キレそうになったカイジンがまたもウィン王子に睨まれ、大人しくする。今度は顔が真っ赤だ。
「当たり前でしょ? 婚約者を賭けの対象にするなんて。それとも、文句があるなら結婚式の資金として渡したお金を返してもらいますが?」
余計なことは言うな、と私は目で釘をさす。
「わかりました……」
悪い男との手切れ金と思えば、まぁ、いいでしょう。
「もうすでにスタートしてしまったが、このチップは何にすれば、キミは満足だい?」
「ウィン王子も、ウィン王子自身を賭けてください」
「「「なっ」」」
セバス、カイジン、元ディーラーが驚いて声を出す。
(表情を変えませんか……王子)
私を除いて、ただ一人、ウィン王子は表情を全く変えずに私の目を見ていた。
1
お気に入りに追加
52
あなたにおすすめの小説
当て馬の悪役令嬢に転生したけど、王子達の婚約破棄ルートから脱出できました。推しのモブに溺愛されて、自由気ままに暮らします。
可児 うさこ
恋愛
生前にやりこんだ乙女ゲームの悪役令嬢に転生した。しかも全ルートで王子達に婚約破棄されて処刑される、当て馬令嬢だった。王子達と遭遇しないためにイベントを回避して引きこもっていたが、ある日、王子達が結婚したと聞いた。「よっしゃ!さよなら、クソゲー!」私は家を出て、向かいに住む推しのモブに会いに行った。モブは私を溺愛してくれて、何でも願いを叶えてくれた。幸せな日々を過ごす中、姉が書いた攻略本を見つけてしまった。モブは最強の魔術師だったらしい。え、裏ルートなんてあったの?あと、なぜか王子達が押し寄せてくるんですけど!?
姉の代わりでしかない私
下菊みこと
恋愛
クソ野郎な旦那様も最終的に幸せになりますので閲覧ご注意を。
リリアーヌは、夫から姉の名前で呼ばれる。姉の代わりにされているのだ。それでも夫との子供が欲しいリリアーヌ。結果的に、子宝には恵まれるが…。
アルファポリス様でも投稿しています。
婚約破棄された公爵令嬢は監禁されました
oro
恋愛
「リリー・アークライト。すまないが私には他に愛する人が出来た。だから婚約破棄してくれ。」
本日、学園の会場で行われていたパーティを静止させた私の婚約者、ディオン国第2王子シーザー・コリンの言葉に、私は意識が遠のくのを感じたー。
婚約破棄された公爵令嬢が幼馴染に監禁されて溺愛されるお話です。
王宮医務室にお休みはありません。~休日出勤に疲れていたら、結婚前提のお付き合いを希望していたらしい騎士さまとデートをすることになりました。~
石河 翠
恋愛
王宮の医務室に勤める主人公。彼女は、連続する遅番と休日出勤に疲れはてていた。そんなある日、彼女はひそかに片思いをしていた騎士ウィリアムから夕食に誘われる。
食事に向かう途中、彼女は憧れていたお菓子「マリトッツォ」をウィリアムと美味しく食べるのだった。
そして休日出勤の当日。なぜか、彼女は怒り心頭の男になぐりこまれる。なんと、彼女に仕事を押しつけている先輩は、父親には自分が仕事を押しつけられていると話していたらしい。
しかし、そんな先輩にも実は誰にも相談できない事情があったのだ。ピンチに陥る彼女を救ったのは、やはりウィリアム。ふたりの距離は急速に近づいて……。
何事にも真面目で一生懸命な主人公と、誠実な騎士との恋物語。
扉絵は管澤捻さまに描いていただきました。
小説家になろう及びエブリスタにも投稿しております。
みんなが嫌がる公爵と婚約させられましたが、結果イケメンに溺愛されています
中津田あこら
恋愛
家族にいじめられているサリーンは、勝手に婚約者を決められる。相手は動物実験をおこなっているだとか、冷徹で殺されそうになった人もいるとウワサのファウスト公爵だった。しかしファウストは人間よりも動物が好きな人で、同じく動物好きのサリーンを慕うようになる。動物から好かれるサリーンはファウスト公爵から信用も得て溺愛されるようになるのだった。
悪役令嬢は勝利する!
リオール
恋愛
「公爵令嬢エルシェイラ、私はそなたとの婚約破棄を今ここに宣言する!!!」
「やりましたわあぁぁぁーーーーーーーーーーーー!!!!!」
婚約破棄するかしないか
悪役令嬢は勝利するのかしないのか
はたして勝者は!?
……ちょっと支離滅裂です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる