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「ええ・・・聞かせて」
塩入さんは涙を拭う。
すぐ泣いてしまうからか、化粧もほとんどせず、涙でキラキラしている塩入さんを不謹慎にもきれいだと見惚れてしまった。
「えっとね・・・僕、あの時びっくりしたんだ。あんなことが起きると思わなくて・・・」
「うん」
我ながら拙い言い方だけれど、率直な気持ちだ。それに塩入さんは相槌をうってくれる。
「それで・・・もしかしたら、僕は願ってしまったかもしれないんだ・・・」
「うん」
支離滅裂、時系列滅裂。言いたいけれど、言いたくない。だって、ドクターに話そうとしていたことを気になっていた女性に言うのだから。嫌われたくないけれど、自分の本心を理解してほしい。
僕の心は矛盾だらけだ。
「山田くんが・・・不幸になれって・・・そしたら、黒いフードの被った女の子が見えて、すぐに消えて・・・」
「嘘でしょ・・・」
びっくりしている塩入さん。
「でも、事実なんだ。3人を見送ったとき、確かに4人いたように見えたんだ」
頭がおかしいと思われている・・・そう思った時だった。
「私も・・・コースターに乗るときに見たの、その人・・・」
「えっ?」
詳しく聞くと、彼女もジェットコースターは嫌いだったらしい。
そして、乗る直前躊躇していると、橘さんが山田くんと隣り合ってジェットコースターに乗ったそうだ。その時に、同じと思われる少女が自分の前にいた気がしたらしいが、僕と同じで目を擦って瞬きすると消えていたそうだ。
「事故の瞬間、乗っていたコースターがガクンってなって目を閉じたら、肉と骨が裂けるような音が良く聞こえたの。風の音がうるさかったけれど、その音が鮮明に覚えているの・・・そして、山田くんの顔が・・・」
僕はそれ以上聞けなかったけれど、白目をむいて、舌を出した山田くんの顔が180度回転してこちらを見ている姿が想像できて、ぞっとした。
話を続ける中で、やはりその女の子を不思議に思った僕らはネットで同じようなことを経験した人がいないか検索した。けれど、残念ながらヒットしなかったので、そういったことに詳しい考古学の大学教授の元へ訪ねた。学部が違う僕らだったけど、教授はニュースで僕らのことを知っており、話を聞いてくれて、ある本を渡してくれた。
僕と塩入さんはさっそく本を一緒に読んでいくと、
「これって・・・」
塩入さんが指を差す。
「うん・・・っ」
そこに書かれていたのは中部地方に伝わる話で、絶叫マシーンに乗せられたくないのに乗せられた人、乗らずに嫌な顔をされた人たちの怨念が死神を生み出したと書かれていた。
「いいかい?君たち」
教授は手を組んで言う。
「現代にだって、呪いは存在する」
その言葉はそれぞれに罪悪感を抱えていた僕と塩入さんの心をぎゅっと握り締めた。
「けれど、これだけは言っておく。君たちが悪いわけじゃない。負の感情を抱えることは理性的生物が生きるためには必要で自然な機能だ。それよりも厄介なのはその死神、多くの人々の負の感情の集合体。理性的ではなく、無差別的に罪を犯す存在だ」
教授は窓の向こうを向いた。
「墓荒らしや肝試しもそうだが、スリルを味わいたいのは私にもわかる。しかし、不用意に死者をからかったり、触れたくない者を巻き込むことで負を世界にばらまかないでほしいものだ」
僕ら以上にそういった非日常に触れる機会が多そうな教授にも似たようなあったのだろうか。
そう言って、教授は遠い目をしていた。
塩入さんは涙を拭う。
すぐ泣いてしまうからか、化粧もほとんどせず、涙でキラキラしている塩入さんを不謹慎にもきれいだと見惚れてしまった。
「えっとね・・・僕、あの時びっくりしたんだ。あんなことが起きると思わなくて・・・」
「うん」
我ながら拙い言い方だけれど、率直な気持ちだ。それに塩入さんは相槌をうってくれる。
「それで・・・もしかしたら、僕は願ってしまったかもしれないんだ・・・」
「うん」
支離滅裂、時系列滅裂。言いたいけれど、言いたくない。だって、ドクターに話そうとしていたことを気になっていた女性に言うのだから。嫌われたくないけれど、自分の本心を理解してほしい。
僕の心は矛盾だらけだ。
「山田くんが・・・不幸になれって・・・そしたら、黒いフードの被った女の子が見えて、すぐに消えて・・・」
「嘘でしょ・・・」
びっくりしている塩入さん。
「でも、事実なんだ。3人を見送ったとき、確かに4人いたように見えたんだ」
頭がおかしいと思われている・・・そう思った時だった。
「私も・・・コースターに乗るときに見たの、その人・・・」
「えっ?」
詳しく聞くと、彼女もジェットコースターは嫌いだったらしい。
そして、乗る直前躊躇していると、橘さんが山田くんと隣り合ってジェットコースターに乗ったそうだ。その時に、同じと思われる少女が自分の前にいた気がしたらしいが、僕と同じで目を擦って瞬きすると消えていたそうだ。
「事故の瞬間、乗っていたコースターがガクンってなって目を閉じたら、肉と骨が裂けるような音が良く聞こえたの。風の音がうるさかったけれど、その音が鮮明に覚えているの・・・そして、山田くんの顔が・・・」
僕はそれ以上聞けなかったけれど、白目をむいて、舌を出した山田くんの顔が180度回転してこちらを見ている姿が想像できて、ぞっとした。
話を続ける中で、やはりその女の子を不思議に思った僕らはネットで同じようなことを経験した人がいないか検索した。けれど、残念ながらヒットしなかったので、そういったことに詳しい考古学の大学教授の元へ訪ねた。学部が違う僕らだったけど、教授はニュースで僕らのことを知っており、話を聞いてくれて、ある本を渡してくれた。
僕と塩入さんはさっそく本を一緒に読んでいくと、
「これって・・・」
塩入さんが指を差す。
「うん・・・っ」
そこに書かれていたのは中部地方に伝わる話で、絶叫マシーンに乗せられたくないのに乗せられた人、乗らずに嫌な顔をされた人たちの怨念が死神を生み出したと書かれていた。
「いいかい?君たち」
教授は手を組んで言う。
「現代にだって、呪いは存在する」
その言葉はそれぞれに罪悪感を抱えていた僕と塩入さんの心をぎゅっと握り締めた。
「けれど、これだけは言っておく。君たちが悪いわけじゃない。負の感情を抱えることは理性的生物が生きるためには必要で自然な機能だ。それよりも厄介なのはその死神、多くの人々の負の感情の集合体。理性的ではなく、無差別的に罪を犯す存在だ」
教授は窓の向こうを向いた。
「墓荒らしや肝試しもそうだが、スリルを味わいたいのは私にもわかる。しかし、不用意に死者をからかったり、触れたくない者を巻き込むことで負を世界にばらまかないでほしいものだ」
僕ら以上にそういった非日常に触れる機会が多そうな教授にも似たようなあったのだろうか。
そう言って、教授は遠い目をしていた。
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