2 / 6
2
しおりを挟む
「大丈夫かな。シズクは?」
「そうね・・・いつもの悪い癖が出なければいいけれど・・・。セバスチャン。例の物はちゃんと、回収したわよね?」
お父様とお母様の二人がゆっくりと、少し後ろで身を引いていた執事のセバスチャンを見る。セバスチャンは落ち着いた雰囲気を崩さなかったものの、目を見開く。
「はい・・・?お嬢様からは、お二人から許可を得たと伺いましたが・・・」
「「なっ!!?」」
私はするするっと人混みの中に入って逃げる。
だって、こんなにも美味しそうな料理があるのだもの。アレを使わないと言う選択肢はない。
(なんならアレも・・・ふふっ)
私は目を光らせながら、人混みをくぐっていくと、開けたところにたどり着いた。やっぱり、元の私もそんなに大きくはなかったけれど、さらに小さくなった私にとって人混みは苦しくて仕方なかったので、私は大きく深呼吸をする。
「う~~~んっ、良い香りっ」
私は料理の置いてある机に吸い寄せられるように歩いて行く。私は和食が好きだったけれど、こっちの世界に来て、洋食?の良さがわかるようになった。というか、一流のシェフが作ればというのもあるかもしれないけれど、お母様が作るお菓子もとても美味しいし、郷土料理は現地の人が作る方が美味しいのかもしれない。だから、私も前世で海外旅行をしたことがないから、洋食の素晴らしさを知らずに死んでしまったのかもしれないと思った。
「えっ、嘘でしょ!?」
私は運命の出会いにドキドキしてしまう。
なんで、こんなに透明感があるのだろう。
なんで、こんなに艶やかなんだろう。
なんで、こんなにそそるのだろう。
(なんで・・・刺身があるのよっ!?)
10年・・・。
海から遠い貴族に生まれてしまった私は生魚になんかに出会える機会はほとんどなかった。というか、旅行で海に行った時も私が生魚を食べたいとお父様やお母様にお願いしても食べさせてもらえなかった。私の年齢が一桁というのもあったと思うけれど、大丈夫だと説得しても、聞いてくれない両親。文化の違いに涙し、成人になったら、自由に旅に出て刺身や色んな物を食べてやると誓っていたけれど、まさかこんなにも早く食べられるチャンスが来るなんて感動しかない。
「ふふっ、キミ。生魚は初めてかい?」
近くにいたふくよかな男の子が私に笑顔で近づいてきた。この男の子は勘違いしているのだろう、私がお父様やお母様と同じように生魚を食べるなんてありえないっ、と思っていると。
「生き物は死んだときに呪いをかけるって言われているだろう?特に魚は呪いが強いから火によって浄化しなければならないとされているよね?」
(あー、語りたい系男子か~)
「あっうん・・・」
本当は細菌や寄生虫のせいだと私は知っているけれど、満足そうに話す彼を見ていたら、そんな無粋なことは言えなかった。
(科学が全てじゃないし、この世界にはこの世界の理があるかもしれないし)
「こほんっ。なので、呪いを持てないくらい切り刻んでやるやれば、ごらんのとおり。もぐっ・・・うん。甘美なり」
そのまま食べた。
「ちっがーーーーうっ!!」
私はツッコミを入れた。
なぜ、アレを使わない。いいえ・・・、これはチャンスだ・・・。
「ひっひっひっひ・・・っ」
「ちょっと、笑顔が怖いよ?キミ・・・っ」
私は嬉しくなって、心の底から笑った。
―――アレの出番だ。
「そうね・・・いつもの悪い癖が出なければいいけれど・・・。セバスチャン。例の物はちゃんと、回収したわよね?」
お父様とお母様の二人がゆっくりと、少し後ろで身を引いていた執事のセバスチャンを見る。セバスチャンは落ち着いた雰囲気を崩さなかったものの、目を見開く。
「はい・・・?お嬢様からは、お二人から許可を得たと伺いましたが・・・」
「「なっ!!?」」
私はするするっと人混みの中に入って逃げる。
だって、こんなにも美味しそうな料理があるのだもの。アレを使わないと言う選択肢はない。
(なんならアレも・・・ふふっ)
私は目を光らせながら、人混みをくぐっていくと、開けたところにたどり着いた。やっぱり、元の私もそんなに大きくはなかったけれど、さらに小さくなった私にとって人混みは苦しくて仕方なかったので、私は大きく深呼吸をする。
「う~~~んっ、良い香りっ」
私は料理の置いてある机に吸い寄せられるように歩いて行く。私は和食が好きだったけれど、こっちの世界に来て、洋食?の良さがわかるようになった。というか、一流のシェフが作ればというのもあるかもしれないけれど、お母様が作るお菓子もとても美味しいし、郷土料理は現地の人が作る方が美味しいのかもしれない。だから、私も前世で海外旅行をしたことがないから、洋食の素晴らしさを知らずに死んでしまったのかもしれないと思った。
「えっ、嘘でしょ!?」
私は運命の出会いにドキドキしてしまう。
なんで、こんなに透明感があるのだろう。
なんで、こんなに艶やかなんだろう。
なんで、こんなにそそるのだろう。
(なんで・・・刺身があるのよっ!?)
10年・・・。
海から遠い貴族に生まれてしまった私は生魚になんかに出会える機会はほとんどなかった。というか、旅行で海に行った時も私が生魚を食べたいとお父様やお母様にお願いしても食べさせてもらえなかった。私の年齢が一桁というのもあったと思うけれど、大丈夫だと説得しても、聞いてくれない両親。文化の違いに涙し、成人になったら、自由に旅に出て刺身や色んな物を食べてやると誓っていたけれど、まさかこんなにも早く食べられるチャンスが来るなんて感動しかない。
「ふふっ、キミ。生魚は初めてかい?」
近くにいたふくよかな男の子が私に笑顔で近づいてきた。この男の子は勘違いしているのだろう、私がお父様やお母様と同じように生魚を食べるなんてありえないっ、と思っていると。
「生き物は死んだときに呪いをかけるって言われているだろう?特に魚は呪いが強いから火によって浄化しなければならないとされているよね?」
(あー、語りたい系男子か~)
「あっうん・・・」
本当は細菌や寄生虫のせいだと私は知っているけれど、満足そうに話す彼を見ていたら、そんな無粋なことは言えなかった。
(科学が全てじゃないし、この世界にはこの世界の理があるかもしれないし)
「こほんっ。なので、呪いを持てないくらい切り刻んでやるやれば、ごらんのとおり。もぐっ・・・うん。甘美なり」
そのまま食べた。
「ちっがーーーーうっ!!」
私はツッコミを入れた。
なぜ、アレを使わない。いいえ・・・、これはチャンスだ・・・。
「ひっひっひっひ・・・っ」
「ちょっと、笑顔が怖いよ?キミ・・・っ」
私は嬉しくなって、心の底から笑った。
―――アレの出番だ。
0
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説
公爵令嬢の私に騎士も誰も敵わないのですか?
海野幻創
ファンタジー
公爵令嬢であるエマ・ヴァロワは、最高の結婚をするために幼いころから努力を続けてきた。
そんなエマの婚約者となったのは、多くの人から尊敬を集め、立派な方だと口々に評される名門貴族の跡取り息子、コンティ公爵だった。
夢が叶いそうだと期待に胸を膨らませ、結婚準備をしていたのだが──
「おそろしい女……」
助けてあげたのにも関わらず、お礼をして抱きしめてくれるどころか、コンティ公爵は化け物を見るような目つきで逃げ去っていった。
なんて男!
最高の結婚相手だなんて間違いだったわ!
自国でも隣国でも結婚相手に恵まれず、結婚相手を探すだけの社交界から離れたくなった私は、遠い北の地に住む母の元へ行くことに決めた。
遠い2000キロの旅路を執事のシュヴァリエと共に行く。
仕える者に対する態度がなっていない最低の執事だけど、必死になって私を守るし、どうやらとても強いらしい──
しかし、シュヴァリエは私の方がもっと強いのだという。まさかとは思ったが、それには理由があったのだ。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます
結城芙由奈@12/27電子書籍配信中
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】
ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。
婚約破棄してたった今処刑した悪役令嬢が前世の幼馴染兼恋人だと気づいてしまった。
風和ふわ
恋愛
タイトル通り。連載の気分転換に執筆しました。
※なろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、pixivに投稿しています。
転生先は盲目幼女でした ~前世の記憶と魔法を頼りに生き延びます~
丹辺るん
ファンタジー
前世の記憶を持つ私、フィリス。思い出したのは五歳の誕生日の前日。
一応貴族……伯爵家の三女らしい……私は、なんと生まれつき目が見えなかった。
それでも、優しいお姉さんとメイドのおかげで、寂しくはなかった。
ところが、まともに話したこともなく、私を気に掛けることもない父親と兄からは、なぜか厄介者扱い。
ある日、不幸な事故に見せかけて、私は魔物の跋扈する場所で見捨てられてしまう。
もうダメだと思ったとき、私の前に現れたのは……
これは捨てられた盲目の私が、魔法と前世の記憶を頼りに生きる物語。
乙女ゲームの悪役令嬢に転生したけど何もしなかったらヒロインがイジメを自演し始めたのでお望み通りにしてあげました。魔法で(°∀°)
ラララキヲ
ファンタジー
乙女ゲームのラスボスになって死ぬ悪役令嬢に転生したけれど、中身が転生者な時点で既に乙女ゲームは破綻していると思うの。だからわたくしはわたくしのままに生きるわ。
……それなのにヒロインさんがイジメを自演し始めた。ゲームのストーリーを展開したいと言う事はヒロインさんはわたくしが死ぬ事をお望みね?なら、わたくしも戦いますわ。
でも、わたくしも暇じゃないので魔法でね。
ヒロイン「私はホラー映画の主人公か?!」
『見えない何か』に襲われるヒロインは────
※作中『イジメ』という表現が出てきますがこの作品はイジメを肯定するものではありません※
※作中、『イジメ』は、していません。生死をかけた戦いです※
◇テンプレ乙女ゲーム舞台転生。
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇なろうにも上げてます。
溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~
夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」
弟のその言葉は、晴天の霹靂。
アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。
しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。
醤油が欲しい、うにが食べたい。
レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。
既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・?
小説家になろうにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる