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「それは、どうもおめでとう」

 私は今度こそ立ち上がる。
 ここに長居するメリットはない。
 というか、むしろデメリットしかない。

「待ってくれ・・・っ」

 私は腕を握られる。
 けれど、私の身体は彼を拒絶しているようだ。全身に鳥肌が立った。

「放してっ」

 私は彼の手をふりほどく。

「頼む聞いてくれ」

「じゃあ、聞くけどメリルのどこがいいわけ?」

 黙って俯くファンゼル王子。

「なによ?言いにくいわけ?なら別にいいから、帰らせてください・・・」

「魔法が凄いところだ」

「・・・」

 呆れて物も言えないとはこのことだ。

「彼女の魔法に芸術性があるし、何といっても魔力量が桁違いだ。これからのスノーワールドを共に盛り上げていくのにかかせない存在だ!!」

 急に饒舌になるファンゼル王子。それだけ妹のメリルにご執心ということだろう。
 ただ・・・

(まっ、いいや。私の努力?でもないけど、そういうのはいらないみたいだし)

「わかりました。それで話とはなんでしょうか?」

「結婚式は来月だ。姉である君にもぜひ参加してほしい」

「はい?」

 冗談が面白い人だとは思っていたけれど、どうやら「天然」の人らしい。

「もしかして、私たちの式の日にやるの?」

「あぁ、もちろん。それでだな、ぜひ二人で話し合って決めた演出をだね・・・」

 人を馬鹿にするのもいい加減にしてほしい。純粋で面白い人だと思っていたけれど、こんな考え方が平気でできるのは、純粋悪以外のなにものでもないと思った。

「帰ります」

「あぁ、待ってくれ。妹の才能に嫉妬するのはわかるが」

 パチンッ

 私は指を鳴らして姿を消した。
 本当はこの国で1、2を争うくらい偉い王子様の前で急に消えるのは失礼だと思い、今までしてこなかったけれど、この国を出ていくことを決めたので、私は全く躊躇わなかった。

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