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2 grow up
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「grow up」
私は自分の集中力が根こそぎ持って行かれて、立ち眩みしそうになりながら、目を開ける。
すると、その風景に心を躍らせているアドルド王子の横顔が見えた。
「アドルド・・・助けて」
バタンッ
夢中になっていたせいか、アドルド王子は私の弱った小さな声は聞こえなかったらしく、私はよろけながらアドルド王子の方に倒れ込んでしまう。
「はっはっは・・・」
婚約者の私が倒れているというのにまだ、景色に夢中なアドルド王子。
でも、私もほぼすべての魔力を使ってしまったので起き上がれない。
「ねぇ、アドルドってば起こして」
私はベランダの固い石の上に座りながら、アドルドに手を伸ばす。
パチンッ
「呼び捨てにするな、無礼者」
「え・・・?」
今まで景色を見て、目を輝かせていたアドルド王子が、ゴミでも見るような魚の死んだ目で私を見た。
私には意味が分からなかった。
「まったくもって、貴様のような平民、しかも魔女と結婚するなど嫌で嫌で仕方がなかったのだ」
「魔女・・・」
この世界では魔法を使う女性は2つの呼び方がある。それは「聖女」と「魔女」だ。
「聖女」は魔法を利他的に使い、皆を幸せに導く者を指す尊称だ。
それに対して、「魔女」は魔法を利己的に使ったり、人に呪いをかける卑しい者を指す蔑称である。
私なりに頑張って来たのに「魔女」と呼ばれて、思わず口を抑えてしまった。
「もう、お前は用済みだ。魔女。残念だったな、魔法の力で皇太子妃になろうとしたんだろうが、俺はそんなものには騙されん」
「何を言っているの・・・貴方。私はなるべく魔法を使わないようにしていたのに貴方が・・・」
「おっと、さすが魔女だ。責任転嫁か?俺はな、お前が魔法を使うかどうか試していたんだよっ」
(言い訳はどっちよっ!!)
私は心の中で叫んだ。
私は王子の命であろうとも、王子のきまぐれな要望に対して私は何度もお断りを入れて、そのたびに王子が不機嫌になり、きまづくなっても私はお断りの姿勢でいた。反逆罪をちらつかされて、なんとか折衷案を見つけては魔法を使ってきたけれど、アドルド王子の改ざんは甚だしくて私はいら立ちを覚えた。
そして、常々申し訳ないと思っていたのもあったし、ここ数か月は心を入れ替えたかのように、魔法のことには触れずに、私に優しく接してくれたアドルド王子の「一生のお願い」だというから、今回は魔法を行使した。今回だけは王子の口車に乗ったとは言え、魔女的だったのは認める。けれど、魔力を使った代償は二人で払っていく覚悟があったからこそ、私は魔力を行使した。それなのに・・・。
私は彼に、そして自分の判断に、絶望した。
けれど、その絶望はまだ序章に過ぎなかった。
私は自分の集中力が根こそぎ持って行かれて、立ち眩みしそうになりながら、目を開ける。
すると、その風景に心を躍らせているアドルド王子の横顔が見えた。
「アドルド・・・助けて」
バタンッ
夢中になっていたせいか、アドルド王子は私の弱った小さな声は聞こえなかったらしく、私はよろけながらアドルド王子の方に倒れ込んでしまう。
「はっはっは・・・」
婚約者の私が倒れているというのにまだ、景色に夢中なアドルド王子。
でも、私もほぼすべての魔力を使ってしまったので起き上がれない。
「ねぇ、アドルドってば起こして」
私はベランダの固い石の上に座りながら、アドルドに手を伸ばす。
パチンッ
「呼び捨てにするな、無礼者」
「え・・・?」
今まで景色を見て、目を輝かせていたアドルド王子が、ゴミでも見るような魚の死んだ目で私を見た。
私には意味が分からなかった。
「まったくもって、貴様のような平民、しかも魔女と結婚するなど嫌で嫌で仕方がなかったのだ」
「魔女・・・」
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「聖女」は魔法を利他的に使い、皆を幸せに導く者を指す尊称だ。
それに対して、「魔女」は魔法を利己的に使ったり、人に呪いをかける卑しい者を指す蔑称である。
私なりに頑張って来たのに「魔女」と呼ばれて、思わず口を抑えてしまった。
「もう、お前は用済みだ。魔女。残念だったな、魔法の力で皇太子妃になろうとしたんだろうが、俺はそんなものには騙されん」
「何を言っているの・・・貴方。私はなるべく魔法を使わないようにしていたのに貴方が・・・」
「おっと、さすが魔女だ。責任転嫁か?俺はな、お前が魔法を使うかどうか試していたんだよっ」
(言い訳はどっちよっ!!)
私は心の中で叫んだ。
私は王子の命であろうとも、王子のきまぐれな要望に対して私は何度もお断りを入れて、そのたびに王子が不機嫌になり、きまづくなっても私はお断りの姿勢でいた。反逆罪をちらつかされて、なんとか折衷案を見つけては魔法を使ってきたけれど、アドルド王子の改ざんは甚だしくて私はいら立ちを覚えた。
そして、常々申し訳ないと思っていたのもあったし、ここ数か月は心を入れ替えたかのように、魔法のことには触れずに、私に優しく接してくれたアドルド王子の「一生のお願い」だというから、今回は魔法を行使した。今回だけは王子の口車に乗ったとは言え、魔女的だったのは認める。けれど、魔力を使った代償は二人で払っていく覚悟があったからこそ、私は魔力を行使した。それなのに・・・。
私は彼に、そして自分の判断に、絶望した。
けれど、その絶望はまだ序章に過ぎなかった。
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