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18 話を聞く前に・・・
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「・・・入れ」
ガチャ
高級な扉をゆっくりと開けるユリウス。
徐々に広がっていく扉の隙間からは、この国で一番豪華な寝室であろうその部屋は、厚みがあって高そうな絨毯や、豪華絢爛なシャンデリアや家具が置かれていた。そして、国王がいた。
「久しぶりだな、ユリウス。まずは近くにきてくれまいか?」
ベットで横たわっていた国王は、身体を起こす。前に見たよりも少しやつれて、声が弱々しい。
私たちはお辞儀をして、王のベットのすぐ近くへ行く。
「お久しぶりです、陛下。身勝手に国を飛び出し申し訳ございませんでした」
どこまでも他人行儀のユリウス。王の右腕と言われていた時よりも大分壁がある。
「それはもうよい・・・それより」
ユリウスは喋りだそうとする王を手で制す。
「まず、話を聞くには条件がございます」
「・・・申してみよ」
「私の隣におりますは御存じのとおり豊穣の聖女、メーテル様です。しかし、一部では豊穣の魔女と申す不届き者もおります。今回の件に関しては、いささか彼女も配慮に欠ける部分もあったかもしれませんが、今までの彼女の働きに免じてどうか処罰することなきようお頼み申し上げます」
深々と頭を下げるユリウス。私も彼に合わせて深々と頭を下げる。
「頭を上げよ」
ユリウスが頭を上げるのに合わせて私も顔を上げると、王と目があった。
「安心してください、メーテル様。全てはもう一人の我バカ息子のアドルドの仕業。重々わかっておりますゆえ」
にこっと笑う国王は私の知っている優しい国王でホッとした。
「さてユリウス・・・」
「はいっ」
私から目線をユリウスに変えた国王はきりっとした顔になる。それは国王だからなのか、それとも・・・。
「家督を継げ、ユリウス」
私は二人の顔を見た。
二人とも真剣にお互いの顔を見ている。それはお互いの実力を認めた者同士の熱い視線だった。そう、ユリウスだって、国王のことをとても尊敬していた。だからこそ、役に立ちたいと言って、王の右腕と言われるまでに励んできたのだから。
「理由を教えてください・・・」
でも、敬愛よりも苛立ちが勝ったようだ。ユリウスは目線を逸らし、ちょっと苛立ちが混じった声で国王に尋ねる。
「それはもちろんアドルドに任せていてはこの国が・・・」
「そっちじゃない!!」
ユリウスが声を荒げる。私は繋いだ手をもう片方の手で優しく撫でる。
「・・・すまない、ありがとう」
「がんばって・・・っ」
「あぁ・・・。なぜ、母さんを妻として認めなかったのですか?」
ユリウスはゆっくりと怒りや苛立ちを抑えながら、国王に尋ねる。
すると、国王は「はぁっ」とため息をついた。
ガチャ
高級な扉をゆっくりと開けるユリウス。
徐々に広がっていく扉の隙間からは、この国で一番豪華な寝室であろうその部屋は、厚みがあって高そうな絨毯や、豪華絢爛なシャンデリアや家具が置かれていた。そして、国王がいた。
「久しぶりだな、ユリウス。まずは近くにきてくれまいか?」
ベットで横たわっていた国王は、身体を起こす。前に見たよりも少しやつれて、声が弱々しい。
私たちはお辞儀をして、王のベットのすぐ近くへ行く。
「お久しぶりです、陛下。身勝手に国を飛び出し申し訳ございませんでした」
どこまでも他人行儀のユリウス。王の右腕と言われていた時よりも大分壁がある。
「それはもうよい・・・それより」
ユリウスは喋りだそうとする王を手で制す。
「まず、話を聞くには条件がございます」
「・・・申してみよ」
「私の隣におりますは御存じのとおり豊穣の聖女、メーテル様です。しかし、一部では豊穣の魔女と申す不届き者もおります。今回の件に関しては、いささか彼女も配慮に欠ける部分もあったかもしれませんが、今までの彼女の働きに免じてどうか処罰することなきようお頼み申し上げます」
深々と頭を下げるユリウス。私も彼に合わせて深々と頭を下げる。
「頭を上げよ」
ユリウスが頭を上げるのに合わせて私も顔を上げると、王と目があった。
「安心してください、メーテル様。全てはもう一人の我バカ息子のアドルドの仕業。重々わかっておりますゆえ」
にこっと笑う国王は私の知っている優しい国王でホッとした。
「さてユリウス・・・」
「はいっ」
私から目線をユリウスに変えた国王はきりっとした顔になる。それは国王だからなのか、それとも・・・。
「家督を継げ、ユリウス」
私は二人の顔を見た。
二人とも真剣にお互いの顔を見ている。それはお互いの実力を認めた者同士の熱い視線だった。そう、ユリウスだって、国王のことをとても尊敬していた。だからこそ、役に立ちたいと言って、王の右腕と言われるまでに励んできたのだから。
「理由を教えてください・・・」
でも、敬愛よりも苛立ちが勝ったようだ。ユリウスは目線を逸らし、ちょっと苛立ちが混じった声で国王に尋ねる。
「それはもちろんアドルドに任せていてはこの国が・・・」
「そっちじゃない!!」
ユリウスが声を荒げる。私は繋いだ手をもう片方の手で優しく撫でる。
「・・・すまない、ありがとう」
「がんばって・・・っ」
「あぁ・・・。なぜ、母さんを妻として認めなかったのですか?」
ユリウスはゆっくりと怒りや苛立ちを抑えながら、国王に尋ねる。
すると、国王は「はぁっ」とため息をついた。
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