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本編 婚約破棄編(仮)
6 アーサー視点
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(たく、どんだけ恨まれてんだよ、こいつ・・・)
いろんな方向から殺気が、この能天気な男に向けられている。そして、連れである俺たちを見定めるように見てくるので、俺が殺気をお返しすると、だいたいの奴らは目を背ける。
・・・が、かなり強い殺気を放ってくる奴らは、いくら俺が殺気を送っても物おじせずに距離をつめてきている。
(殺気すらわからない勇気を履き違えた蛮勇か、それとも、強い信念を持った奴らか・・・)
人数はおそらく3人。
(ちっ、二手に別れやがった)
一番強そうな奴とその他の二人で二手に分かれた。その瞬間、一番強そうな奴が物凄い殺気を放つ。
やる気満々なようだ。
ちらっと、姫さんを見ると、姫さんもそのことを感じ取ったようだ。
まったく、小さな身体なのに大したものだ。
力で勝てても、技術を含めれば、果たして勝つのは俺か、姫さんか・・・・・・
(俺に決まってんだろ。それが騎士ってもんだ)
「先に行け」
叩くなら今。
全く知らない土地で、先回りされて挟み撃ち、もしくは、地の利を活かされてしまえば、手に負えなくなるかもしれない。そんな状況でも俺が勝つ。勝つが、騎士として姫さんを守るためにリスクをわざわざ上げる必要もない。簡単に倒せるなら、倒してしまった方がいい。これが騎士としての常識。
「でも・・・きゃっ」
レオナルド王子がミシェルの手首を乱暴に掴む。
「じゃっ、任せた。行こう、ミシェル」
(勝ち誇った顔をしてんじゃねぇよ、三下が。本当に切ってやろうか)
音もなく、レオナルド王子の手首を切るのは造作もない。だが、それは姫さんが望んでいることではないし、3人のお客さんも俺の行動に少し慌てているようだ。
「牙は隠したままで・・・ね」
姫さんがそう告げたので俺は頷く。
(来たっ)
二人組が人の波を縫って、こちらに走ってやってくるのがわかる。
「おっとっと」
右から来た奴の足を引っかけて倒し、
「ちょっと、待ってくんな」
左から来た奴の肩を掴む。
「うぐっ・・・」
その男は素早く自分の懐に手を入れるが、びっくりした顔をした。
「お探しの物はこれか?」
俺が懐刀をちらつかせると、唖然とした顔になり、必死に逃げようとするので、手を離してやると、力を入れすぎた男はそのまま転んでしまう。二人の男たちはもう一人の強い殺気の男の元へと行くが、
「ぐへっ」
「ぐはっ」
その男に殴られる。
「ひゃっ」
それに気づいた女性が声をあげ、周りの人たちもざわつきだし、近づいたら何されるかわからないので、通行人たちが道が開けると、タトゥーを入れた体格のいい男が刀を抜いた。どうやら、こんな真昼間から殺る気らしい。
「さぁさぁ、ショータイムと始めましょうか」
俺はさっき手に入れた懐刀を手遊びのために投げて遊んでいたけれど、ぽいっと道に捨て拳を構える。
「・・・なんのつもりだ?」
「おっ、渋い声してんね、おっさん」
いかにも悲しみを背負ってますって男の声は重みがあった。だがしかし、俺の知っている姫さんや主のウォーリー伯爵は、背負っていても笑っている。
「それは飾りか?」
訝し気な顔で俺の剣を指さすおっさん。
「あぁ、これっ? これは・・・牙だ」
俺は今度は両手を上げて虎の真似をする。
「・・・ふざけてるのか?」
「もちろん」
こめかみの血管が浮き出たおっさんは俺に襲い掛かって来た。
「あーあっ、やっぱり獣か。なら、やっぱり必要なかったな」
騎士として、信念を持った人間に相手を申し込まれたら、姫さんの命令とは言え、俺は剣を交えることに応じたかもしれない。それが俺の騎士道であり、俺は色んな騎士と手合わせして、騎士として強く、気高くありたい。だが、目の前にいるのは、目先のことしか考えられないただの獣だ。ならば、ケンはケンでも、「拳」で応えるだけだ。
「まっ、こんぐらいのハンデ。余裕っしょ」
俺は舌鼓をした。獣とは言え戦ったことがない骨のありそうな動物と戦えるのだから。
血が湧かないわけがない。
いろんな方向から殺気が、この能天気な男に向けられている。そして、連れである俺たちを見定めるように見てくるので、俺が殺気をお返しすると、だいたいの奴らは目を背ける。
・・・が、かなり強い殺気を放ってくる奴らは、いくら俺が殺気を送っても物おじせずに距離をつめてきている。
(殺気すらわからない勇気を履き違えた蛮勇か、それとも、強い信念を持った奴らか・・・)
人数はおそらく3人。
(ちっ、二手に別れやがった)
一番強そうな奴とその他の二人で二手に分かれた。その瞬間、一番強そうな奴が物凄い殺気を放つ。
やる気満々なようだ。
ちらっと、姫さんを見ると、姫さんもそのことを感じ取ったようだ。
まったく、小さな身体なのに大したものだ。
力で勝てても、技術を含めれば、果たして勝つのは俺か、姫さんか・・・・・・
(俺に決まってんだろ。それが騎士ってもんだ)
「先に行け」
叩くなら今。
全く知らない土地で、先回りされて挟み撃ち、もしくは、地の利を活かされてしまえば、手に負えなくなるかもしれない。そんな状況でも俺が勝つ。勝つが、騎士として姫さんを守るためにリスクをわざわざ上げる必要もない。簡単に倒せるなら、倒してしまった方がいい。これが騎士としての常識。
「でも・・・きゃっ」
レオナルド王子がミシェルの手首を乱暴に掴む。
「じゃっ、任せた。行こう、ミシェル」
(勝ち誇った顔をしてんじゃねぇよ、三下が。本当に切ってやろうか)
音もなく、レオナルド王子の手首を切るのは造作もない。だが、それは姫さんが望んでいることではないし、3人のお客さんも俺の行動に少し慌てているようだ。
「牙は隠したままで・・・ね」
姫さんがそう告げたので俺は頷く。
(来たっ)
二人組が人の波を縫って、こちらに走ってやってくるのがわかる。
「おっとっと」
右から来た奴の足を引っかけて倒し、
「ちょっと、待ってくんな」
左から来た奴の肩を掴む。
「うぐっ・・・」
その男は素早く自分の懐に手を入れるが、びっくりした顔をした。
「お探しの物はこれか?」
俺が懐刀をちらつかせると、唖然とした顔になり、必死に逃げようとするので、手を離してやると、力を入れすぎた男はそのまま転んでしまう。二人の男たちはもう一人の強い殺気の男の元へと行くが、
「ぐへっ」
「ぐはっ」
その男に殴られる。
「ひゃっ」
それに気づいた女性が声をあげ、周りの人たちもざわつきだし、近づいたら何されるかわからないので、通行人たちが道が開けると、タトゥーを入れた体格のいい男が刀を抜いた。どうやら、こんな真昼間から殺る気らしい。
「さぁさぁ、ショータイムと始めましょうか」
俺はさっき手に入れた懐刀を手遊びのために投げて遊んでいたけれど、ぽいっと道に捨て拳を構える。
「・・・なんのつもりだ?」
「おっ、渋い声してんね、おっさん」
いかにも悲しみを背負ってますって男の声は重みがあった。だがしかし、俺の知っている姫さんや主のウォーリー伯爵は、背負っていても笑っている。
「それは飾りか?」
訝し気な顔で俺の剣を指さすおっさん。
「あぁ、これっ? これは・・・牙だ」
俺は今度は両手を上げて虎の真似をする。
「・・・ふざけてるのか?」
「もちろん」
こめかみの血管が浮き出たおっさんは俺に襲い掛かって来た。
「あーあっ、やっぱり獣か。なら、やっぱり必要なかったな」
騎士として、信念を持った人間に相手を申し込まれたら、姫さんの命令とは言え、俺は剣を交えることに応じたかもしれない。それが俺の騎士道であり、俺は色んな騎士と手合わせして、騎士として強く、気高くありたい。だが、目の前にいるのは、目先のことしか考えられないただの獣だ。ならば、ケンはケンでも、「拳」で応えるだけだ。
「まっ、こんぐらいのハンデ。余裕っしょ」
俺は舌鼓をした。獣とは言え戦ったことがない骨のありそうな動物と戦えるのだから。
血が湧かないわけがない。
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