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「うふふふっ」

「あはははっ」

 静かな森の奥。
 太い針葉樹林が多く生えている森の中に、ほとんど木々が生えておらず、太陽の光がサンサンと差し込む場所で仲良くじゃれ合う姉妹。

「ちょっと、待ってよ。ボルーネーゼってば」

 赤毛でオカッパ頭。肩幅が広く、服の袖を捲った腕は遠くからみても逞しく、毛並みも豊かな少女の名前はデネブ。水色のワンピースがはちきれんばかりに元気に追いかける。

「いやよ、姉さん。いやいやん」

 同じく赤毛で三つ編みにしている妹のボルネーゼ。揺らすのは三つ編みだけではなく、鼻水も揺らしている。
 いつ鼻水を擦り付けても目立たないと気に入っている黄色のワンピースのスカートをひらひらさせて逃げている。

 久々に晴れた太陽の下、年頃の二人の少女は童心を忘れない妖精のように楽しそうに追いかけっこをしたり、流れる川で水をかけあっている。

「ふふっ」

 それを日差しが当たる中で唯一元気に育っている若木の日陰で読書をするのは二人の母親マルガリータ。
 当然、髪の色は赤色だけど、加齢のせいか髪は潤いがなく、縮れて白髪交じりだ。
 顔も苦労を重ねた顔をしているけれど、二人の微笑ましい声を聞いて、愛しい二人の娘をちらっと見て、幸せを噛みしめている。

 

 

 あぁ、なんと幸せな家族だろう!!!!!

 



 そう考えるあなたは、きっと豊かな生活をしているのだろう。
 パパやママ、もしくはあなたを養ってくれている家族や施設の人に感謝しなさい。


「ふぅ・・・・・・」

 この森で唯一建てられた家の傍で、一生懸命洗濯物を運んでいる年頃な女の子。
 そう、この子がこの物語の主人公―――レイラだ。
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