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「おはようございます、及川さん」
「女神か?」
そう言ったら、天使の膝枕から思いっきり落とされた。ここが天国じゃなければ、物凄い痛い想いをして死んでいたに違いない。
(思ったことを言っただけなのに・・・)
そう思いながら、俺は身体を起こして、背伸びをする。
最高の気分だ。
「なに、満足そうな顔をしているんですか・・・・・・及川さん」
女神と言ったことをまだ気にしているのか、天使はまだ頬を赤く染めていた。
「ちょっと・・・そんなにマジマジと見ないでくださいよ」
弱々しい言い方で天使が俺に言ってきたので、今の俺は悟りを開いたような満足感に包まれていたので、素直に「ごめん、ごめん」と謝った。
「どれぐらい、寝てたんだ、俺は?」
「天国に時間という概念はありません。ただ、長いこと寝てましたね」
「そうか。じゃあ、その間、天使は俺の寝顔でもずーっと見ていたのか? なーんて・・・」
天使の顔を見ると、顔全体が真っ赤になっていた。それを見ていたら、なんだか俺もとても恥ずかしくなってきた。
「なぁ・・・」
「はい?」
「天使は、一人に一人つく者なのか?」
「・・・・・・」
俺は天国を縦横無尽に走り回ったけれど、そんな雰囲気はちっともなかった。天使ですら自由なのに、なんでこいつは俺に付きまとって、俺のために膝枕なんて自分の自由を奪うことをしたのか気になった。
「あぁ、あれか? チュートリアル期間的な? 初心者が一人前になれる最低限まではお世話してくれるってことか?」
「・・・・・・半分合ってます」
(半分ってなんだ?)
半人前まで面倒を見てくれると言うことなのだろうか。
いや違う。
天使の顔は俺が的外れなことでも考えているんでしょっていう感じの澄ました目で俺を見てきている。
「自分を・・・」
俺が考えていると、天使が呟いた。
「自分をヒーローだと思い込んで、ブラック企業で働いて、いろんな人に搾取されるだけなのに、それでも自分を信じて、笑顔で働いて・・・・・・始めは馬鹿にしていたんですけど、なんか気になっちゃったんです。一緒にいたら、ハッピーかなって。でもでも、気まぐれなんですぅ!」
天使は俺の方を一切見なかった。なんなら、背中を向けていて、パタパタ翼を動かしていた。でも、俺は動いているよりも、赤くなっている耳が気になって、そして、天国にいるはずなのに胸が締め付けられるような気持ちになった。
「なぁ、天使」
俺が声を掛けても、なかなか天使はこちらを向かなかったけれど、気持ちの整理ができたのか、緊張した顔というか、不機嫌そうな顔を作って俺を見てきた。今にも文句あるのか、と言ってきそうだ。
「俺の傍にいてくれ」
俺は久しぶりに周りの人にお願いをした。
(いや、最初から俺は天使に頼っていた。そして、こいつは嫌な顔せず一緒に楽しんでくれた)
「それは・・・私の膝枕が寝心地がいいからですか?」
いじけているような、何かを期待しているような天使の言い方。かわいらしくて、笑えて来る。
「半分合ってる」
俺がそう言うと、天使が自分の言った言葉を真似したのに気づいて、鼻笑いする。
「じゃあ、残りの半分はなんですか?」
俺も鼻笑いして答える。
「なんか、一番幸せにしたい奴が見つかったからだ」
「そうですか」
そう言って、天使はまた向こうを向いてしまう。翼はさっきより元気に動いていた。
「でも、及川さん」
「なんだ?」
「天使を騙すと、地獄に落ちますよ?」
その笑顔は小悪魔的、いや悪魔的可愛さで、俺の心を鷲掴みにした。
天国には落とし穴がある。
それは睡眠。天国から意識を飛ばせば、それは地獄。
ただし、天使の羽毛には意識を天使の中に留めておける力があるらしい。
そして、天使を騙すこと。
それも物理的に地獄に落ちる。
睡眠とは違って、天国には戻ってこれないかもしれない。
そして、最後は・・・・・・・・・
恋の落とし穴だ。
この穴にはぜひとも落ちて欲しい。
「女神か?」
そう言ったら、天使の膝枕から思いっきり落とされた。ここが天国じゃなければ、物凄い痛い想いをして死んでいたに違いない。
(思ったことを言っただけなのに・・・)
そう思いながら、俺は身体を起こして、背伸びをする。
最高の気分だ。
「なに、満足そうな顔をしているんですか・・・・・・及川さん」
女神と言ったことをまだ気にしているのか、天使はまだ頬を赤く染めていた。
「ちょっと・・・そんなにマジマジと見ないでくださいよ」
弱々しい言い方で天使が俺に言ってきたので、今の俺は悟りを開いたような満足感に包まれていたので、素直に「ごめん、ごめん」と謝った。
「どれぐらい、寝てたんだ、俺は?」
「天国に時間という概念はありません。ただ、長いこと寝てましたね」
「そうか。じゃあ、その間、天使は俺の寝顔でもずーっと見ていたのか? なーんて・・・」
天使の顔を見ると、顔全体が真っ赤になっていた。それを見ていたら、なんだか俺もとても恥ずかしくなってきた。
「なぁ・・・」
「はい?」
「天使は、一人に一人つく者なのか?」
「・・・・・・」
俺は天国を縦横無尽に走り回ったけれど、そんな雰囲気はちっともなかった。天使ですら自由なのに、なんでこいつは俺に付きまとって、俺のために膝枕なんて自分の自由を奪うことをしたのか気になった。
「あぁ、あれか? チュートリアル期間的な? 初心者が一人前になれる最低限まではお世話してくれるってことか?」
「・・・・・・半分合ってます」
(半分ってなんだ?)
半人前まで面倒を見てくれると言うことなのだろうか。
いや違う。
天使の顔は俺が的外れなことでも考えているんでしょっていう感じの澄ました目で俺を見てきている。
「自分を・・・」
俺が考えていると、天使が呟いた。
「自分をヒーローだと思い込んで、ブラック企業で働いて、いろんな人に搾取されるだけなのに、それでも自分を信じて、笑顔で働いて・・・・・・始めは馬鹿にしていたんですけど、なんか気になっちゃったんです。一緒にいたら、ハッピーかなって。でもでも、気まぐれなんですぅ!」
天使は俺の方を一切見なかった。なんなら、背中を向けていて、パタパタ翼を動かしていた。でも、俺は動いているよりも、赤くなっている耳が気になって、そして、天国にいるはずなのに胸が締め付けられるような気持ちになった。
「なぁ、天使」
俺が声を掛けても、なかなか天使はこちらを向かなかったけれど、気持ちの整理ができたのか、緊張した顔というか、不機嫌そうな顔を作って俺を見てきた。今にも文句あるのか、と言ってきそうだ。
「俺の傍にいてくれ」
俺は久しぶりに周りの人にお願いをした。
(いや、最初から俺は天使に頼っていた。そして、こいつは嫌な顔せず一緒に楽しんでくれた)
「それは・・・私の膝枕が寝心地がいいからですか?」
いじけているような、何かを期待しているような天使の言い方。かわいらしくて、笑えて来る。
「半分合ってる」
俺がそう言うと、天使が自分の言った言葉を真似したのに気づいて、鼻笑いする。
「じゃあ、残りの半分はなんですか?」
俺も鼻笑いして答える。
「なんか、一番幸せにしたい奴が見つかったからだ」
「そうですか」
そう言って、天使はまた向こうを向いてしまう。翼はさっきより元気に動いていた。
「でも、及川さん」
「なんだ?」
「天使を騙すと、地獄に落ちますよ?」
その笑顔は小悪魔的、いや悪魔的可愛さで、俺の心を鷲掴みにした。
天国には落とし穴がある。
それは睡眠。天国から意識を飛ばせば、それは地獄。
ただし、天使の羽毛には意識を天使の中に留めておける力があるらしい。
そして、天使を騙すこと。
それも物理的に地獄に落ちる。
睡眠とは違って、天国には戻ってこれないかもしれない。
そして、最後は・・・・・・・・・
恋の落とし穴だ。
この穴にはぜひとも落ちて欲しい。
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