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本編 婚約破棄編(仮)
10 アレク視点
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馬車に揺れて外を見ているレオナルド王子。
第一王子として、周りからは大きな期待と、利用する人形として見られている王子。鈍感な振りをどんなにしても、そんな目で見られていればうっすらとでも気づいてきている。王子は何かを考えているようだったので、僕は探りを入れてみる。
「レオナルド王子。ミシェルと婚約は結んだのですか?」
「それは・・・止めた」
(まぁ、知っていたけどね)
用事があって外に出ていた僕が王宮に戻ったら、レオナルド王子がいなかったので、周りの貴族にすでにいきさつを聞いていた。だから、僕が気になったのは、レオナルド王子のリアクション。僕の質問に対して、レオナルド王子は武勇伝がまた一つ増えた、と言う感じで笑い飛ばすのでも、全く冷めて言う訳でもなく、意味深な言い方をした。
「それは、それは。それでは、パーティーをすっぽかし、お二人で食事をされていたのはなぜでしょうか?」
「ミシェルに興味があった。周りの声を聞く耳ではなく、この目で確かめたいと思った」
(ほうほう。なるほど)
レオナルド王子は少しは成長しているようだ。初めは風の噂を信用し、その次は周りの貴族や大臣の声を信用して右往左往していたけれど、自分を信じる力が身に着こうとしている。
(まっ、彼女にとってはいい迷惑だと思うけど)
僕は心の中で笑った。
「それで、確かめた結果どうでしたか?」
「わからない」
きっぱりとレオナルド王子は答えた。
「だが・・・・・・」
レオナルド王子の顔が少し赤くなっている。
「だが?」
僕はなんとなく、答えがわかったけれど、言わせたいと思ったので、言いやすいように絶妙のタイミングで、言葉を続ける。
「彼女は美しい。一緒にいたいと・・・・・・そう思った」
(ふふっ、かわいいな王子)
年上の人がこんなに照れて、物欲しそうで切ない顔を見るのは本当に楽しい。僕には恋愛というものはわからないが、恋が人を狂わせることも十分に知っている。僕は僕を捨てて、恋に逃げた母がちらっと頭をよぎった。
(恋なんて愚かだ)
「でも、断ったのでしょ。さすが・・・」
「だから、妾にする」
(おっと?)
これは驚いた。
この王子にそんな器用なことができるとは思っていなかった。
「良いじゃないですか」
僕は心の底から喜んだ。
「ウォーリー伯爵は、忠義に厚く、義理堅い男と聞いております。そして、あの地域と懇意にしておくことは王家を盤石のものにするでしょう」
「・・・・・・」
レオナルド王子は答えなかった。でも、それでもいいと思っていた。
僕はそれ以上何も言うまいと、思って僕は心の中で鼻歌を歌っていた。
ただ、この時僕はミスを犯していた。
というより、僕の情報には一つ大きな欠陥があった。
・・・それは、ウォーリー伯爵はミシェルのことになると大馬鹿者になるということだ。
第一王子として、周りからは大きな期待と、利用する人形として見られている王子。鈍感な振りをどんなにしても、そんな目で見られていればうっすらとでも気づいてきている。王子は何かを考えているようだったので、僕は探りを入れてみる。
「レオナルド王子。ミシェルと婚約は結んだのですか?」
「それは・・・止めた」
(まぁ、知っていたけどね)
用事があって外に出ていた僕が王宮に戻ったら、レオナルド王子がいなかったので、周りの貴族にすでにいきさつを聞いていた。だから、僕が気になったのは、レオナルド王子のリアクション。僕の質問に対して、レオナルド王子は武勇伝がまた一つ増えた、と言う感じで笑い飛ばすのでも、全く冷めて言う訳でもなく、意味深な言い方をした。
「それは、それは。それでは、パーティーをすっぽかし、お二人で食事をされていたのはなぜでしょうか?」
「ミシェルに興味があった。周りの声を聞く耳ではなく、この目で確かめたいと思った」
(ほうほう。なるほど)
レオナルド王子は少しは成長しているようだ。初めは風の噂を信用し、その次は周りの貴族や大臣の声を信用して右往左往していたけれど、自分を信じる力が身に着こうとしている。
(まっ、彼女にとってはいい迷惑だと思うけど)
僕は心の中で笑った。
「それで、確かめた結果どうでしたか?」
「わからない」
きっぱりとレオナルド王子は答えた。
「だが・・・・・・」
レオナルド王子の顔が少し赤くなっている。
「だが?」
僕はなんとなく、答えがわかったけれど、言わせたいと思ったので、言いやすいように絶妙のタイミングで、言葉を続ける。
「彼女は美しい。一緒にいたいと・・・・・・そう思った」
(ふふっ、かわいいな王子)
年上の人がこんなに照れて、物欲しそうで切ない顔を見るのは本当に楽しい。僕には恋愛というものはわからないが、恋が人を狂わせることも十分に知っている。僕は僕を捨てて、恋に逃げた母がちらっと頭をよぎった。
(恋なんて愚かだ)
「でも、断ったのでしょ。さすが・・・」
「だから、妾にする」
(おっと?)
これは驚いた。
この王子にそんな器用なことができるとは思っていなかった。
「良いじゃないですか」
僕は心の底から喜んだ。
「ウォーリー伯爵は、忠義に厚く、義理堅い男と聞いております。そして、あの地域と懇意にしておくことは王家を盤石のものにするでしょう」
「・・・・・・」
レオナルド王子は答えなかった。でも、それでもいいと思っていた。
僕はそれ以上何も言うまいと、思って僕は心の中で鼻歌を歌っていた。
ただ、この時僕はミスを犯していた。
というより、僕の情報には一つ大きな欠陥があった。
・・・それは、ウォーリー伯爵はミシェルのことになると大馬鹿者になるということだ。
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