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 ガチャッ

 私は恐る恐る玄関の扉を開ける。
 今までは入れ替わったといはいえ、誰に影響を与えることなく妄想に近い世界だったけれど、扉を開けると言うことは、この流星くんの身体で社会とつながりを持つということだ。

 扉をゆっくり開けると、私と同じように相手の顔色を伺おうとしていた由衣ちゃんがいた。

「ねぇ・・・大丈夫?・・・なんだか、顔が青ざめているよ・・・?」

 私の顔を心配そうに見る由衣ちゃん。
 私はそこまで身長が大きくなかったけれど、流星くんは高身長なので由衣ちゃんの上目遣いが私を見ている。

「あはは・・・っ、大丈夫だよ。ありがと」

 私はやせ我慢をして笑顔を見せる。

「・・・」

「・・・」

 お互い黙り合って見つめる私たち。

(何か喋って欲しいような、変な質問はしないでほしいような・・・)

 流星くんがどんな子か探りを入れたいけれど、今の私が流星くんであることを探ってほしくないジレンマ。

「あっ、そろそろ行かないとっ、行こっ流星」

「えっ、あっ、ちょっと・・・」

 私は手を引かれる。
 綺麗ですべすべな手。
 きっと、ハンドクリームとかも塗っていないだろう少女の手。

 私は自分の身体のことや、その身体に入っている流星くんの心のこと、会社のことなどを考えて戸惑ったけれど、覚悟を決めてその手に委ねることにした。

(そうよ、これは夢かもしれないし、夢じゃなくても今の私にできることなんて・・・学校に行くくらいしかないじゃない!!)

 私は手を引っ張って先に行く由衣ちゃんに追いついて、隣を歩こうとする。

「あっ、流星。カギはしなきゃダメでしょ」

「あっ、そうだね」

「ふふっ、流星のおっちょこちょい」

 その嬉しそうな由衣ちゃんの顔がかわいいのと、ミスをしてしまった恥ずかしさで顔が暑くなる。
 私はゆっくり由衣ちゃんの手を放して、カバンを脇に挟み、左右のポケットに手を突っ込んでカギを探す。

(あっ、あった)

 私は左ポケットにあったカギでドアにカギをかけた。

(なんだなんだ、流星くんもリア充じゃん)

 私はそんなことを思いながら、ドアノブを回してカギがかかっていることを確認すると、ノブは左右のいずれにもほぼ回らない。

「よしっ・・・お待たせ」

「なんか、今日の流星。へんっ」

 私はドキッとした。
 彼女がかわいいことはもう言わなくてもいいだろう。普通の男の子であれば心を打ち抜くかもしれないかわいい笑顔。だが、今回はそこじゃない、由衣ちゃんが言った「へん」という言葉だ。
 由衣ちゃんはニヤニヤ私のことを見ているけれど、この子は小悪魔系なのだろうか。それとも、どうして入れ替わったかを知っているのか―――

 私は不安に包まれた。

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