【完結】双子座流星群

西東友一

文字の大きさ
7 / 11

7

しおりを挟む
 僕が話しかけようとして前に一歩踏み出そうとした瞬間、

「死ねやああああああああっ」
 
 もう、戦いは終わり、拳闘大会も閉幕したのに、闘技場の外でダスティンは杖にしていた槍を構えて鬼の形相で僕の心臓目掛けて、渾身の突きを不意打ちでしてきた。

(あっ)

 僕は無防備だった。

 拳闘大会でかなり力を使い果たしてしまったようだ。それに加えて僕はすでに体重移動をしていて、地面に唯一接していた足から重心までの距離が遠くなってしまい、地面に接している足にはほとんど力が入らない状態だ。つまりは回避行動へ移行することも難しく、戦意も無くなっていた僕は、防御態勢も難しいということだ。

 グチュッ

 嫌な音がした。

「ぐっ・・・」

 身体を貫いた。
 
「なんで・・・っ」

 でも、僕の身体じゃない。僕とダスティンの間にルトゥスが割って入ってきたのだ。

「ちっ、違う・・・俺は・・・脅そうとして・・・」

 槍を放して動揺するダスティンは、震える手を見て、叫びながらどこかへと立ち去る。
 その姿はいつもの高慢な態度とは程遠く、ゴミ箱を漁りながら、人に怯えて暮らす野良犬のようだった。

「ルトゥスっ!ルトゥスっ!!しっかり・・・なんで・・・」

 僕が彼を支えながら話しかけると、ルトゥスは何も言わずに、にこっと笑った。そして、笑顔が消えるのと同時に、急に支えていた身体が重くなり、まるで人から物へと変わってしまうような気がした。

「そんな・・・嫌だよ・・・っ。僕の・・・愛しいルトゥス・・・っ」

 僕が声をかければいつも優しい笑顔で返事をしてくれるのに、今は何も言ってはくれない。
 どうにかしたいのに、頭がくらくらして拳闘大会の疲れのせいか頭が回らない。
 
(これは、夢だ。夢であってくれ・・・っ)

 そんな無意味なことだけ頭に浮かんでくるけれど、どうにもならないこともわかっている。今さらながら応急処置をとも思ったけれど、それすら無駄なことは明らかだ。オーバーヒートした僕の脳はもう手遅れだと悟ると、急に冷め切ったかのように何も考えなくなり冷静になった。

 僕は彼の胸を貫いた槍をじーっと見る。

「キミがいない人生なんて・・・虚無だ」

 僕は槍を彼から引き抜いた。
 一気に引き抜くつもりだったけれど、ルトゥスの身体の傷が広がるのでは、と頭によぎり躊躇ったことで、血肉を割く感触が手に残り、吐き気がした。

 引き抜いた後、彼が再び動き出すことを期待したけれど、血が出てくるだけでルトゥスは全然反応しなかった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

AV研は今日もハレンチ

楠富 つかさ
キャラ文芸
あなたが好きなAVはAudioVisual? それともAdultVideo? AV研はオーディオヴィジュアル研究会の略称で、音楽や動画などメディア媒体の歴史を研究する集まり……というのは建前で、実はとんでもないものを研究していて―― 薄暗い過去をちょっとショッキングなピンクで塗りつぶしていくネジの足りない群像劇、ここに開演!!

妻の遺品を整理していたら

家紋武範
恋愛
妻の遺品整理。 片づけていくとそこには彼女の名前が記入済みの離婚届があった。

月弥総合病院

御月様(旧名 僕君☽☽‪︎)
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。 また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。 (小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!

処理中です...