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「・・・っ」

 目が覚めると、頭が痛かった。
 ぼやける視界がクリアになっていくと、私はどこかの寝室に寝ていたようだ。とても、高級なベッド。ふかふかで節々が痛い私を優しく包み込んでくれている。それに・・・

「い・い・か・おり・・・」

 貿易もしていたから分かる。こんなふわふわな羽毛? はなかなか手に入らない手に入るとすればそれは―――

「目が覚めたかい?」

 どこかで聞いた懐かしい声だったけれど、あんなことがあった私は無防備な状態を晒したくなかった。でも、痛みと疲労? のせいで動かせたのは首と視線だけだった。

「あなたは・・・」

 私は名前を知っている。

「シーザーです」

 そう彼は元婚約者のカイザーの弟、第二王子のシーザーだった。私は私に無理やり毒を飲ませたカイザーの姿を思い出し、身構えようとすると、手に力が入り、私の左手は大きくて逞しい彼の手に優しく包まれていた。

「あぁ、無理をしないで。そうだ、起きたら水分を取るようにと医師から言われているんだ」

 そう言って彼はテーブルに置いてあった吸い飲みを私の口に近づける。けれど、その先端があの時のお茶用のポットの形に似ていたので、条件反射で私は窓側を向いてしまった。ちらっと映ったシーザーの顔は少し寂しそうだった。

「兄が・・・貴方に大変失礼なことを致しました。本当に申し訳ございません」

 椅子が引きずられた音と服が擦れる音がしたので、きっとシーザーは立ったのだろう。でも、私は怖くて彼を見れなかった。

(・・・・・・ん?)

 彼が動くと布団にも感じたいい香りがした気がした。

「お詫びしても許されるべきことではないかと思います。しかし、兄と貴女の妹君はあの後お怒りになった父上によって国外追放になりました」

 国外追放?

 私は恐る恐るシーザーを見ると、彼は深々と頭を下げていて、私と目が合うと安堵した顔になり、その顔を見ていると怯えた気持ちが少し収まった。

「本来であれば、死刑・・・ですが、両家の両親が減刑を望み、あなたもきっとそう望むであろうと言うことで、そうさせていただきました。二人は二度とこの国の大地を踏むことを許されておりませんし、もし仮にあなたが国外に出た時に何かするようであれば、即刻首を刎ねるよう父上が我国全土に周知したので大丈夫だと思います」

 シーザーは再びイスに座り、私の左手を大事そうに両手で握り締め、

「それでも足りなければ、僕が必ず、この身に代えて、いつでも貴女をお守りします」

 と真剣なまなざしで言ってくれた。
 
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