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 確かに。

 私はディーラーになったカイジンを見ました。カイジンは平然を装っておりますが、上機嫌なのを隠せていません。

 私のカードは、ハートのA、ハートの2、ハートの3、ハートの4、ハートの5。先ほど、ウィン王子がカイジンを倒した手札だ。きっと、カイジンは回収した時にはっきりとした傷をカードに付けたのでしょう。本当に手癖が悪い方です。

「レイズ」

(あれ?)

 ウィン王子は寂しそうな顔をして、「レイズ」を宣言された。それが私は不思議で、何を考えているのか興味を持った。

「ごほんっ」

 ただ、ディーラーであるカイジンはその本分を忘れて、無粋にも私を急かすようにわざとらしい咳込みをする。オールインしろと言わんばかりに。

「……レイズ」

「なっ」

 いちいちディーラーが反応するのを止めていただきたい。私がせっかくポーカーフェイスに努めても、カイジンのリアクションで悟られてしまうかもしれない。私はチップをどれぐらい前に出そうか考える。山ほどあるチップ。けれど、しょせんはテーブルの上に収まるだけのチップ。これが私の……価値。

「こちらにあるチップが私の身だとすれば、王子のチップはいかように?」

 私はウィン王子の目を見て話をする。

「そのチップは一枚……」

「ディーラーには聞いておりません。ただのディーラーは黙っていてください」

 カイジンは頭にきた顔をしたけれど、先ほどのこともあってウィン王子の前なので、大人しく奥歯を噛みしめていた。

「キミはどうしたい? クレア」

「私は……私の身も心も、そして命もお金になど換算したくはありません」

「おいおい、お金があればさぁ」

「あぁ、ちなみにあなたとは婚約破棄させていただきますので、貴方のところには一銭も入りませんよ、カイジン」

「はぁ!? ・・・・・・んぐっ」

 キレそうになったカイジンがまたもウィン王子に睨まれ、大人しくする。今度は顔が真っ赤だ。

「当たり前でしょ? 婚約者を賭けの対象にするなんて。それとも、文句があるなら結婚式の資金として渡したお金を返してもらいますが?」

 余計なことは言うな、と私は目で釘をさす。

「わかりました……」

 悪い男との手切れ金と思えば、まぁ、いいでしょう。

「もうすでにスタートしてしまったが、このチップは何にすれば、キミは満足だい?」

「ウィン王子も、ウィン王子自身を賭けてください」

「「「なっ」」」

 セバス、カイジン、元ディーラーが驚いて声を出す。

(表情を変えませんか……王子)

 私を除いて、ただ一人、ウィン王子は表情を全く変えずに私の目を見ていた。

 

 
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