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『レイラ・・・レイラ・・・』

 レイラが眠っていると呼ばれる声に気づく。心地よく眠っていたので、もう三人が舞踏会から帰ってきたのかとちょっぴりがっかりしながら、身体を起こし重い瞼を擦る。

『レイラ・・・』

「はぁ~い?」

 レイラはようやくその声が聞き慣れた声でないことに気づく。

「だれっ」

 レイラは目を覚ますと、目の前に神々しい顔の見えない女性がいた。

『レイラ・・・ようやく気付いたのですね。今日は貴女に伝えることがあったので、ここに来ました」

 質問を無視してその女性は話を続ける。レイラは薄いマクラをぎゅっと胸に抱えて警戒する。

『そうですね・・・私は・・・貴女の母親のような存在です』

「えっ、お母さんなのっ」

 レイラは枕をどけて、その女性に近づこうとする。

『レイラ聞きなさい』

 しかし、その女性が手でレイラを制すと、レイラは自然と行きたい気が起きなくなった。

『明日必ず舞踏会に行くのです』

 レイラの心は拒絶反応を起こした。

「むっ、無理よ」

 せっかく忘れてたお城へ行くことへの憧れ。レイラはそん気持ちに蓋をしたのに再びこじ開けられた気がした。

「だって、お母様・・・じゃなくて、マルガリータ様も妹たちもみんな嫌そうな顔がするもの。それって私も・・・悲しいし、ほらっ・・・誰も幸せにならないじゃない?」

『いいえ、行くのです』

「どうやってよ!」

『そろそろ彼女達に言えば良いと言ってくれるはずです』

「ほんとっ!?・・・って、そんなこれはあれね、夢ね」

 レイラは自分の都合のいい話過ぎて、夢だと悟った。

『違いますよ。夢ではありません』

 女性は淡々と否定する。

『なら、マルガリータにこう言いなさい。「私が行けば、2人が際立つ」とそう言えば必ず連れて行ってもらえます』

「だから、そこまでして私が行ったって・・・」

 いつもの3人の顔、馬車の運転手の顔。
 もっと多くの人に見られて、哀れみの顔を向けられるのが怖いレイラは悲しい顔をする。

『貴女は幸せを逃すおつもりですか?』

「えっ?」

『貴女は王子と結婚します』

 レイラはびっくりした。
 
 嬉しい。

 その言葉を受けて、素直に喜んだレイラ。
 しかし、そんな幸せを今までの境遇だったレイラがはいそうですかと、二つ返事で納得できるわけもなく、自分の妄想だと決めつけ、自分の欲を恥じて気持ちを紛らわせようとした。


『貴女も王子もそして国民も・・・世界も幸せになる。そんな未来を捨ててしまうのですか?』

「私は・・・」

「ただいま、帰ったわよっ!!!!!あぁ、もうっイライラするっ!!!!!」

 不機嫌そうなデネブの声が聞こえてレイラは目を覚ました。

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