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「それで・・・どうするんだ、サクラ」
ガイがあきれ顔でサクラに尋ねる。
「えっ?あっ、ちょっと・・・待って・・・っ」
右頬が綺麗になったのを嬉しくなったので、サクラは今度はペロちゃんに左頬を舐めて貰っていた。それを見て、ガイは頭を抱える。
「はぁ・・・どうして子供返りしてるんだか・・・」
ガイは苦笑いしながら、エサ場に向かい、エサをバケツで掬って、ファームにエサを巻く。すると、嬉しそうにモンスター達が集まって行く。サクラの膝の上にいたマルウサギも、ペロちゃんもそちらの方へと向かって言ってしまった。
「あぁん・・・」
残念そうに見送るサクラ。
ガイに文句を言おうとしたけれど、ガイもモンスター達も楽しそうな顔をしていて、サクラは無粋だと思って言うのを止めた。サクラはため息をついて、周りを見る。
昔はとても広く感じたファームも、自身が大きくなったこともあるけれど、王宮などの広い庭や訓練場を見て来たサクラには狭くなったように感じた。細かいところに目を向けると、柵などはやや壊れかけている。ガイは部屋こそ散らかっていた男だったけれど、一流テイマーとしてファームの管理はとてもしっかりしていた。けれど、足が不自由になり、老化で動きが悪くなった彼にはこのファームは少し広くなり過ぎたようだった。
「ねぇっ!ガイ」
「おっとっと、なんだ、サクラ」
マルウサギが飛びついて、じゃれ合っているのに相手をしながら、返事をするガイ。
「ねぇ、私をかくまってくれない?」
ガイの優しい顔が険しい顔になり、じゃれていたモンスター達がピタっと止まる。
「・・・どういうことだ?」
ガイがサクラの方を怪訝な顔で見つめると、サクラは慌てて、独りよがりの意見でないことを伝えようと、たどたどしく話す。
「ちっ、ちがうの、なんかガイも・・・ここのファームの管理大変なのかなって、思って。それなら、私は名前を変えて、昔みたいにガイのお手伝いをしながらいた方がガイも・・・」
サクラは自分の物であって自分の物ではない薄っすらした記憶を頼りに話をする。人もモンスターも笑顔が溢れたその頃の記憶を。
「ダメだ」
「えっ」
サクラの意見は一蹴された。
ガイは杖でモンスター達を追い払い、再びサクラの元へと杖をつきながら歩いてく。
「お前という奴は・・・簡単に約束を破るのか?」
「ちっ、ちがう」
「じゃあ、さっきの言葉は嘘だったのか?それとも冗談とでも言うのか?」
(えっ・・・、なにこれ・・・。私・・・選択肢を間違えちゃった?えっ?悪役令嬢の方なのに?)
サクラは自分の心臓がバクバクするのを感じながら、困惑する。
「さっきのは本心よ。ヴィヴィアンを・・・だけど、この場に来たら・・・」
「あの時の言葉もそうなのか?サクラ」
真剣な目でガイはサクラを見た。
サクラは困惑しながら、自分の物であって、自分の物でない記憶を急いで漁った。
ガイがあきれ顔でサクラに尋ねる。
「えっ?あっ、ちょっと・・・待って・・・っ」
右頬が綺麗になったのを嬉しくなったので、サクラは今度はペロちゃんに左頬を舐めて貰っていた。それを見て、ガイは頭を抱える。
「はぁ・・・どうして子供返りしてるんだか・・・」
ガイは苦笑いしながら、エサ場に向かい、エサをバケツで掬って、ファームにエサを巻く。すると、嬉しそうにモンスター達が集まって行く。サクラの膝の上にいたマルウサギも、ペロちゃんもそちらの方へと向かって言ってしまった。
「あぁん・・・」
残念そうに見送るサクラ。
ガイに文句を言おうとしたけれど、ガイもモンスター達も楽しそうな顔をしていて、サクラは無粋だと思って言うのを止めた。サクラはため息をついて、周りを見る。
昔はとても広く感じたファームも、自身が大きくなったこともあるけれど、王宮などの広い庭や訓練場を見て来たサクラには狭くなったように感じた。細かいところに目を向けると、柵などはやや壊れかけている。ガイは部屋こそ散らかっていた男だったけれど、一流テイマーとしてファームの管理はとてもしっかりしていた。けれど、足が不自由になり、老化で動きが悪くなった彼にはこのファームは少し広くなり過ぎたようだった。
「ねぇっ!ガイ」
「おっとっと、なんだ、サクラ」
マルウサギが飛びついて、じゃれ合っているのに相手をしながら、返事をするガイ。
「ねぇ、私をかくまってくれない?」
ガイの優しい顔が険しい顔になり、じゃれていたモンスター達がピタっと止まる。
「・・・どういうことだ?」
ガイがサクラの方を怪訝な顔で見つめると、サクラは慌てて、独りよがりの意見でないことを伝えようと、たどたどしく話す。
「ちっ、ちがうの、なんかガイも・・・ここのファームの管理大変なのかなって、思って。それなら、私は名前を変えて、昔みたいにガイのお手伝いをしながらいた方がガイも・・・」
サクラは自分の物であって自分の物ではない薄っすらした記憶を頼りに話をする。人もモンスターも笑顔が溢れたその頃の記憶を。
「ダメだ」
「えっ」
サクラの意見は一蹴された。
ガイは杖でモンスター達を追い払い、再びサクラの元へと杖をつきながら歩いてく。
「お前という奴は・・・簡単に約束を破るのか?」
「ちっ、ちがう」
「じゃあ、さっきの言葉は嘘だったのか?それとも冗談とでも言うのか?」
(えっ・・・、なにこれ・・・。私・・・選択肢を間違えちゃった?えっ?悪役令嬢の方なのに?)
サクラは自分の心臓がバクバクするのを感じながら、困惑する。
「さっきのは本心よ。ヴィヴィアンを・・・だけど、この場に来たら・・・」
「あの時の言葉もそうなのか?サクラ」
真剣な目でガイはサクラを見た。
サクラは困惑しながら、自分の物であって、自分の物でない記憶を急いで漁った。
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