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本編2 エガスト王国編
32 ディエゴ王視点
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(ミシェルは何をほざいた・・・?)
自分の立場をわかっているやつの発言ではない。俺様が圧倒的に優位、俺様の気分次第であの赤鬼とミシェルの命すらどうにでもできるこの状況で聡明な顔に成長したのに、何をほざいた?
俺様が睨むと、少しミシェルもやってしまったか、という顔をする。
「・・・・・・くっくっくっ」
本当にこの女は・・・・・・
「かははははっ」
面白い。
それでこそ、俺様の・・・・・・・・・・・・ミシェルだ。
俺様は腹を抱えて、心の底から笑った。あぁ・・・・・・何年ぶりだろう。一切気を張らず、愛想笑いでも、嘲笑でもなく、純粋に楽しくて、こんな風に笑えるのは。ミシェルがドン引きしているのもお構いなしに俺様は笑ってやった。
「あの・・・・・・」
さすがにミシェルも心配になって、俺様の傍にやってきて、背中に手を置こうとする。
「触るな」
心の底から笑って無防備だったとは言え、10年ほど内外からの激戦の中でいた俺様は人に背中を預けることも、パーソナルスペースを例えミシェルであっても、無防備に預けることはできず、臨戦態勢のスイッチが入る。そう、この女はミシェルだ。けれど、俺様が歪に成長したように、あの頃のミシェルなら全てを委ねることができたとしても、ミシェルの10年の人生を信頼することはできなかった。ミシェルが再び怯えた顔をするのは辛かったが、俺様もすぐには変えられるような性格ならば、今ここにはいない。
「戻れ」
席を指さすと、ミシェルは渋々席へと戻る。そんな目で見て欲しくはないと言いたくなるが、毅然とした態度を取る。これは王としての意地であり、威厳だ。簡単に譲るものではない。
「ちなみに、俺様がそれを叶えると思っているのか?」
「・・・・・・」
ちぇっ、ダメか、みたいな悪戯を試した子どものような顔をするミシェル。いよいよ本性を出してきたと言うか、三つ子の魂百までも、といったところか。懐かしさで心が温かくなるが、それは過去。あの時は第二王子であっても、王と第一王子は死に、今や俺様が王。過去に囚われて呆けてしまうのは何もすることがなくなった老いぼれのやること。今を生き、時代を動かしている俺様に、そんな時間はない。
「まぁ、いい。しばらく考えろ」
俺様は席を立ち、扉へ向かう。ちらっとミシェルの手が目に入ると、昔のような丸っぽい柔らかそうな手ではなく、整った綺麗な指になっていた。
「・・・名前はっ?」
背後を振り返ると、ミシェルはテーブルに座ったまま戸惑った顔で俺様を見る。
「ふっ」
(ここまで、話しをしても思い出してはくれなかったか・・・)
どこかで淡い期待をしていた俺様。
二人が運命ならば、すぐに思い出してくれると思ったけれど、どうやらそれも叶わないようだ。でも、仕方がない。あの時よりも、俺様は逞しくなったし、声変わりもした。仕方がない、そう言い聞かせても、心はやはり寂しかった。だが、俺様は王、毅然として返事をするのが適切であろう。
「ディエゴだ。王をやっている」
俺様はそう伝えて、部屋から出て扉を閉めてカギをかける。もう一度、ノブを回してカギがかかっているのを確認して、その場から立ち去ろうと思ったけれど、なかなか顔をあげることができなかった。
自分の立場をわかっているやつの発言ではない。俺様が圧倒的に優位、俺様の気分次第であの赤鬼とミシェルの命すらどうにでもできるこの状況で聡明な顔に成長したのに、何をほざいた?
俺様が睨むと、少しミシェルもやってしまったか、という顔をする。
「・・・・・・くっくっくっ」
本当にこの女は・・・・・・
「かははははっ」
面白い。
それでこそ、俺様の・・・・・・・・・・・・ミシェルだ。
俺様は腹を抱えて、心の底から笑った。あぁ・・・・・・何年ぶりだろう。一切気を張らず、愛想笑いでも、嘲笑でもなく、純粋に楽しくて、こんな風に笑えるのは。ミシェルがドン引きしているのもお構いなしに俺様は笑ってやった。
「あの・・・・・・」
さすがにミシェルも心配になって、俺様の傍にやってきて、背中に手を置こうとする。
「触るな」
心の底から笑って無防備だったとは言え、10年ほど内外からの激戦の中でいた俺様は人に背中を預けることも、パーソナルスペースを例えミシェルであっても、無防備に預けることはできず、臨戦態勢のスイッチが入る。そう、この女はミシェルだ。けれど、俺様が歪に成長したように、あの頃のミシェルなら全てを委ねることができたとしても、ミシェルの10年の人生を信頼することはできなかった。ミシェルが再び怯えた顔をするのは辛かったが、俺様もすぐには変えられるような性格ならば、今ここにはいない。
「戻れ」
席を指さすと、ミシェルは渋々席へと戻る。そんな目で見て欲しくはないと言いたくなるが、毅然とした態度を取る。これは王としての意地であり、威厳だ。簡単に譲るものではない。
「ちなみに、俺様がそれを叶えると思っているのか?」
「・・・・・・」
ちぇっ、ダメか、みたいな悪戯を試した子どものような顔をするミシェル。いよいよ本性を出してきたと言うか、三つ子の魂百までも、といったところか。懐かしさで心が温かくなるが、それは過去。あの時は第二王子であっても、王と第一王子は死に、今や俺様が王。過去に囚われて呆けてしまうのは何もすることがなくなった老いぼれのやること。今を生き、時代を動かしている俺様に、そんな時間はない。
「まぁ、いい。しばらく考えろ」
俺様は席を立ち、扉へ向かう。ちらっとミシェルの手が目に入ると、昔のような丸っぽい柔らかそうな手ではなく、整った綺麗な指になっていた。
「・・・名前はっ?」
背後を振り返ると、ミシェルはテーブルに座ったまま戸惑った顔で俺様を見る。
「ふっ」
(ここまで、話しをしても思い出してはくれなかったか・・・)
どこかで淡い期待をしていた俺様。
二人が運命ならば、すぐに思い出してくれると思ったけれど、どうやらそれも叶わないようだ。でも、仕方がない。あの時よりも、俺様は逞しくなったし、声変わりもした。仕方がない、そう言い聞かせても、心はやはり寂しかった。だが、俺様は王、毅然として返事をするのが適切であろう。
「ディエゴだ。王をやっている」
俺様はそう伝えて、部屋から出て扉を閉めてカギをかける。もう一度、ノブを回してカギがかかっているのを確認して、その場から立ち去ろうと思ったけれど、なかなか顔をあげることができなかった。
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