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「ん? ん? んんんっ???」

 ネロは、お母様が凄い剣幕で近寄ろうとするのに反応したのも一瞬で、メイドさんたちに何で同調しないのか、疑問と圧力をかけながら、顔を覗いて困らせている。

「ドクターホワイト」

「はいっ」

「わたくしはあなたこそ、この国一のドクターであると信じております。お父様は・・・お任せしました」

「・・・はいっ」

 ドクターは私の言葉を真摯に受け取ってくださり、目をうっすら潤ませながら頭を深々下げてくださいました。

「ネロ? ちょっといいかしら? 今後について話があるんだけれど?」

「んあっ? あぁ、今後の政策についてだなっ、いいだろう。まずはだなぁ・・・」

 なんにもわかっていないネロ。
 メイドさんたちは哀れみを向け、お母様は・・・どんな表情をしているか怖くて振り向けない。

「まず、部屋を出ましょうか」

「いや、まず・・・」

「出ましょうか」

「・・・おっおう」

 わたくしは、決して笑顔を崩さなかった。
 ネロを連れてきたのはお父様。
 ここで、わたくしが怒ってしまえば、お父様が気にしてしまうかもしれない。

「では、失礼します」

 わたくしは頭を下げて部屋を出ました。

「失礼する」

 この男はもう王にでもなったつもりでしょうか。
 頭を下げずに部屋を出た。

 わたくしは屈辱に感じながらも、彼に任せれば扉も下品に大きな音をたてて閉めると思ったので、ノブを持って、彼が部屋から出るのを待って、ゆっくりと扉を閉じました。

「それでだなぁっ」

 廊下で大声で話すのも、それも国王の部屋の前だと言うことも、話す気はありませんが、この国の左右する政策ともあれば、人に聞かれる可能性があるということもわかっていないネロ。

「部屋を変えますよ」

 わたくしは有無を言わさず、先を歩きました。
 だって、彼に進路を預けていては、わたくしの人生も、この国の未来も絶望に変わってしまいます。
 すいません、本当はさくさくいきたいのですけれど、ご覧の通りネロは残念な殿方ですので何をしても引っかかる部分があるものでして・・・。

 かなり裕福な貴族の家に生まれていらっしゃるので、素晴らしい教育を受けていらっしゃると思いましたが、噂は本当だったようです。ネロの御家はケチだと。

 でも、目先の利益にばかりに囚われて、投資をないがしろにすると・・・。

「はぁ・・・」

「ん? どうした?」

 私がため息を漏らすと、自分のことだと微塵も思っていないネロ。
 
「さっ、着きましたよ」

 私は客室に案内する。

「おいおい、俺がこの国の国王になる男だぞ? 最低でも王子の部屋だろうが」

「さっ、どうぞ」

 私は仮面のような笑顔で、部屋へと先に入ってしまう。
 今度は扉を押さえておく必要はありません。だって・・・
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