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「はぁ、はぁ、はぁ・・・・・・」
ジンは森の茂みをかき分けながら必死に逃げるために走った。誰も開拓していない森は獣道しかなく、楽な道ではないが、そこに住んでいるジンは小さい身体を活かして、土地勘がないフェイロンから逃げるために巧みに走った。
「よしっ、ここまでくれば・・・・・・」
茂みを抜けると、広大な草原がジンの視界に広がった。
ピューーーーローーーっ
空にはトンビが飛んでいる。
ンゴオオオーーーっ
湿地帯では牛が水浴びをして、ジンと目が合って興奮する。
フフーーーンっ
馬が鼻息を荒くして、草原を掛けている。
土地は誰の物でもなく、全ての生物が我が物顔で共存していた。
カサカサ・・・・・・
草原が揺れたのに、ジンは警戒するが、何も現れなかった。
多くの動物よりも足が遅く、視野が狭いジン。
ジンは誰よりも人間のちっぽさを痛感してきた。
それなのに、同じ人間であるはずのフェイロンは違った。
きゅーーーーっ
ジンのお腹が鳴る。
ジンは怒りに身を任せて、フェイロンから貰った桃を投げ捨ててしまったことに激しく後悔した。
「・・・・・・くそっ」
思い出したくないから、意識して思い出さないようにしていたのに、初めて出会った人間。
それがフェイロンだった。
そして、フェイロンは自分と同じような見た目でいて、中身は自分の想像もしない力を持ち、全てを見透かしたような態度・・・・・・まるで自分の心の中に創った神ではないか。その見た目と中身のアンバランスさがジンに気持ち悪さを感じさせた。
ジンはあれ以上フェイロンと一緒にいたら、気がおかしくなるとジンは悟らざるを得なかった。
(けど、ここでなら俺は・・・・・・)
ジンは草原の中を走りだす。
一日の長。
生まれ育った場所。
土地勘ならばある。全てに劣っていたとしても、ここでの経験があれば、奴の手の届からないところへ・・・
「やぁ、追いついたよ」
けれど、あっさりフェイロンはジンに追いついた。
(そんなことが・・・・・・ありえないだろ?)
ジンは信じられない光景を目の当たりにして、目を疑った。
フェイロンの取った手段を取ろうと思ったことは一度もないし、そんなことが可能と言われても実際に目の当たりにするまでは信じようがなかった。
けれど、フェイロンはそれを実行にしていた。
「なんで、馬に乗っているんだよ!?」
ジンは思わず叫ぶと、馬が鼻息を荒くして二本足で立ち上ろうとしたので、フェイロンがそれを宥める。
「キミに追いつくためだよ」
フェイロンは馬の上から、先ほどと同じように余裕ある笑みでジンに微笑んだ。
ジンは森の茂みをかき分けながら必死に逃げるために走った。誰も開拓していない森は獣道しかなく、楽な道ではないが、そこに住んでいるジンは小さい身体を活かして、土地勘がないフェイロンから逃げるために巧みに走った。
「よしっ、ここまでくれば・・・・・・」
茂みを抜けると、広大な草原がジンの視界に広がった。
ピューーーーローーーっ
空にはトンビが飛んでいる。
ンゴオオオーーーっ
湿地帯では牛が水浴びをして、ジンと目が合って興奮する。
フフーーーンっ
馬が鼻息を荒くして、草原を掛けている。
土地は誰の物でもなく、全ての生物が我が物顔で共存していた。
カサカサ・・・・・・
草原が揺れたのに、ジンは警戒するが、何も現れなかった。
多くの動物よりも足が遅く、視野が狭いジン。
ジンは誰よりも人間のちっぽさを痛感してきた。
それなのに、同じ人間であるはずのフェイロンは違った。
きゅーーーーっ
ジンのお腹が鳴る。
ジンは怒りに身を任せて、フェイロンから貰った桃を投げ捨ててしまったことに激しく後悔した。
「・・・・・・くそっ」
思い出したくないから、意識して思い出さないようにしていたのに、初めて出会った人間。
それがフェイロンだった。
そして、フェイロンは自分と同じような見た目でいて、中身は自分の想像もしない力を持ち、全てを見透かしたような態度・・・・・・まるで自分の心の中に創った神ではないか。その見た目と中身のアンバランスさがジンに気持ち悪さを感じさせた。
ジンはあれ以上フェイロンと一緒にいたら、気がおかしくなるとジンは悟らざるを得なかった。
(けど、ここでなら俺は・・・・・・)
ジンは草原の中を走りだす。
一日の長。
生まれ育った場所。
土地勘ならばある。全てに劣っていたとしても、ここでの経験があれば、奴の手の届からないところへ・・・
「やぁ、追いついたよ」
けれど、あっさりフェイロンはジンに追いついた。
(そんなことが・・・・・・ありえないだろ?)
ジンは信じられない光景を目の当たりにして、目を疑った。
フェイロンの取った手段を取ろうと思ったことは一度もないし、そんなことが可能と言われても実際に目の当たりにするまでは信じようがなかった。
けれど、フェイロンはそれを実行にしていた。
「なんで、馬に乗っているんだよ!?」
ジンは思わず叫ぶと、馬が鼻息を荒くして二本足で立ち上ろうとしたので、フェイロンがそれを宥める。
「キミに追いつくためだよ」
フェイロンは馬の上から、先ほどと同じように余裕ある笑みでジンに微笑んだ。
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