14 / 21
2章
14 リチャード視点
しおりを挟む
「それは確かなんだね?」
「ああ、確かな筋からの情報だ」
僕は柱の背中越しの男と話をした。
ロビン先生について、この頃良くない噂を聞いていて胸騒ぎがした僕は、ララ様と別れた後、すぐさまアーサー国王の目を盗んで信頼できる親友のアダムに情報収集を頼んだ。
アダムは表向きはただの商人だが、実は様々な情報を仕入れたり、人々を扇動したりする諜報員だ。そんな彼に調査を依頼したら、あっという間に調べてくれた。
「いや、かなり大胆に動いているみたいだぜ?」
「そうなのか」
「ああ。だから、急いだほうがいい。奴ら、これでこの国での仕事を最後にする気だからか、第一王子・・・いや、現国王も絡んでいるせいかわからないが、荒事でもいいから早く済ませるつもりだ」
「わかった」
僕は早速行動に移そうすると、
「なぁ、リチャード・・・・・・」
アダムに呼び止められたので、ふり返る。
「自分で言っておきながら、なんだが・・・・・・例えお前であっても、唯一持っていた王族という身分まで捨てて、自ら堕ちている奴に手を差し伸べても、損しかないぞ」
急いだほうがいい、と言っていた手前、バツが悪かったのか言葉を選びながら喋るアダム。これは、顔を見て話さなければ失礼だと思ったので、僕は柱の向こうにいたアダムの隣に行った。
すると、びっくりした顔をして、ララ様と同じように周りを気にする。
(僕は人に恵まれているな・・・)
ララ様も親友のアダムも僕なんかの立場に気を遣ってくれている。
―――僕には達成しなければならない目標がある。
「ありがとう」
お願いしたこともあれば、先に気を遣ってくれていることもあるアダム。日頃の感謝も含めて伝えた。
「はぁ・・・・・・まぁ、いいけどな」
アダムは、はにかみながら笑った。
「でも、二つ。ララ様は落ちていないし、僕にとって損でもないよ」
そう言うと、ぽかんとした顔で僕を見るアダム。
「全部じゃねえか」
再び笑いながらアダムが僕を小突く。
「あれ? そうだったかな?」
どちらが先と言うことも無く笑い合う僕ら。
こうして笑えるのは久しぶり。
でも、こうして笑えるのはこれが―――
「じゃあ僕は行くよ」
今度こそ僕はララ様の元へ向かう。
「待っているからなっ」
僕の背中にアダムが声を掛けてきた。僕は立ち止まり、手を上げて聞こえていることだけ示した。振り返ること、肯定することは・・・・・・。
「俺は感謝しているんだ。生きているか死んでいるのか分かんねぇような人生に、生きる意味をくれたんだ。だから・・・・・・」
その言葉に余計に振り返ることはできなくなった。
なぜなら、僕の心を熱くさせ、そして目頭を熱くさせたのだから。
「・・・・・・だから、必ず帰って来いよ」
アダムらしくない弱々しい声だったのは、それが叶わないと思ったからだろうか・・・。
「ああ、確かな筋からの情報だ」
僕は柱の背中越しの男と話をした。
ロビン先生について、この頃良くない噂を聞いていて胸騒ぎがした僕は、ララ様と別れた後、すぐさまアーサー国王の目を盗んで信頼できる親友のアダムに情報収集を頼んだ。
アダムは表向きはただの商人だが、実は様々な情報を仕入れたり、人々を扇動したりする諜報員だ。そんな彼に調査を依頼したら、あっという間に調べてくれた。
「いや、かなり大胆に動いているみたいだぜ?」
「そうなのか」
「ああ。だから、急いだほうがいい。奴ら、これでこの国での仕事を最後にする気だからか、第一王子・・・いや、現国王も絡んでいるせいかわからないが、荒事でもいいから早く済ませるつもりだ」
「わかった」
僕は早速行動に移そうすると、
「なぁ、リチャード・・・・・・」
アダムに呼び止められたので、ふり返る。
「自分で言っておきながら、なんだが・・・・・・例えお前であっても、唯一持っていた王族という身分まで捨てて、自ら堕ちている奴に手を差し伸べても、損しかないぞ」
急いだほうがいい、と言っていた手前、バツが悪かったのか言葉を選びながら喋るアダム。これは、顔を見て話さなければ失礼だと思ったので、僕は柱の向こうにいたアダムの隣に行った。
すると、びっくりした顔をして、ララ様と同じように周りを気にする。
(僕は人に恵まれているな・・・)
ララ様も親友のアダムも僕なんかの立場に気を遣ってくれている。
―――僕には達成しなければならない目標がある。
「ありがとう」
お願いしたこともあれば、先に気を遣ってくれていることもあるアダム。日頃の感謝も含めて伝えた。
「はぁ・・・・・・まぁ、いいけどな」
アダムは、はにかみながら笑った。
「でも、二つ。ララ様は落ちていないし、僕にとって損でもないよ」
そう言うと、ぽかんとした顔で僕を見るアダム。
「全部じゃねえか」
再び笑いながらアダムが僕を小突く。
「あれ? そうだったかな?」
どちらが先と言うことも無く笑い合う僕ら。
こうして笑えるのは久しぶり。
でも、こうして笑えるのはこれが―――
「じゃあ僕は行くよ」
今度こそ僕はララ様の元へ向かう。
「待っているからなっ」
僕の背中にアダムが声を掛けてきた。僕は立ち止まり、手を上げて聞こえていることだけ示した。振り返ること、肯定することは・・・・・・。
「俺は感謝しているんだ。生きているか死んでいるのか分かんねぇような人生に、生きる意味をくれたんだ。だから・・・・・・」
その言葉に余計に振り返ることはできなくなった。
なぜなら、僕の心を熱くさせ、そして目頭を熱くさせたのだから。
「・・・・・・だから、必ず帰って来いよ」
アダムらしくない弱々しい声だったのは、それが叶わないと思ったからだろうか・・・。
10
お気に入りに追加
225
あなたにおすすめの小説
もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。
本当の聖女は私です〜偽物聖女の結婚式のどさくさに紛れて逃げようと思います〜
桜町琴音
恋愛
「見て、マーガレット様とアーサー王太子様よ」
歓声が上がる。
今日はこの国の聖女と王太子の結婚式だ。
私はどさくさに紛れてこの国から去る。
本当の聖女が私だということは誰も知らない。
元々、父と妹が始めたことだった。
私の祖母が聖女だった。その能力を一番受け継いだ私が時期聖女候補だった。
家のもの以外は知らなかった。
しかし、父が「身長もデカく、気の強そうな顔のお前より小さく、可憐なマーガレットの方が聖女に向いている。お前はマーガレットの後ろに隠れ、聖力を使う時その能力を使え。分かったな。」
「そういうことなの。よろしくね。私の為にしっかり働いてね。お姉様。」
私は教会の柱の影に隠れ、マーガレットがタンタンと床を踏んだら、私は聖力を使うという生活をしていた。
そして、マーガレットは戦で傷を負った皇太子の傷を癒やした。
マーガレットに惚れ込んだ王太子は求婚をし結ばれた。
現在、結婚パレードの最中だ。
この後、二人はお城で式を挙げる。
逃げるなら今だ。
※間違えて皇太子って書いていましたが王太子です。
すみません
【完結】愛されない令嬢は全てを諦めた
ツカノ
恋愛
繰り返し夢を見る。それは男爵令嬢と真実の愛を見つけた婚約者に婚約破棄された挙げ句に処刑される夢。
夢を見る度に、婚約者との顔合わせの当日に巻き戻ってしまう。
令嬢が諦めの境地に至った時、いつもとは違う展開になったのだった。
三話完結予定。
何を間違った?【完結済】
maruko
恋愛
私は長年の婚約者に婚約破棄を言い渡す。
彼女とは1年前から連絡が途絶えてしまっていた。
今真実を聞いて⋯⋯。
愚かな私の後悔の話
※作者の妄想の産物です
他サイトでも投稿しております
【完結】愛に裏切られた私と、愛を諦めなかった元夫
紫崎 藍華
恋愛
政略結婚だったにも関わらず、スティーヴンはイルマに浮気し、妻のミシェルを捨てた。
スティーヴンは政略結婚の重要性を理解できていなかった。
そのような男の愛が許されるはずないのだが、彼は愛を貫いた。
捨てられたミシェルも貴族という立場に翻弄されつつも、一つの答えを見出した。
【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる