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「えっ?」

 先ほどまで勇敢に戦っていたエリオットが笑顔で逃げると言うから、レイラはキョトンとしながら、引っ張られるがままに広間に来た道へ向かう。

「マテエエエエエエエッッ」

 マルガリータだった物が叫びながら、追ってくる。

「アナタダケ・・・ズルイッ」

「コッチヘキナサイヨ・・・」

 ヘドロのようなのボロネーゼだった物とフランケンシュタインのようなデネブだった物もその後を追う。
 でかさがある3匹だったが、まだその身体が馴染んでいない様子で動きは鈍い。全力で走れば、小柄なレイラたちでもなんとか距離を維持できていた。

「なんで逃げるの?」

 レイラは家族が殺されずに済むのにホッとしつつも、自身にある疑問を解消したくて仕方なかった。

「だって、聖剣カーテナルは魔王の子に刺しちゃったからね」

「だったら、抜けば良かったんじゃ」

「ダメさ。聖剣でもキュラドを完全に殺すことはできない。いや、できたとしても今のボクには無理だ」

「ナニイチャツイテンノヨ!!!!」

 デネブだった物がスピードを上げる。
 デネブはレイラのように男の子と手を繋ぐことなく、怪物になってしまった。もう、その手は男性の手を握りつぶすしかできなくなっていた。

「アバババババ・・・ッ」

 ボロネーゼだった物は負けじとスピードを上げる。
 男の子と話をしたいと望んでいたボロネーゼだったが、その前に言葉と理性を失ってしまったようだ。

 どんどん魔物であることが馴染んでいる三人をレイラは次第に哀れみよりも、恐怖が上回って来た。

「もうだめ・・・」

 次第に人間を辞めた3匹のスピードが加速していく。運動神経が良かったレイラでもそのスピードを維持して走るのは限界に近づいていた。

「もうすぐだよ・・・っ。外には最強の味方がいるんだっ」

 エリオットも余裕の顔をしているけれど、汗をかいていた。

「・・・ええっ」

 エリオットの励ましの言葉を信じてレイラもスピードを上げる。なぜなら、目の前に外の光が見えてきたからだ。最後の力を振り絞って光を向かって走る。

 今までも見て見ぬふりをしていた殺意。
 レイラは流石に背中に突き刺さる様な殺意を感じずにはいられなかった。

「「うおおおおおおおっ」」

 エリオットとレイラは一生懸命走る。
 マルガリータたちが人間を超えた魔物になったように、レイラも全力のさらに全力で走ることで、今までの悲しい自分を超えて、新しい自分へと光明を掴みかけていた。

「「はぁっ!!」」

 外へと飛び出したエリオットとレイラ。
 太陽の白い光が完走した二人を包みこむように迎え入れた。


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