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「おお、神よ。我らに恵を与えんことを」

 大勢が見守る中、教会の十字架の前で私が祈ると、輝かしい光が私に集まる。

「おおっ・・・っ」

 後ろにいる王族や貴族から驚きの声が聞こえる。

『お勤めご苦労じゃ、エミリー』

 神様が私の脳内にやって来た。
 ザ・ゴッドと言う感じで、白装束にヒゲを生やしたお爺ちゃんだ。
 この装束はトガというらしくダボダボの布を纏った例のアレだ。

(神様?ご苦労様って私の前世では、ご苦労様って、あなたが無能だから苦労したでしょって意味も込められているって意味もあるらしいですよ?)

『そんな捻くれた言い方をすると、わし、泣いちゃうぞ?』

 自分の人差し指と人差し指をくっつけたり放したり、もじもじしている。

(ふふふっ、ごめんなさい。私ってもともとラフな性格なのに、転生したら聖女様、聖女様って言ってくるから、神様の前でしか甘えられないの・・・だから、許して)

『そんなことを、お前さんみたいなめんこい女の子に言われたら、わしだって・・・許しちゃうぴょん』

 片足を上げて、胸のあたりでグータッチのポーズ。通称うさぎさんのポーズを取る神様。ウインクに舌なんか出している。

(・・・)

『あっ、はいっ、すいません。調子乗りました。いつものでーす、どうぞ』

 私が目を開けると、周りにはたくさんのパンと水とワインがあった。

(ありがとうございます、神様)

 私はもう一度目を閉じて、お礼を言う。親しき中にも礼儀ありって奴だ。

『呼んだっ!?』

 私は何か聞こえた気がしたけれど、目を開ける。

「すごい・・・っ」

 聖女としての御業を見て、みんなが口々に奇跡だと言う。
 私もみんなが喜んでくれて嬉しい。

「これは・・・決まりですな」

「あぁ・・・決まりだ」

(ふぅ、ようやく聖女として正式に認められるのね)

 今まで、たくさんの町の人を救ってきた。そして、今日、ようやく王様や有識者などの前でお披露目できたというわけだ。

「これで、認めていただけま・・・」

 私がドヤ顔で、髪をたくし上げる。

「魔女ですな」

「へっ?」

 頬が落ち、片メガネを上下にしながら、嫌らしい笑みを浮かべるお爺さん。
 偏見かもしれないけれど、私に敵意を向けているから言わせてほしい。
 いかにも、嫌な人だ。

「魔女狩りを決行しましょう」

「ちょっと、ちょっと・・・」

 私は他の人に同調を求めるように顔を見るけれど、みんなは私と目を合わせることはなく、怖い顔をしていた。

「あれれれ・・・」

 私はもう一度、目を閉じて、ひとまず神様と相談しようと思った。
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