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「サイレントナイトメア」

 私がそう唱えると、にこやかなみんながその場から姿を消す。

 パチンッ

 今度は指を鳴らして、その場から私が姿を消した。

「さみぃーーーっ」

 ボルトくんが寒がる。いつもよりも防寒具を着こんで、大事なものを持ってきた大きなカバンに詰め込んだボルトくん。ボルトくんだけじゃない、クラスのみんな、そしてその家族や友人たちが吹雪の中で待っていた。

『じゃあ、やります』

 私はみんなの心に語り掛けると、みんなが頷き信頼した目で私を見ている。

(失敗は許されない)

 ここで失敗すれば、私は倒れてしまい魔法が使えなくなり、おそらくみんなこの吹雪にやられて死んでしまうだろう。ただ、倒れるくらい本気じゃなければこの世界をかえることなんてできない。

 私は目を閉じ他の四感を塞ぎ、第六感が存在する心の魔感に集中させる。すると、空間に広がる魔力と自分の中にある魔力の波長をいつも以上に敏感に感じ取ることができるようになる。空間に広がる魔力の一番大きな波に合わせるように、自分の小さな身体の波長を魔力を込めて波を大きくしていく。

「はぁ・・・はぁ・・・っ」

 波の大きさが近づいたら、今度はリンクさせるため微調整を行っていく。リズムと大きさを整える。
 ピタッと重なった瞬間、私にあるすべての魔力を放出させる。

「リワールド・・・っ」

 空気が弾けた・・・いや、弾けていく。

 私の目の前に国レベルを満たすように空気が弾け、雪や雪雲が吹っ飛び、木々も激しく揺れていく。
 私の後ろにいた皆にも少なからず反動の空気圧が飛んでき、みんな目などを抑えて、必死に踏ん張っている。

(言うことを聞けーーーーっ)

 私のことを信じて付いてきてくれた人たち。多少寿命を削ったとしても私の後ろに殺傷能力があるレベルの風がいかないようにも制御する。

「はあああああああっ」

 私が望んだのは雪がない世界。
 そして、人間や動物、植物たちが生き生きとする世界。
 みんなもそれを喜んでくれた。
 
  バタンッ

 私は魔感に集中していた集中力が解けてしまい、身体にすら力が入らなくなって後ろに倒れてしまった。

「先生っ!?」

 私が創った世界はどうなったかはわからない。

「へへへっ」

 でも、私の目の前には、私を慕ってついてきた人たちの笑顔溢れる顔が広がっていた。
 そして、その隙間からは見たことも無い青い青い空が見えていた。
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