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魔王討伐
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いつも闇に包まれている魔王城。
決して光が届かないと呼ばれていたその場所に光が差した。
「ぐおおおおっ」
魔王の第三の心の臓には勇者ギルガルドの聖剣エクスカリバーが刺さっており、闇の空が割け、青空と眩しい太陽が顔をのぞかせた。魔物に居場所を奪われ、魔物の餌か痛ぶる玩具としか生きていられなかった魔王城の周りに潜む小動物たちは草むらなどから、祖先が当たり前のように見ていたであろう明るい空を興味津々に見ていた。彼らは鼻をひくひくさせて興奮する。動物の本能でわかったのだ。これから明るい未来が待っていることを―――
「お前さえ・・・・・・いなければ」
目の焦点が合わない魔王は勇者ギルガルドではなく遠くをぼんやりと見て倒れ込んだ。
「やったなっ、ギルガルド」
「ああっ、ガードナーありがとう」
勇者ギルガルドが魔王から剣を抜き、鞘に剣を収めようとしていると近くにいた防御と遠距離攻撃のスペシャリストであり、盾と弓の名手のガードナーが熱い抱擁を交わす。お互い傷つき汚れた防具を付けていたけれど、彼らの流した汗を含め、見ていて微笑ましい男たちの姿だった。
ギルガルドの攻撃が超近接型だとすれば、ガードナーは近距離から中距離を担っていて、後方支援担当を守りながらも、時に最前線のギルガルドを守る。そして、敵がギルガルドに夢中になっている時、相手の急所を射抜くのだ。彼の一矢が魔王の第二の心の臓を貫いたのだから。
「ふんっ、私の全てを見通す神の眼のおかげで心の臓の秘密を探知したおかげでしょ」
後方にいた魔法使いのマリリーンがホコリを被ったぶかぶかのローブを引きずりながら、二人に近づいていく。
「はははっ、そうだな。マリリーンの未来予知も火炎魔法や星魔法も魔王の障壁を壊すのに助かったよ」
彼女は少女にして地・水・風・火の四大魔法の全てを操ることができ、新たに未来予知や星魔法も生み出した天才魔法使い。魔王も勇者の圧倒的な物理攻撃に対抗する魔の障壁を創り出したが、彼女の繰り出した魔法攻撃及び、彼女が勇者の剣に纏わせた魔法により、簡単に壊すことができた。
「泣いてるじゃない、ギルガルド」
「お前だって、マリリーン」
「俺も目頭が熱いぜ」
三人はお互いをたたえ合いながら、勝利の喜びを分かち合う。死と隣り合う中でお互いに命を預け、困難を乗り越えた三人の絆はとても強固だった。しかし、この勇者のパーティーは三人ではない。もう一人―――
「みんな~~~っ、おめでとうっ!!」
遥か後方より三人と同じパーティーの少女のフローレンスが三人を祝福しに小走りでやって来た。汚れが一切ない純白の服を着た彼女の目は三人と同じように嬉し泣きをした笑顔だった。その姿は今まで死闘を繰り広げボロボロになった魔王城で一人不釣り合いであり、戦闘とは無関係の天使のようだった。
「んっ、どうしたの?みんな」
少女がやってくると、心の底から喜んでいた他の三人の顔が曇った。
決して光が届かないと呼ばれていたその場所に光が差した。
「ぐおおおおっ」
魔王の第三の心の臓には勇者ギルガルドの聖剣エクスカリバーが刺さっており、闇の空が割け、青空と眩しい太陽が顔をのぞかせた。魔物に居場所を奪われ、魔物の餌か痛ぶる玩具としか生きていられなかった魔王城の周りに潜む小動物たちは草むらなどから、祖先が当たり前のように見ていたであろう明るい空を興味津々に見ていた。彼らは鼻をひくひくさせて興奮する。動物の本能でわかったのだ。これから明るい未来が待っていることを―――
「お前さえ・・・・・・いなければ」
目の焦点が合わない魔王は勇者ギルガルドではなく遠くをぼんやりと見て倒れ込んだ。
「やったなっ、ギルガルド」
「ああっ、ガードナーありがとう」
勇者ギルガルドが魔王から剣を抜き、鞘に剣を収めようとしていると近くにいた防御と遠距離攻撃のスペシャリストであり、盾と弓の名手のガードナーが熱い抱擁を交わす。お互い傷つき汚れた防具を付けていたけれど、彼らの流した汗を含め、見ていて微笑ましい男たちの姿だった。
ギルガルドの攻撃が超近接型だとすれば、ガードナーは近距離から中距離を担っていて、後方支援担当を守りながらも、時に最前線のギルガルドを守る。そして、敵がギルガルドに夢中になっている時、相手の急所を射抜くのだ。彼の一矢が魔王の第二の心の臓を貫いたのだから。
「ふんっ、私の全てを見通す神の眼のおかげで心の臓の秘密を探知したおかげでしょ」
後方にいた魔法使いのマリリーンがホコリを被ったぶかぶかのローブを引きずりながら、二人に近づいていく。
「はははっ、そうだな。マリリーンの未来予知も火炎魔法や星魔法も魔王の障壁を壊すのに助かったよ」
彼女は少女にして地・水・風・火の四大魔法の全てを操ることができ、新たに未来予知や星魔法も生み出した天才魔法使い。魔王も勇者の圧倒的な物理攻撃に対抗する魔の障壁を創り出したが、彼女の繰り出した魔法攻撃及び、彼女が勇者の剣に纏わせた魔法により、簡単に壊すことができた。
「泣いてるじゃない、ギルガルド」
「お前だって、マリリーン」
「俺も目頭が熱いぜ」
三人はお互いをたたえ合いながら、勝利の喜びを分かち合う。死と隣り合う中でお互いに命を預け、困難を乗り越えた三人の絆はとても強固だった。しかし、この勇者のパーティーは三人ではない。もう一人―――
「みんな~~~っ、おめでとうっ!!」
遥か後方より三人と同じパーティーの少女のフローレンスが三人を祝福しに小走りでやって来た。汚れが一切ない純白の服を着た彼女の目は三人と同じように嬉し泣きをした笑顔だった。その姿は今まで死闘を繰り広げボロボロになった魔王城で一人不釣り合いであり、戦闘とは無関係の天使のようだった。
「んっ、どうしたの?みんな」
少女がやってくると、心の底から喜んでいた他の三人の顔が曇った。
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