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オニのツノ
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むかし、むかし。
オニがまだ優しかったころのお話。
「あっ、そろそろ帰らないと」
赤オニくんはかくれんぼをしている最中に用事があったのを思い出しました。
周りを見渡すけれど、みんながどこに隠れているかわかりません。
大声を出して、帰ると宣言してももしかしたら、聞こえないオニもいるかもしれません。
「んん~~~っ」
『ボク、今日は用事があるから帰るね』
赤オニくんが念じると、赤オニくんのツノから念じた気持ちが他のオニたちのツノに届きます。
『はいよ』
『うん、バイバイ』
『まった、ねぇ~』
みんなに伝わったのを確認して赤オニくんは帰りました。
そう、オニたちのツノにはテレパシーを使える重要な役割を担っていたのです。
『ん~、逆に言葉とか感じとか覚えたりするの面倒くさくない?』
『たしかに~』
『テレパシーだけでいいじゃん』
『そうだね』
『りょ』
『り』
『・・・』
『・・・』
次第にオニたちは言葉を忘れていき、ツノのテレパシーだけで会話をするようになりました。
そうして、オニたちが言葉をほとんど忘れた、ある日。
ツノがないオニたちが生まれるようになってしまいました。
『なぁ、聞いているのか!!』
ツノのないオニは答えません。
『おいっ、おいっ!!!」
「がああっ」
「うわあっ」
次第にテレパシーが使えるオニと使えないオニが出てきました。
ツノのないオニは、力がありません。
ツノのないオニは、寿命が短いです。
ツノのないオニは、自己中心的でした。
オニたちはツノのないオニたちを追い出しました。
ツノのないオニたちはか弱かったけれど、学習意欲がありました。
文字を生み出し、忘れてしまいそうなことは書いて、思い返したり、人に教えたりすることができるようになりました。
ツノのないオニたちはか弱かったけれど、手先が器用でした。
様々な道具を作って、暮らしを豊かにしていきました。
ツノのないオニたちはか弱かったけれど、野心がありました。
子孫にツノのあるオニたちは怖くて、恐ろしい奴らだと伝え、鬼ヶ島には多くの財宝や、おいしい果物があることを伝えました。
ツノのあるオニたちはそんなことも知らずに、のんきに遊んで、お酒を飲んで、ご飯を食べて楽しく暮らしていました。
でも、追い出したオニをいじめようとは思いません。
だって、自己中心で自分ばかりになっていても、同じオニだから。
ときどき、届くか届かないかわからないテレパシーを毎日送ります。
『おい、みんな。元気にしているか?』
『・・・』
『・・・』
けれど返事は来ません。
でも、いつか―――
オニがまだ優しかったころのお話。
「あっ、そろそろ帰らないと」
赤オニくんはかくれんぼをしている最中に用事があったのを思い出しました。
周りを見渡すけれど、みんながどこに隠れているかわかりません。
大声を出して、帰ると宣言してももしかしたら、聞こえないオニもいるかもしれません。
「んん~~~っ」
『ボク、今日は用事があるから帰るね』
赤オニくんが念じると、赤オニくんのツノから念じた気持ちが他のオニたちのツノに届きます。
『はいよ』
『うん、バイバイ』
『まった、ねぇ~』
みんなに伝わったのを確認して赤オニくんは帰りました。
そう、オニたちのツノにはテレパシーを使える重要な役割を担っていたのです。
『ん~、逆に言葉とか感じとか覚えたりするの面倒くさくない?』
『たしかに~』
『テレパシーだけでいいじゃん』
『そうだね』
『りょ』
『り』
『・・・』
『・・・』
次第にオニたちは言葉を忘れていき、ツノのテレパシーだけで会話をするようになりました。
そうして、オニたちが言葉をほとんど忘れた、ある日。
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『なぁ、聞いているのか!!』
ツノのないオニは答えません。
『おいっ、おいっ!!!」
「がああっ」
「うわあっ」
次第にテレパシーが使えるオニと使えないオニが出てきました。
ツノのないオニは、力がありません。
ツノのないオニは、寿命が短いです。
ツノのないオニは、自己中心的でした。
オニたちはツノのないオニたちを追い出しました。
ツノのないオニたちはか弱かったけれど、学習意欲がありました。
文字を生み出し、忘れてしまいそうなことは書いて、思い返したり、人に教えたりすることができるようになりました。
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子孫にツノのあるオニたちは怖くて、恐ろしい奴らだと伝え、鬼ヶ島には多くの財宝や、おいしい果物があることを伝えました。
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でも、追い出したオニをいじめようとは思いません。
だって、自己中心で自分ばかりになっていても、同じオニだから。
ときどき、届くか届かないかわからないテレパシーを毎日送ります。
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『・・・』
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けれど返事は来ません。
でも、いつか―――
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