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孤独な旅、歓迎のニアメア王国
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「さっきね、さっきねっ。ぎゅうううううううっ……って、ものすごい音がしたの」
少女が身体を縮めながらフローレンスのお腹の音を表現して、国王や王子、それとその場にいなかった大人たちに話す。意識を取り戻したフローレンスを迎えた国民達は国王中心に王宮の庭でお祝いの食事会を開いた。
「素敵なお嬢さん」
魔王城に一番近い国「ニアメア王国」のアレキサンダー王子はしゃがんでその子どもと目を合わせる。少女はそのサファイアのような青く透き通る瞳を見て、目を輝けた。
「みんなが聞きたいという期待に応えることは素敵なことだと思うんだ。だけどね、誰かを傷つける言葉を、キミは使いたいかい?」
少女は首を何度も横に振った。それを見てアレキサンダー王子は喜んで少女の頭を撫でる。
「ごめんなさい、フローレンスさま」
「ううん、平気よ。だって、こんなに美味しい料理が食べられているのだもの」
「わたし、お料理いーーっぱい持ってくるね」
走っていく少女の背中に手を振るフローレンス。
「フローレンス様、国民を守っていただきありがとうございました。国を代表してお礼を申し上げます」
一緒に見送ったアレキサンダー王子が深々とフローレンスに対して頭を下げる。
「いえ、私は魔王討伐はギルガルドたちで私は・・・・・・」
「それについても個人としてお礼は言いたいですが・・・・・・私がお礼したいのは……」
最初、フローレンスは何が起きたのか分からなかった。急にアレキサンダー王子が耳を澄ませて、何かを聞こうとしていた。すると、フローレンスにも防具が擦れる音が聞こえ、それが徐々に近づいてくるのが分かった。その方角を見ると、軽装の兵士たちだった。彼らは見張り台から遠方を確認する見張り係だ。
「大変ですっ」
兵士はアレキサンダー王子を見つけると、残りの体力を振り絞って足もたどたどに走って来た。
「どうしたんだい?」
「魔王城にいた魔物たちの一部がこちらの国へ攻め込んできていますっ!!」
会場がざわつきはじめる。
手を取り合う恋人たち。
怖がる少女を抱きしめる母親。
心配な様子の老婆と彼女の背中を擦る老人。
「みんな、落ち着きたまえっ」
アレキサンダー王子の透き通った声が会場の隅まで響き渡り、みんな黙り、期待の目で彼を見つめる。
「戦える者は国の東側へ。戦いを手伝える者や戦えない者は王宮へ避難してくれたまえ」
その言葉に静まった国民達は彼の指示に従い動き出す。
「フローレンス様。申し訳ないのですが、王宮へ行っていただけますか?」
その言葉にフローレンスは目を丸くする。前線では戦えないと言っても、魔王を倒した勇者のパーティーなのだから。
「負傷兵が来たら、この国の回復師と一緒に介抱をお願いします」
「嫌なのですが」
その言葉に今度はアレキサンダー王子がびっくりする。
「私は戦線の後方支援を行います。そこが、私の居場所です」
少女が身体を縮めながらフローレンスのお腹の音を表現して、国王や王子、それとその場にいなかった大人たちに話す。意識を取り戻したフローレンスを迎えた国民達は国王中心に王宮の庭でお祝いの食事会を開いた。
「素敵なお嬢さん」
魔王城に一番近い国「ニアメア王国」のアレキサンダー王子はしゃがんでその子どもと目を合わせる。少女はそのサファイアのような青く透き通る瞳を見て、目を輝けた。
「みんなが聞きたいという期待に応えることは素敵なことだと思うんだ。だけどね、誰かを傷つける言葉を、キミは使いたいかい?」
少女は首を何度も横に振った。それを見てアレキサンダー王子は喜んで少女の頭を撫でる。
「ごめんなさい、フローレンスさま」
「ううん、平気よ。だって、こんなに美味しい料理が食べられているのだもの」
「わたし、お料理いーーっぱい持ってくるね」
走っていく少女の背中に手を振るフローレンス。
「フローレンス様、国民を守っていただきありがとうございました。国を代表してお礼を申し上げます」
一緒に見送ったアレキサンダー王子が深々とフローレンスに対して頭を下げる。
「いえ、私は魔王討伐はギルガルドたちで私は・・・・・・」
「それについても個人としてお礼は言いたいですが・・・・・・私がお礼したいのは……」
最初、フローレンスは何が起きたのか分からなかった。急にアレキサンダー王子が耳を澄ませて、何かを聞こうとしていた。すると、フローレンスにも防具が擦れる音が聞こえ、それが徐々に近づいてくるのが分かった。その方角を見ると、軽装の兵士たちだった。彼らは見張り台から遠方を確認する見張り係だ。
「大変ですっ」
兵士はアレキサンダー王子を見つけると、残りの体力を振り絞って足もたどたどに走って来た。
「どうしたんだい?」
「魔王城にいた魔物たちの一部がこちらの国へ攻め込んできていますっ!!」
会場がざわつきはじめる。
手を取り合う恋人たち。
怖がる少女を抱きしめる母親。
心配な様子の老婆と彼女の背中を擦る老人。
「みんな、落ち着きたまえっ」
アレキサンダー王子の透き通った声が会場の隅まで響き渡り、みんな黙り、期待の目で彼を見つめる。
「戦える者は国の東側へ。戦いを手伝える者や戦えない者は王宮へ避難してくれたまえ」
その言葉に静まった国民達は彼の指示に従い動き出す。
「フローレンス様。申し訳ないのですが、王宮へ行っていただけますか?」
その言葉にフローレンスは目を丸くする。前線では戦えないと言っても、魔王を倒した勇者のパーティーなのだから。
「負傷兵が来たら、この国の回復師と一緒に介抱をお願いします」
「嫌なのですが」
その言葉に今度はアレキサンダー王子がびっくりする。
「私は戦線の後方支援を行います。そこが、私の居場所です」
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