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孤独な旅、歓迎のニアメア王国

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「そんな……」

 一人魔王城に残されたフローレンス。
 行きは四人だったが、帰りは一人になってしまった。
 
 彼女はひっそりと、来た道を帰った。
 帰り道には魔王が作った闇の元である障気が薄れ、困惑している動物型の魔物たちが暴れていた。

「……っ」

 フローレンスは一匹のサイのような大きな魔物と目が合ってしまった。

「……」

 その魔物はじーっとフローレンスを見つめ、フローレンスもその魔物から目を離せず、硬直していると、

「フオオオオオンッ」

 鼻息をして、その魔物は走り去っていった。それを見て、胸を撫でおろすフローレンス。彼女には敵意や殺気という物が皆無である。つまり俗にいう人畜無害の象徴と言っても過言ではない。なので、魔物であっても、感情で動く動物型の魔物に狙われることがない。城にいた人間型を中心とした知性の高い魔物は、魔王の指示に従い、すでに勇者たちの倒されていたのだ。

(良かった……)

 フローレンスは魔物であっても、戦いは極力避けるべきだと勇者であるギルガルドたちに伝えたが、「悪は滅びるべきだ」と言って、ギルガルド達は経験値や素材集めのために魔物の多くを疲れるまで討伐した。無益な殺傷は心苦しく、いけないことだと思いつつ、彼女を襲うような魔物は全て討伐してくれてあったことにフローレンスは感謝してしまった。

 体力も無く、口に入れられるものは水だけ。
 
 それでも、日ごろの行いが良いおかげか、フローレンスはなんとか無事に近くの国ニアメアまで避難できた。

「フローレンス様っ!? みんなっ、フローレンス様が帰って来たぞっ!!」

 第一発見者が叫ぶと、多くの国民が彼女の元へとやって来て、次々に彼女の顔を一目拝もうとする。フローレンスもみんなの期待に応えて安心させようと笑顔をつくるけれど、疲労困憊で気絶してしまった。

「フローレンス様っ!? フローレンス様っ」

 右の頬を叩かれたフローレンスは今度は左の頬を差し出す。

「良かった、まだ生きていらっしゃるぞ、急いで回復師を呼べっ」

「おうっ、わかった」

 フローレンスを支えていた男の指示で、一人の男が教会の方へと急いで走って行く。

「フローレンスさまっ、死んじゃいやだよぉ…………あっ」

 泣きべそをかいた少女がフローレンスの服にしがみつくと、フローレンスは意識がないにも関わらず、その少女の頭を撫でた。すると、少女は泣くのを止めて、その温かい優しさに癒されていく。

「おい、王様たちにも報告だっ。聖女様が帰ってきたってな」

「あいよ」

 そんな意識を失っても悲しむ子どものために力を使うフローレンスを見て、温かい気持ちになった人々は笑顔でフローレンスを見守った。

 ぎゅうううううううっ

 その間抜けな音にみんな目を丸くする。発信源は……フローレンスのお腹だ。

「それと、王様にこの国一番のうんめぇ料理準備するように伝えな」

 




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