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「嘘でしょ、ヴィトリール・・・」

「ふふふっ、ごめんなさい、お姉様」

 私は少し気が動転しましたが、すぐに気持ちを落ち着けました。まさか、真っ赤な嘘、それも父親殺しなんて重罪を私に被せようとしている件にヴィトリールまで絡んでいるとは思いもよらなかったので。

「ヴィトリール。アナタは何を見たのかしら?」

「私、見たんです。お姉様がお父様の飲み物に毒を盛っているところを」

「あら? あなたはあの日、屋敷にはいなかったんでしょ?」

 お父様の亡くなったとされる日に、アリバイをみんなが供述しました。そして、確かにヴィトリールは買い物に出かけていたと証言し、お店の方もヴィトリールと一緒だったと証言しました。

「本当はいたんですっ!! でも、お姉様に殺されるんじゃないかって、怖くて怖くて黙っていたんですぅ・・・・・・うううっ」

 そう言って、グリフの胸に抱き着いて泣いているヴィトリール。まぁ、二人の関係は知ってはいましたけれど、一応グリフは今のところ私の婚約者なんですが、その辺分かっているのかしら。あっ、もしかして、

「あぁ、話の途中ですいません。婚約破棄の件は了承しておきます。話を続けてください」

 私は手を上げて、グリフの婚約破棄について回答をしておいた。

「んん、ああっ」

 私があまりにも淡白に婚約破棄を了承したのでびっくりしているグリフ。婚約を解消するには、相手の了承を得る必要があることを知らないのかしら?

(まぁ、これでグリフとは赤の他人ね。良かった)

「なっ、何を笑っているんだ」

 あぁ、私笑ってました? いけない、いけない。グリフが引いた顔をしていました。

「失礼いたしました。それで、続きは?」

「続き?」

 あらあら、ヴィトリール。台本にないことはできないのかしら。じゃあ、こちらでリードしてあげないと。

「そうよ、続き。私は何の毒を、いつ、どうやってお父様に盛ったのかしら?」

 私が優しく言うと、ヴィトリールはワタワタしながら、

「えーっと、毒はマンドレールの毒で、えーっと、えーっと、時間は・・・・・・私が買いものにいた時で、どうやってかは、あらかじめ・・・」

「あらかじめ?」

 私が復唱すると、ヴィトリールがハッとした顔をする。私は当たりを見渡すと、一人の男が会場を抜け出そうとしていた。

(ふーん、だからあの時、アナタはヴァッカスの花を買って来たのね)

「そんなことはどうでもいいっ!! 」

 私にあることを気づかれたくないグリフが大声で流れを変えようとする。けれど、会場の空気は今や・・・・・・ううん、始めから私の味方ですわよ?
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