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2章

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 私はその日、夢を見た。
 現実っぽい夢、だけど私にはそれが夢だとすぐにわかった。
 だって、私は幼い姿をしていたのだから。

 もう、過去を振り返らないと決めた日なのに、そんな夢を見ていしまう自分が情けないと思い、反射的に目を覚ましてしまおうと思ったけれど、夢の中まで理性的になるのもバカバカしくて、疲れているせいにして、私はその夢に身を任せた。
 
 幸せな夢・・・・・・
 幸せな過去・・・・・・

 そんな物でもないのに、見続ける私はおかしいのだろうか・・・・・・?

『そんな本読むなんて、バッカじゃないのっ!?』

『返してください、ミネルヴァお姉様っ』

『幼稚ねぇ、本当に幼稚。おほほほっ」

 幼稚なのは当たり前だ。だって、歳が片手で収まる時だったのだから。

 きっと、ミネルヴァお姉様だって私の歳には読んでいたに違いないのに、私が読んでいた絵本を馬鹿にするミネルヴァお姉様。幼少の頃の5歳差なんて絶対的な差だ。ミネルヴァお姉様は他のお姉様たちの顔色を見ながら、私をあざけ笑う。

 こんなに強いお姉様がなんでそんな風に人の顔色を見ているのだろうと、不思議に思っていたけれど、もしかしたら私が生まれる前まではミネルヴァお姉様が一番年下として同じような目に合っていたのかもしれない。自分への矛先を私に向けることで自分を守っていたのだと思えば、ミネルヴァお姉様を恨まずに済んだ。

『こんなものっ!!』

 けれど、私が大事にしていた絵本を私の手の届かない高さで、両手でビリビリに破いて見せた時は本当にショックだった。まるで私の世界、それも私の夢や希望が詰まった世界が壊されてしまった気持ちで心が割れた気がした。

『さっ、行きましょ、お姉様方。あんた、夢なんて見てないでちゃんとゴミは掃除しておきなさいよっ』

 私が無反応になったのを飽きたミネルヴァお姉様たちは私と散らばった絵本を残して去って行った。私はゆっくりとゴミと言われた大切な世界をゆっくりとかき集め、抱きしめた。

 絵本の中身は、気のいい町娘が王子に見初められて王女になる話だ。
 確かに町娘が王女になることなんて極めて稀だし、ミネルヴァお姉様からしたら、王女にすでになっている私が目を輝かせて読んでいるを滑稽に思ったのかもしれない。

 幼い私は無力でありながらも、頑張っていれば誰かが気づいてくれて、世界が変わると信じていた。
 けれど、世界は壊された。

 絵本のゴールでは王子との結婚して、王女になり末長く幸せに暮らしたなんて書いてあるけれど、一番は王子に王女にしてもらうことだろう。私はすでに、多くの少女たちがゴールにしている王女になっている。それなのに私は満たされていないのは欲が深いのかもしれない。

 じゃあ、私が絵本の町娘のように頑張って生きてきたら・・・

 王女の私に与えられた未来は―――

 なんなのかわからなかった。
 けれど、周囲にあった絵本の残骸を見て、悲しくなった。
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