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「えーっと・・・私といても楽しくないと思いますよ・・・と言いますか、つまらないです」

「いや、お前は面白い」

 キュラドは自分のアゴを触りながら、再びレイラを見定めるようにニヤニヤして見る。
 レイラがその自信たっぷりな彼の赤い瞳を見ていると心がざわついて、目を再び逸らした。けれど、先ほどまでの強制的な心のざわつきではなかったことにレイラは気づく余裕は無かった。

「ふむふむ・・・さしずめそのペンダントの力と言うところか・・・」

 キュラドは原因を分析する。
 それを見て、思わずレイラはペンダントを握り締める。レイラとしては、キュラドに分析されて対処方法があれば、何をされるかわからないと思ったからだ。

「それはどこで手に入れたのだ?娘。盗んだか?」

 平気で人を傷つけるような失礼なことを言うキュラド。確かにこの場に相応しくない地味な格好をしていたとはいえ、それはあんまりだと思ったレイラは5秒前まで余計な情報を与えまいと思っていたことなんて忘れてしまった。

「母の・・・形見よ・・・」

「ほほー、そんな高尚なものをお持ちとはさぞ、博識かもしくは、身分の高い貴族であったのであろう」

「・・・」

 レイラは自分の母親が娼婦だと言うことを言わなかった。そんなに高価なものだとすれば、金持ちの男に貰ったのかもしれない。ただ、今まで蔑まされていた母親を褒めて貰えた気がして嬉しくなった。

「さて・・・娘」

「娘じゃな・・・」

 レイラはデネブたちが寝た後に童話などを読み漁っていた時期がある。ただ、デネブ達が本が嫌いと言うのと、夜中に本を読むと油や蝋が勿体ないとマルガリータに言われてできなくなってしまったが、その本の中に名前を伝えてしまうと、全てを支配する魔物がいると書かれていたのを思い出した。

 目の前にいるのは自称魔王の子。
 むやみに名前を教えてはいけないと慌てて喋るのを止める。

「では何という名前なのだ?」

 赤い瞳が綺麗に光る。
 すると、心がざわつきはじめ、唇が自分の名前を告げようと動こうとする。

「んぐ・・・っ」

「我は名乗ったと言うのに貴様は名乗らないのは無礼であろう?素直になれ・・・娘。素直なお主は素敵だぞ?」

 王子は余裕の笑みを浮かべる。
 全てを見透かしたような瞳。その言葉が本心であることはレイラにも伝わったけれど、本心だからと言って、キュラドが騙そうとしていないわけでもないこともレイラにはわかった。

「なぁ、お前。娘の名前はなんというのだったか?」

 マルガリータに話しかけるキュラド。
 レイラは止めようと腕を伸ばした。
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