最優テイマーの手抜きライフ。悪役令嬢に転生しても、追放されても、私は辺境の地でこの魔物たちと仲良く暮らします。

西東友一

文字の大きさ
上 下
7 / 13

4-1

しおりを挟む
「なんだ、サクラ?そんなに大声を出して?お前らしくもない」

 余裕の表情で見下すアレキサンダー王子。
 それを見て、悔しい気持になったサクラだったけれど、ぐっと我慢して堪える。

「私が黒竜を捕まえてきますから、許していただけませんか?」

 サクラが決心した顔でアレキサンダー王子を見る。
 恐怖もある。けれど、その黒竜の魅力にも惹かれていたサクラはもう一度黒竜ブラックカオスに会いたいとも思っていた。

「ふん、無理だ。無能のお前には」

「・・・っ」

 勇気を出して、言ったサクラ。心の奥底で転生したことをきっかけに変わりたいとも思っていたからに違いない。けれど、アレキサンダー王子の言葉に一蹴されて、前世の記憶がフラッシュバックするサクラは、暗い顔になり、顔をあげたままにいることができなかった。

「なんでもします。だから、お父様は許してくれませんか・・・?」

 アレキサンダー王子はニヤッと笑った。

「なら、この国から出て行け。二度と戻ってくるな」
 
「え・・・っ」

「もちろん、まぁ、ガジェット。お前たちも付いて行ってもいいが・・・はははっ、そうすれば貴族とは言えんかもな」

 サクラは弱った父を見る。

「父の怪我が治ったらで・・・」

「ならん」

 サクラは身体が強張り、再びアレキサンダー王子を睨もうとすると、ガジェットが力を振り絞ってサクラの腕を掴む。

「・・・っ、・・・っ」

 首を横に振るう。
 ガジェットの目は潤んでいた。
 サクラはその目を見たら、怒りの感情よりも慈しみの心が勝った。 

「わかりました・・・私一人で行きます」

「・・・らんっ」

「よしっ、さぁ、行けっ!!」

 ガジェットの声なんて無視して、アレキサンダー王子が立ち上がり、扉の向こうを刺す。
 サクラがガジェットから離れて、立ち上がろうとする。それをガジェットが身体を起こして引き留めようとするけれど、腰が激痛が走り力が入らなくなる。

「お世話になりました・・・お父様」

 サクラは精一杯笑った。それをガジェットは見送るしかなかった。

「ふふっ、いいぞ。厄介者が両方とも消えて言ってくれたわ」

 アレキサンダー王子はほくそ笑む。
 アレキサンダー王子は思い出す。
 
 高名な占い師が彼の前にやって来て、黒竜ブラックカオスと婚約者サクラ・ブレンダ・ウィリアムがこの国を破滅に導く、と彼に伝えた。最初はアレキサンダー王子も最初はその占い師を疑ったが、占い師は彼の怪我を当てたり、彼女の言うとおりにしたら、外交問題が解決した。そして、

「あの娘こそあなたに相応しい娘じゃ」

 占い師が指さした女性をアレキサンダー王子が見ると、一瞬でその女性に魅了された。それが、決定的だった。
 その選択がこの国の未来を決めることになるとは、この時はだれも知らなかった。




  

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】貧乏令嬢の野草による領地改革

うみの渚
ファンタジー
八歳の時に木から落ちて頭を打った衝撃で、前世の記憶が蘇った主人公。 優しい家族に恵まれたが、家はとても貧乏だった。 家族のためにと、前世の記憶を頼りに寂れた領地を皆に支えられて徐々に発展させていく。 主人公は、魔法・知識チートは持っていません。 加筆修正しました。 お手に取って頂けたら嬉しいです。

選ばれたのはケモナーでした

竹端景
ファンタジー
 魔法やスキルが当たり前に使われる世界。その世界でも異質な才能は神と同格であった。  この世で一番目にするものはなんだろうか?文字?人?動物?いや、それらを構成している『円』と『線』に気づいている人はどのくらいいるだろうか。  円と線の神から、彼が管理する星へと転生することになった一つの魂。記憶はないが、知識と、神に匹敵する一つの号を掲げて、世界を一つの言葉に染め上げる。 『みんなまとめてフルモッフ』 これは、ケモナーな神(見た目棒人間)と知識とかなり天然な少年の物語。  神と同格なケモナーが色んな人と仲良く、やりたいことをやっていくお話。 ※ほぼ毎日、更新しています。ちらりとのぞいてみてください。

乙女ゲームの断罪イベントが終わった世界で転生したモブは何を思う

ひなクラゲ
ファンタジー
 ここは乙女ゲームの世界  悪役令嬢の断罪イベントも終わり、無事にエンディングを迎えたのだろう…  主人公と王子の幸せそうな笑顔で…  でも転生者であるモブは思う  きっとこのまま幸福なまま終わる筈がないと…

懐かれ気質の精霊どうぶつアドバイザー

希結
ファンタジー
不思議な力を持つ精霊動物とともに生きるテスカ王国。その動物とパートナー契約を結ぶ事ができる精霊適性を持って生まれる事は、貴族にとっては一種のステータス、平民にとっては大きな出世となった。 訳ありの出生であり精霊適性のない主人公のメルは、ある特別な資質を持っていた事から、幼なじみのカインとともに春から王国精霊騎士団の所属となる。 非戦闘員として医務課に所属となったメルに聞こえてくるのは、周囲にふわふわと浮かぶ精霊動物たちの声。適性がないのに何故か声が聞こえ、会話が出来てしまう……それがメルの持つ特別な資質だったのだ。 しかも普通なら近寄りがたい存在なのに、女嫌いで有名な美男子副団長とも、ひょんな事から関わる事が増えてしまい……? 精霊動物たちからは相談事が次々と舞い込んでくるし……適性ゼロだけど、大人しくなんてしていられない! メルのもふもふ騎士団、城下町ライフ!

異世界母さん〜母は最強(つよし)!肝っ玉母さんの異世界で世直し無双する〜

トンコツマンビックボディ
ファンタジー
馬場香澄49歳 専業主婦 ある日、香澄は買い物をしようと町まで出向いたんだが 突然現れた暴走トラック(高齢者ドライバー)から子供を助けようとして 子供の身代わりに車にはねられてしまう

10歳で記憶喪失になったけど、チート従魔たちと異世界ライフを楽しみます(リメイク版)

犬社護
ファンタジー
10歳の咲耶(さや)は家族とのキャンプ旅行で就寝中、豪雨の影響で発生した土石流に巻き込まれてしまう。 意識が浮上して目覚めると、そこは森の中。 彼女は10歳の見知らぬ少女となっており、その子の記憶も喪失していたことで、自分が異世界に転生していることにも気づかず、何故深い森の中にいるのかもわからないまま途方に暮れてしまう。 そんな状況の中、森で知り合った冒険者ベイツと霊鳥ルウリと出会ったことで、彼女は徐々に自分の置かれている状況を把握していく。持ち前の明るくてのほほんとしたマイペースな性格もあって、咲耶は前世の知識を駆使して、徐々に異世界にも慣れていくのだが、そんな彼女に転機が訪れる。それ以降、これまで不明だった咲耶自身の力も解放され、様々な人々や精霊、魔物たちと出会い愛されていく。 これは、ちょっぴり天然な《咲耶》とチート従魔たちとのまったり異世界物語。 ○○○ 旧版を基に再編集しています。 第二章(16話付近)以降、完全オリジナルとなります。 旧版に関しては、8月1日に削除予定なのでご注意ください。 この作品は、ノベルアップ+にも投稿しています。

転生テイマー、異世界生活を楽しむ

さっちさん
ファンタジー
題名変更しました。 内容がどんどんかけ離れていくので… ↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓ ありきたりな転生ものの予定です。 主人公は30代後半で病死した、天涯孤独の女性が幼女になって冒険する。 一応、転生特典でスキルは貰ったけど、大丈夫か。私。 まっ、なんとかなるっしょ。

没落した建築系お嬢様の優雅なスローライフ~地方でモフモフと楽しい仲間とのんびり楽しく生きます~

土偶の友
ファンタジー
優雅な貴族令嬢を目指していたクレア・フィレイア。 しかし、15歳の誕生日を前に両親から没落を宣言されてしまう。 そのショックで日本の知識を思いだし、ブラック企業で働いていた記憶からスローライフをしたいと気付いた。 両親に勧められた場所に逃げ、そこで楽しいモフモフの仲間と家を建てる。 女の子たちと出会い仲良くなって一緒に住む、のんびり緩い異世界生活。

処理中です...