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「ケロロ・・・ついに来たケロロ・・・」
この魔王城には悪の女王、メデューサがいる。
私を魔法少女にしてくれたカエルの妖精ケロピョンはとても震えている。
それもそのはず。メデューサと言えば目が合えば石化してしまうことで有名だが、髪の毛がヘビであることも有名だろう。つまり、ケロピョンは目が合う以前にカエルであるがゆえにヘビが怖いのだ。
「大丈夫だよ、ケロピョン」
私が撫でてあげると、ケロピョンはまだまだ不安な顔をしているけれど、少し落ち着いた。
「成長したね、マユちゃん」
「そうかな・・・えへへへっ」
ここまで、メデューサが派遣してきた悪の幹部をことごとく倒してきた私たち。最初は泣き出して逃げ出そうとしていた私。だけど、いつもケロピョンが「キミならできるっ」と励ましてくれた。学校でもダメダメの私は自分自身を信じられなかったけれど、ケロピョンのおかげで自分を信じることができて、凄い魔法だって使えるようになった。
「よしっ、キミなら大丈夫だ。だから、一人で行ってくるケロロ」
「ふぇっ!? ケロピョン」
ケロピョンは私と目を合わせようとしない。
「魔法の杖を盗み出した正義感のあったケロピョンはどこに行ったの?」
「ケロロン・・・っ」
「ねぇ、お願い、ケロピョン・・・一緒にメデューサを倒そうよ?」
「でも・・・結局ボクは逃げ出して、キミに頼るだけで何もできない腰抜けケロロ・・・」
ちらっとこちらを見たケロピョンは私の泣きそうな顔を見て、ケロピョンも切なそうな顔で本音を話してくれた。
「違うわ、だって。私はケロピョンが励ましてくれたから、私もここまでできたんだもん。ケロピョンがいなきゃ私はダメダメな私だったもん」
私はいつもケロピョンに励ましてもらったようにケロピョンを励ます。
「マユちゃん・・・」
「私・・・本当は不安なの・・・」
「マユちゃんならっ」
「違うの・・・」
「違うって・・・何だケロ?」
「私、メデューサを倒すのが怖いの・・・っ」
「えっ」
驚くケロピョン。やっぱり、私がメデューサを怖いと思っていると勘違いしていたようだ。
「メデューサを倒したら、ケロピョンは私の元から去っちゃうんでしょ」
私がケロピョンを見ると、ケロピョンは申し訳なさそうな顔をして、
「それはそうケロど・・・今のマユちゃんなら、友達だって・・・」
「ケロピョンに会ってから、クラスメイトとも友達になれたよ? でも、ケロピョンは私の親友じゃないっ。ケロピョンの代わりはいないもん・・・」
私はメデューサとの決戦前に泣きそうになってしまう。
「マユちゃん・・・」
ケロピョンを困らせたいわけじゃない。でも、皆がナイトメアを見ないためにケロピョンと別れるために戦うなんて私には・・・。
「マユちゃんっ!!」
ケロピョンは決心したように凄い目力で私を見て来た。
「ボクはどんなときでも、一生懸命で、誰かのために役に立ちたいって心の底から思える素敵な女の子だったから、契約を結んだ。そんなこと言う・・・マユちゃんなら友達じゃ・・・ないよ」
ケロピョンは泣いていた。
私はケロピョンが泣くところなんて初めて見て、わたしももらい泣きしてしまいそうになる。だけど、私は悪の女王を倒す魔法少女。今泣くわけにはいかない。
「私・・・間違っていた。だから、一緒にメデューサを倒そう、ケロピョン」
「うんっ!!」
私たちはきっと勝つ。そして、きっとお別れになる。
でも、この秋の大冒険を私は絶対に忘れない。
◇◇
「マユちゃん、なにそれ?」
「ケロピョン」
「ケロピョン?」
私はクラスの女友達のカヨちゃんとハロウィンの飾りつけを作っていた。
「うーん、鍋に入れる?」
魔女と言えば、カエルやイモリなどを鍋で煮込むシーンがある。カヨちゃんはそれを連想した様子で、私に提案してきた。
「ううん、私の肩に置くの」
「へぇー。じゃあ、私は血ノリとかつけようかな」
「あっ、いいじゃんそれ」
ハロウィンは自由だ。
日常ではありえないことも、ありえてしまう。
そう、非日常の魔法少女と同じくらいに。
Fin
この魔王城には悪の女王、メデューサがいる。
私を魔法少女にしてくれたカエルの妖精ケロピョンはとても震えている。
それもそのはず。メデューサと言えば目が合えば石化してしまうことで有名だが、髪の毛がヘビであることも有名だろう。つまり、ケロピョンは目が合う以前にカエルであるがゆえにヘビが怖いのだ。
「大丈夫だよ、ケロピョン」
私が撫でてあげると、ケロピョンはまだまだ不安な顔をしているけれど、少し落ち着いた。
「成長したね、マユちゃん」
「そうかな・・・えへへへっ」
ここまで、メデューサが派遣してきた悪の幹部をことごとく倒してきた私たち。最初は泣き出して逃げ出そうとしていた私。だけど、いつもケロピョンが「キミならできるっ」と励ましてくれた。学校でもダメダメの私は自分自身を信じられなかったけれど、ケロピョンのおかげで自分を信じることができて、凄い魔法だって使えるようになった。
「よしっ、キミなら大丈夫だ。だから、一人で行ってくるケロロ」
「ふぇっ!? ケロピョン」
ケロピョンは私と目を合わせようとしない。
「魔法の杖を盗み出した正義感のあったケロピョンはどこに行ったの?」
「ケロロン・・・っ」
「ねぇ、お願い、ケロピョン・・・一緒にメデューサを倒そうよ?」
「でも・・・結局ボクは逃げ出して、キミに頼るだけで何もできない腰抜けケロロ・・・」
ちらっとこちらを見たケロピョンは私の泣きそうな顔を見て、ケロピョンも切なそうな顔で本音を話してくれた。
「違うわ、だって。私はケロピョンが励ましてくれたから、私もここまでできたんだもん。ケロピョンがいなきゃ私はダメダメな私だったもん」
私はいつもケロピョンに励ましてもらったようにケロピョンを励ます。
「マユちゃん・・・」
「私・・・本当は不安なの・・・」
「マユちゃんならっ」
「違うの・・・」
「違うって・・・何だケロ?」
「私、メデューサを倒すのが怖いの・・・っ」
「えっ」
驚くケロピョン。やっぱり、私がメデューサを怖いと思っていると勘違いしていたようだ。
「メデューサを倒したら、ケロピョンは私の元から去っちゃうんでしょ」
私がケロピョンを見ると、ケロピョンは申し訳なさそうな顔をして、
「それはそうケロど・・・今のマユちゃんなら、友達だって・・・」
「ケロピョンに会ってから、クラスメイトとも友達になれたよ? でも、ケロピョンは私の親友じゃないっ。ケロピョンの代わりはいないもん・・・」
私はメデューサとの決戦前に泣きそうになってしまう。
「マユちゃん・・・」
ケロピョンを困らせたいわけじゃない。でも、皆がナイトメアを見ないためにケロピョンと別れるために戦うなんて私には・・・。
「マユちゃんっ!!」
ケロピョンは決心したように凄い目力で私を見て来た。
「ボクはどんなときでも、一生懸命で、誰かのために役に立ちたいって心の底から思える素敵な女の子だったから、契約を結んだ。そんなこと言う・・・マユちゃんなら友達じゃ・・・ないよ」
ケロピョンは泣いていた。
私はケロピョンが泣くところなんて初めて見て、わたしももらい泣きしてしまいそうになる。だけど、私は悪の女王を倒す魔法少女。今泣くわけにはいかない。
「私・・・間違っていた。だから、一緒にメデューサを倒そう、ケロピョン」
「うんっ!!」
私たちはきっと勝つ。そして、きっとお別れになる。
でも、この秋の大冒険を私は絶対に忘れない。
◇◇
「マユちゃん、なにそれ?」
「ケロピョン」
「ケロピョン?」
私はクラスの女友達のカヨちゃんとハロウィンの飾りつけを作っていた。
「うーん、鍋に入れる?」
魔女と言えば、カエルやイモリなどを鍋で煮込むシーンがある。カヨちゃんはそれを連想した様子で、私に提案してきた。
「ううん、私の肩に置くの」
「へぇー。じゃあ、私は血ノリとかつけようかな」
「あっ、いいじゃんそれ」
ハロウィンは自由だ。
日常ではありえないことも、ありえてしまう。
そう、非日常の魔法少女と同じくらいに。
Fin
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