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本編 婚約破棄編(仮)
20 ウォーリー伯爵視点
しおりを挟むあぁ、ミシェル。
かわいい、ミシェル。
目に入れても痛くないし、私が死んで彼女が幸せになるのであれば、喜んでこの命を差し出そう。ずーっと、手元に置いておきたい。ミーシャと私の愛の結晶。どことなく、ミーシャの面影を感じることで、ミーシャは確かに生きていたと実感できる。少しやんちゃをしていた頃の私に似たのか、行動力があるのが恐ろしいが、ちゃんといい子に育っていて、思いやりがあるところがとても素敵だ。周りのみんなも協力はしてくれたけれど、それでも親は私一人。しっかりしないと、と思って育ててきたけど、まーーー、本当に可愛い。本当に親になれてよかった。
でも、ミシェルの幸せが一番嬉しい。
幸せそうな顔をしているミシェルの顔が大好きだ。
だから、彼女が幸せを求めるなら背中を押したい。
今、彼女は成長しようとしている。
そして、飛び立とうとしている。
飛び立ったら、レオナルド王子に折られかけた。でも、それにも負けずにミシェルは飛ぼうとしている。その翼を休めろと言うべきか、それとも応援するべきか。
昔、ミシェルが転んだ時、私がミシェルを助けようとしたときにミーシャが怒った。なぜ、自分で頑張ろうとしている時に手を差し伸べようとするの、と。「だって、かわいいんだもん」と言うと、少し拗ねたミーシャの顔が忘れられない。
あぁ、ミシェルの成長をミーシャと見たかった。やっぱり、ミシェルを手元に置きたいのは自分のためかもしれない。ミシェルまでいなくなったら、私が生きる意味なんてなくなってしまうだろう。
(でも、ミシェルが帰ってくる場所はここだ)
ミシェルが疲れた時、悩んでいる時でもなんでもいい、彼女の心の拠り所を作っておくのが私の役目。
「さぁ、行っておいで。ミシェル」
「はいっ」
朝日に包まれたミシェルの笑顔はやっぱり女神のようだ。心が洗われるような気持ちになった。この子には悲しい顔は似合わない。絶対に幸せになって欲しい。
「頼んだぞ、アーサー。何があってもミシェルを守るんだぞ」
私がそう言うと、アーサーは片膝をつき、右手の拳と左手の手のひらを合わせ、
「はっ。この、アーサー。この身に変えても姫様をお守りいたします」
と、答えてくれた。一時、アーサーはミシェルを好きなんじゃないかと疑ったこともあり、ミシェルを遠のけたこともあったが、アーサーは立派な騎士になりたいと私とミシェルに忠義を誓った。少し荒くれ者な部分もあるが、この戦も多い辺境の地でやっていくには、それぐらいの野性味もあるくらいがいいのかもしれない。
「じゃあ、行ってきます」
二人はそれぞれの馬に乗って、朝日の向こうへと向かった。ミシェルの隣に誰かがいるのを見て、あれが自分だったらな、と思ったけれど、彼女の隣にいるべきはこれから未来を切り開いていくべき人間なのだと自分に言い聞かせた。
「いや、アーサーはダメだ。あんなハナタレ小僧にミシェルは渡さん。旅の途中でミシェルに手なんか出したら・・・・・・ああああああああっ!! ぜったい、即刻追放だああああっ!!」
アーサーが成長したのは私もわかっている。けれど、そんな旅の途中で手を出すなんてことをしたら、許さん。
「ちゃんと、順序をつんで、まず、ミシェルを恋愛対象と見させてもらいますと、私に宣言をして・・・それからだ」
『そんな恋愛、貴方が言いますか?』
私は懐かしく、愛おしい声が隣から聞こえた気がして、バッと隣を見る。すると、太陽の光が形を成して、ミーシャになっていた・・・・・・・・・ように感じた。
そうだ。
私の隣には、心の中には、ミーシャがいる。
「これから、忙しくなる。墓にでも行ってくるか」
『まだ来ちゃだめだよ、ウォーリー』
小鳥の鳴き声で騒がしかったけれど、先ほどよりもはっきりとミーシャの声が聞こえた。私この領地の未来を委ねたミシェルに背を向けて、この領地の今を守るために屋敷へと向かった。
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