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孤独な旅、歓迎のニアメア王国

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(アレキサンダー王子……申し訳ありませんっ)

 フローレンスは自分のところへアレキサンダー王子がやって来たのが分かっていた。そして、アレキサンダー王子が彼女に話しかけようとしていたのも気づいていた。勇者のパーティーとして、彼女自身が敵意を向けられづらい特性を持っていたけれど、知性の高い魔物の中には当然、回復役から潰すべきだと考える者もいた。彼女以外の勇者パーティーは彼女の代わりはいくらでもいる…と思う気持ちが見え隠れする部分もあり、ガードナーやマリリーンがフローレンスを守ることも当然あったが、フローレンスが魔王討伐までの長い道のりでほぼ無傷で達成できたのも、彼女の察知能力の高さに他ならない。特に戦闘が嫌いとされる回復師であるのもあるが、殺気や敵意や悪意には敏感で、移動しながら援護することもしばしばあった。

 ただ、いつもの3人に対してではなく、今回は初めての大規模援護。援護が多少遅れてもある程度は耐えられる勇者たちではなく、耐久力は勇者たちと比べれば紙切れほどの兵だったり、初連携でどんな動きをするかもわからない大勢の人々に援護をするというのは、とても過酷だった。

(誰も……死なせたくない、傷つけたくない)

 フローレンスは後悔したくなかった。
 死は絶対で避けたい、できれば、傷つけたくない。傷ついてもすぐに回復させたい。

(ごめんなさい……っ)

 戦力で戦闘で傷つかないというのも強化その想いで、もしアレキサンダー王子に気を割いた分で、誰かを失いたくないとフローレンスは思った。それが失礼であることも重々承知だったが、アレキサンダー王子は理解してくれたことにフローレンスは心の底から安心し、彼の聡明さに感謝した。

(アレキサンダー王子ともっと話をしたい)

 部隊の交代を行ったニアメア王国の戦術。フローレンスにとって、ニアメア王国は魔王討伐の際は少し滞在したくらいだったので、よくわからなかったが、今回一緒にアレキサンダー王子と一緒に戦ってみて、自分と同じように人の命を大事にする人だと分かった。フローレンスはもっとアレキサンダー王子と話ができればより確実に負傷者を減らしてこの戦いに勝利できると確信した。そして、フローレンスはこの戦いに溢れる世界でそんな考え方をするニアメア王国やアレキサンダー王子のことをもっと知りたいと思った。

「ふぅ………っ」

 フローレンスは世界が争いのない平和になることを願い魔王討伐を行ったが目標を達成し、次の具体的な目標を考える暇もなく勇者のパーティーから半ば見捨てられ、ニアメア王国の人に歓迎会をしてもらったものの、その優しさを受け取る余裕が無かった。ただ、戦いの最中ではあり本人も自覚はないが、同じ価値観で生きていけるかもしれないこの国やアレキサンダー王子のことを気になるようになっていた。
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