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悪役のオオカミくん 子ども向けバージョン

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「戦隊ごっこしようぜ」

「いいね、やろうやろう」

 動物たちが言い出しっぺのサルくんの周りに集まります。

「オレが、レッドっ。ぶたちゃんとやぎちゃんがヒロインで囚われ役ね」

「イイよん」

「ワタシもいいわよ」

「じゃあ、オレ、ブルー」

「アタシ、ピンク」

「オイラは・・・イエロー」

「うちはホワイト」

「じゃあじゃあ・・・」

 みんなが手を上げて、先を争って色を取り合います。

「待って、みんな。待って・・・待て」

 サルくんがみんなを落ち着けました。
 みんなが手を降ろしてサルくんを見ます。

「みんながヒーローをやっちゃったら、悪役がいないじゃないか。これじゃあ、戦隊ごっこができないぞ。誰か悪役をやれよ」

 しかし、みんなサルくんと目を合わせしません。
 誰もが悪役なんて楽しくないのでやりたがりません。

「じゃあ、ジャンケンで決めよう。それでいいな?ほら、みんな手を上げて。勝ったやつから抜けていって、最後まで残ったやつが悪役な。ずるをしたやつがいたらそいつが悪役だからな?」

 みんなしぶしぶ手を上げます。

「それじゃあ、行くよ・・・じゃん、けん、ポン!!」

「やった、勝った」

「俺もだ」

 次々に勝った動物は喜び、負けた動物が悲しい顔をして残っていく。

「よしっ、決まったな」

 サルがすっきり顔をする。
 みんなも笑顔だ。

「・・・」

 ただ一人を除いて。
 
 一番負けたのは、イヌくんだった。
 とてもショックを受けていたイヌくんを見て、友だち想いのオオカミくんは言いました。

「やっぱり、ボクが悪役をやるよ」

「えーっ、それはだめだよ。ジャンケンした意味ないじゃないか」

「そうだよ・・・イヌくんがやるべきだよ」

 みんな自分の勝ちが無意味になるのが不満だったのか、それとも優越感に浸れなくなるのが嫌だったのか。
 うまくは言えないけれど、不満を口々に言いました。
 
「ハーッ、ハッハッハー。正義の味方どもめ、そんなにオレがニクいのか?そうであるならば、かかってこいっ」

 オオカミくんの悪役の迫真の演技にみんなの正義の心に火がついて、目を輝かせます。

「よーし、オオカミくんを倒そう!!」

「おうっ」

 みんなが拳を天に掲げました。

「レッドファイヤー」

 両手から炎を出すポーズをするサルくん。

「イエローサンダー」

 両腕をバッテンにして雷を出すポーズをするキジくん。

「ぐっ・・・ぐはああああっ」

 オオカミくんは倒れ込みます。
 
「やったぞ、みんな。オレたちは勝ったんだ」

「おーーーっ」

 みんな喜びを分かち合っています。
 そんなみんなを遠くから見て、オオカミくんも満足そうです。

「オオカミくん、ありがとう」

 イヌくんがオオカミくんに話しかけました。

「どういたしまして」

 オオカミくんの笑顔はとてもかっこよかったイヌくん。

「ボクも君みたいになりたいな」

「ふふっ、ありがとう」

 オオカミくんのおかげで悪役のリアクションする面白さや、攻撃が効くのか効かないのか決められる立場はごっこ遊びを進行できることを知ったみんなは後退しながら、みんなで楽しく遊ぶことができました。

めでたし、めでたし。










 




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