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(神に・・・なる? なんて、おこがましい人・・・罰当たりだ・・・)

「ふっ、信じないか」

 ナイトメアは鼻で笑う。

「当たり前ですっ」

 リアンは断言する。

「じゃあ、お前はこの戦禍のままにしている神を信じればいいさ。お前は俺と同じ、世界を平和にできる女だと思ったんだがな・・・残念だ」

 リアンの耳に足音が聞こえて来た。
 味方の兵士たちが騒ぎを聞きつけて向かっている様子で、音がどんどん大きくなっていく。ナイトメアがリアンも自分に遅れて気づいたことを理解する。

「じゃあな・・・。ただ、俺はお前を気に入っている。もう一度、月が満ちる時俺はお前の目の前に現れよう。その時、もう一度訪ねる。今の神を信じるか、それとも新たな神を信じるか・・・っ」

 瞳に焼き付けるようにリアンを見つめるナイトメア。

(天使様、天使様、私は決して彼になどなびきませんっ)

 リアンはナイトメアの瞳に吸い込まれそうになりながらも、必死に天使に弁明する。

「誰だっ、キサマはっ」

 兵士たちが武器を持って、ようやく現れた。
 兵士たちが来たのを確認して、ナイトメアは夜の闇に消えていった。

「大丈夫ですかっ、リアン様・・・こっ、これは・・・」

 ゴロゴロと落ちている生首と、その持ち主だった胴体を見て唖然とする兵士たち。
 リアンは三角座りをして、うずくまった。

「さっきのって・・・もしかして、敵国の最強騎士、ナイトメアじゃないのか?」

「いや、まさか・・・ナイトメアならこの程度で済まないだろう」

 二人の兵士は悲惨な状況を分析しようとするが、結局答えは出なかった。
 リアンも自分がその死体たちに犯されそうになったことも言わなかった。
 ただ、謎の黒い男が彼らを殺したとだけ伝えて、ふさぎ込んで、それ以上のことは言わなかった。
 ふさぎ込みながらも、ナイトメアの言ったことを一人で考えていたら、新月を迎えた。

(あと、半分・・・)

 リアンとナイトメアが出会った時の月は消えてなくなってしまった。明日から光り出す月が満ちれば、ナイトメアが再び、リアンの元へと現れる。
 リアンは気持ちを月と共に気持ちをリセットすることを決めて、世界を見た。
 
 歩くリアンを見て、頭を下げる兵士もいれば、感謝を伝える兵士もいる。けれど、特に目立ったのが彼女を睨む兵士だ。
 リアンは聖血を使いすぎた。
 だから、彼女の聖血は優秀な兵士などにしか渡すことができなくなっていた。
 必ずしも与えられるのは、頑張ったものでなく、才能などを持っている者。

 特に有名な家の生まれで、長男じゃないからここにいるみたいな性格も、兵士としての才能もないような兵士にも血を与えるリアンは普通の兵士からは不公平の象徴として兵士から恨まれるようになっていた。彼女に直接文句を言うものはいない。

 だって、彼女は『悪くない』のだから。

 
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